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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
第三部 世界終焉編 Episode12 骨の迷宮
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鬼族の少女

~前回のあらすじ~

鬼族のボクっ子と出会った。

 鬼族。数は少ないものの、かつては大陸中に存在したと言われる種族。その特徴は、頭に生えた角と、恐るべき怪力。

 角といっても、たいていの魔物の角が皮膚が進化したものであるのに対し、鬼族の角は頭蓋骨から伸びた骨の一部であるのも特徴のひとつである。

 ただ、その怪力とは裏腹に、魔法を使うことはできないのも特徴である。

 とある著名な錬金術師が鬼の角が力の神薬の素材になると言ったことに端を発し、世界中の鬼族が捕らえられ、角を奪われるという痛ましい事件が起き、それが原因で鬼族はその数を大幅に減らし、森の奥でひっそりと暮らすようになったそうだ。

 ちなみに、近年になってようやく力の神薬と鬼族の角とは関係が無いことがわかり、鬼族の角狩りはなりを潜めた。完全になくなっていないあたり、なんとも悲しい話である。


「私が知っている鬼族の話は以上です」

「いやいや、それだけわかれば十分だよ。さすがメイベルだ」


 フリーマーケットの従業員寮の一階。

 椅子に座ってメイベルから鬼族の説明を聞いた俺は彼女の博識ぶりに称賛した。


「僕も驚きました。流石はフリーマーケットの店長さんです」


 一人称が僕、でも正真正銘鬼族の女の子。つまり、ボクっ子のフーカもまた感心するように言った。鬼族ほんにんも認める知識ってことだ。

 まぁ、半分以上はお世辞なのだろうが。


「それに、お兄さんがあのフリーマーケットの店長さんとお知り合いだとは思いもしませんでした。フリーマーケットと言えば、ラビスシティー、いえ、世界でも指折りの名店なのに」

「まぁいろいろあって……な。で、フーカ。俺の従者になりたいって話だが、理由はあるのか?」

「……話さないといけませんか?」

「もちろんだ。そもそも、お前、まだガキだろ。お母さんとお父さんはどうした?」

「こう見えても僕は17歳ですよ。胸だって――」


 と彼女は背中に手を入れ、何かを解いた――とたん、ローブ越しにもわかるくらい、彼女の胸が膨れ上がった。


「これくらいあります」

「な……サラシで潰してたのか……」

「……なんてもったいないことをしてたんですか」


 サラシで胸を潰すという文化がこの世界にもあったことに驚き、メイベルは胸を潰すという行為に対して嘆いていた。

 って、フーカ、17歳かよ。俺とタメじゃないか。

 いや、まぁ見た目12歳で2700年生きている大魔王の娘や、見た目7歳で百年以上もの長い間冒険者ギルドを裏から操る魔王もいるからな。

 それに17歳なら合法ロリにも達していない。

 ……見た目ロリに関してここまで動揺しないようになるとは、思えば俺も遠くに来たもんだ。


「結構いたんですよ、エッチなことをしてくれたら従者にしてくれるという男性が。でもそういう人に限って弱かったんで、いっそのこと胸を隠して性別も黙っていたんです」

「なるほどな……でも、肝心の話を聞いてないぞ。なんで従者になりたい? 迷宮に潜るのが目的なら、いい勇者を紹介してやるぞ」


 そう言いながら、フーカのことはスーあたりに押し付けてみようと思った。スーもシーも腕力というよりは技巧派の冒険者だから、腕力が必要になる場面も出てくるだろう。


「……すみません、理由は言えませんが、僕は今回の試験に同行したいんです」

「なら、勇者試験を受ければよかったじゃないか」

「そうしたかったのですが、僕、迷宮への不法侵入の容疑で冒険者ギルドから処罰を受けていて、三年間勇者試験を受けられないんです」

「迷宮への不法侵入って……そりゃまた大胆なことをしたものだな」


 レメリカさんから貰った勇者試験のパンフレットを見ると、確かにギルドから処罰を受けた者は、ギルドが定める期間勇者試験への受験資格を失うと書かれている。


「そこまでして入りたい迷宮があったわけか」


 勇者になればほぼ全ての迷宮に入ることができる。

 ただし、一部、発見されたばかりの迷宮や、ギルドが特別に管理する迷宮には立ち入ることができない。

 となれば、フーカの目的はおのずと見えてくる。


「……骨の迷宮……か」


 今回の勇者試験は、去年の勇者試験と内容が異なる。

 試験の内容はスタンプラリー。

 一日ひとつの迷宮を、一週間かけて七つの迷宮を巡り、それぞれの迷宮で条件を満たしてスタンプを手に入れる。

 その七つの迷宮の中で、勇者でも立ち入ることが許されていないのが、六日目の骨の迷宮だ。


 俺の質問に、彼女は何も答えない。きっと、それが正しい答えだからだろう。

 ならば――


「正直に話してくれたのは助かるが、冒険者ギルドから処罰を受けた人間を従者として連れて行くとか、そんなの開始時点でハンデ背負ってるようなものだろ」

「それは……そうですけど……でも、僕は力があります。荷物持ちでもなんでもしますから」

「アイテムバッグがあるから荷物持ちはいらない」

「それならあなたの盾にも剣にもなります」

「不意打ちで俺を倒せないようなお前に、そこまでの価値があるとは思えないよ」


 俺はそう言うと、椅子から立ち上がり、メイベルに言った。


「至急、フーカの服の用意をしてやってくれ。彼女の服を破いちまったからな、その弁償くらいはさせてもらうよ」

「はい、かしこまりました、コーマ様」


 小さく微笑み、服を取りに店に戻るメイベル。

 そして、その話を聞いて、フーカは小さく俯いた。


「それに、試験期間中だけとはいえ、俺の従者をするっていうのにそんなみすぼらしい格好はさせられないだろ?」

「え?」

「悪いが、こっちは勇者試験は余裕で合格する気満々なんでな。多少のハンデでもないとやってられないと思ってたんだよ。俺のハンデになる覚悟があるのならついてこい。ただし、試験が終わったらきっぱり契約は解除。それでいいな?」

「はい!」


 こうして交渉はまとまった。利害関係の一致どころか、俺には一利もない案件だけど。

 それでも、退屈しのぎくらいにはなるかな。


 それに、少し気になるんだよな。


 俺は横目でフーカを見た。

 特定の迷宮に用事があるという彼女。彼女の目的が。


 その目的が、ただ、その迷宮でしか取れないアイテムだというのならそれでいい。むしろそれがいい。俺も気になるところだから是非とも彼女に協力して、そのアイテムをGETしよう。加工が必要な素材なら、加工まで手伝ってもいい。


 だが、そうではないとすれば。

 例えば――いや、今は気にせずにいこう。

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