明かされた正体
~前回のあらすじ~
謎のスケルトンに襲われた。
「あぁ、一体何が目的でここに来たのかはわからないが、迷宮の魔物であるのは間違いないよ」
「ユーリはこいつらを追ってここに来たのか?」
俺はそいつの目を見つめて尋ねた。
「……コーマくん、一体どこを見ているのかね?」
「いや、相手と話すときはちゃんと目と目を合わせないとダメだろ?」
「私はこちらなんだが?」
ユーリが困ったように言うが、でも、俺はルルの顏を見て言った。
ユーリはあくまでも人形であり、操っているのはルルだからな。こいつを初めて見たときから知っていた事実だが、こちらが知っていることをユーリ、いや、ルルに知られたからな。俺は人形と話す趣味はない。
「……全く、君といいクリスくんといい。まぁいい。私が来たのは、彼らを追ってではない。彼らを見つけたのは偶然だ」
「偶然? そんな偶然があり得るのか?」
「そう言われても本当のことだよ。私が用事があったのは、君に、だよ」
「俺に用事? なんだ? 俺が勇者試験を受けるから激励に来てくれたのか?」
俺はそう言って、腕に巻き付けた黄色い布を見せた。
ユーリはそれを見て、苦笑しているようだ。ルルは相変わらず無表情なので、どちらが人形かわからなくなってくるな。
「君が勇者試験を受けるのは構わないよ。止める理由もない。問題はこれだ」
ユーリは羊皮紙の書類の束をアイテムバッグから出して、それを俺に渡した。
最初の二枚は人名のリストのようだ。多くの名前が書かれている。
何人かにはバツ印が書かれているが。
その名前を見て、俺は眉間にしわを寄せた。
その中で、俺の見覚えがある名前がいくつかある。
【ユーリ/ルル】【コーマ・カガミ】【ベリアル】【マユ】【マネット】【ブックメーカー】【アルモニー】【エント/ドリー】
このうち【アルモニー】と【エント/ドリー】の左にはバツ印が書いている。
これらの名前に共通するのは、
「……魔王のリスト……なのか?」
俺の予想に、ユーリは静かに頷いた。
「世界中に存在する魔王のリストだ。といっても不完全なものだがね。72人いるはずの魔王が60人しかいない」
「……このバツ印は死んだ魔王ってことだよな。なら、この赤字で書かれている魔王はなんだ? 【エント/ドリー】も赤くなっているが」
「これは、この町以外で迷宮を作った魔王だね」
「……結構いるが、かなりの数の魔王が殺されているんだな」
12人いるが、うち8人の魔王は殺されているようだ。
死んだ魔王の名前はドリー以外は知らない名前ばかり。【ドグラス】とか、【フォーカス】とか、【バッカニオ/ギルドラ】とか。
当然、生きている四人の魔王も知らない。【マイン】【フリーズ】【アロエッタ】【さざみね】か。
「よくこんなリストを用意できたな。お前が作ったのか?」
「いや、私ではないよ。これを用意したのはベリアルだ」
「ベリアルが? あの脳筋野郎が?」
「ノウキン?」
「脳まで筋肉でできているような体力バカって意味だよ」
俺が言うと、ユーリは納得したように言った。
「あぁ、あれはベリアルの影だよ。本物のベリアルは狡猾な男だ。今はサイルマルという国の王をしている。本物の王族を全て殺した後、王子の体を乗っ取るという形でね」
「……おいおい、一国の王が魔王とかヤバすぎるだろ……って、あぁ」
俺はユーリを見て、そうでもないのかと思い直した。
なぜなら、ラビスシティーの長はギルドマスターでもあるユーリであり、それを操っているのは魔王であるルルなのだから。
「君が何を言いたいのかはわかるが、実は魔王が長をしている国というのは、サイルマルやこの国の他にもいくつかあるし、魔王の力を利用している国もかなりあるんだよ。例えば、カリアナの長と君の関係のようにね」
「……そこまで知ってるのか?」
「我々の情報網を舐めないでほしいな」
そうだな。冒険者ギルドは世界中に存在する。情報も自ずと集まるのだろう。カリアナの忍に西大陸で活躍してもらったことがあったから、そこらへんから情報が漏れたのかもしれない。
「じゃあ、この書類をベリアルが用意したのも、ギルドの情報網で?」
「それだったらまだよかったんだがね。この書類は、この大陸の全ての国の長に届けられている」
「…………!? それって、つまり――」
「私や君が魔王だということを、世界中の国長が知っているということだ」
俺はそれを聞いて顔を青くした。
なんてこった。
リーリウム王国のリーリエ女王や、スー、シーの兄であるジンバーラ王国のゴルゴ・イー・ジンバーラにも知られたということか。
つまり、俺の日常は終わりを告げるということか。
……メイベルたちには迷惑はかけられないよな。もう地上に出るのは避けた方がいいだろう。
フーカには申し訳ないが、勇者試験なんて受けている暇もなくなりそうだ。
「ありがとうな、ルル。知らせてくれて。お前はこれからどうするんだ?」
「特に何も?」
「何もしないって魔王だって……(魔王だってばれたんだぞ)」
大声を上げたら誰かに聞かれるのではと思い、声を小さくして訴えた。
「生憎と、多くの国の長は既に魔王の存在を知っているんだよ、君が思っている以上にね。そして、それを広めるつもりはどこの国もない。その話が広まれば、世界が混乱するのは目に見えているからね。下手すれば、魔王を利用している国全てを敵に回しかねない」
「……そうなのか?」
「ああ、だから君はこれまで通りの生活を続けて欲しい。それより、君に見てほしいのは、名前の右の文字だ」
「ん? あぁ、数字が書いているな。0、1、2、3、4って。なんだ?」
俺、ユーリ、マユ、マネットは2。ベリアルは1。ブックメーカーは3。
何の数字だ?
「1と2と3は、人間とともに生きていく共生派の魔王。4は人間と敵対する魔王。そして0は人間に興味を示さない魔王だよ」
「1と2と3の区別は?」
「1はベリアルとその部下、2は私とその部下、3は1と2以外の魔王だよ」
「待て、俺はお前の部下になった覚えはないぞ!」
「君はギルドメンバーだろ? ギルドメンバーは総じて私の部下のようなものさ」
……そういうものなのか。
いや、まぁ特に何もしなくていいって言われたし、何もしないでいくか。
「わざわざ教えてくれてありがとうな。そうだ、西大陸で作ったスウィートポテトを持って行ってくれ。美味しいから」
俺はアイテムバッグからスウィートポテトを取り出した。
もちろん、気を失うほど旨いものではなく、普通に美味しいスウィートポテトだ。
あれは危ないからな。厳重に封印している。
「……君は本当に私の顔を見て話さなくなったね」
「でいらないのか?」
「いや、貰っておこう」
ユーリが言って、ルルが受け取った。そして、俺に背を向けて去る。
「さっきのスケルトンについて何かわかったら教えてくれたまえ。私も可能な限り情報を提供しよう」
「ん? お前、今笑ったか?」
「私はいつでも笑顔ですよ」
ユーリはそう言って、俺に笑みを浮かべた。
「いや、お前じゃなくて、お前なんだけど……」
……まぁいいか。
って、あぁぁぁぁっ!
籠手を作るのすっかり忘れてた。
……もういいや、アイテムクリエイトで作るとするか。




