ワニ退治の忍者道具
~前回のあらすじ~
クリスがちょっと活躍。そしてコーマは……
泳いで陸地目指すの面倒だし、何か便利なアイテムでもなかったかなぁ。
そういえば、忍者が水の上を歩くために使っていたアイテムがあるじゃないか。
蜘蛛の足と蜘蛛の糸、木材を材料に作成。
そして完成したアイテムがこれだ。
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水蜘蛛【靴】 レア:★★
泥の上を歩くために作られた靴。水の上は移動できない。
名前に偽りありといつも苛められている。
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って歩けないのかよっ!
そういえば、バラエティー番組でもお笑い芸人がよく使って沈んでたな。
それにしても、水蜘蛛を苛めてるのって誰なんだろ?
土蜘蛛か? 土蜘蛛に苛められているのか?
ん? いや、今水蜘蛛ができたことで、レシピが追加された。
魔石を詰め込むってことは、魔道具になるのか?
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水蜘蛛改【靴】 レア:★×5
水の上を大地を踏みしめるように歩くことができる靴。
名前だけとはもう言わせない。逆境に打ち勝った。
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できたぁぁぁぁっ!
よくやった、水蜘蛛! 苛められながらも自分を信じた結果だな!
見た目は水蜘蛛と変わらない。とりあえず履いてみようと水蜘蛛改を海の中に沈めようとするが沈む様子はまるでない。
そのため、片方の水蜘蛛改に体重をかけて足を水面に出して、もう片方の水蜘蛛改に右足をはめ込み左足も水蜘蛛改にもはめ込む。
恐る恐る重心をあげていくが、沈む様子はまるでない。
おぉ、本当に普通に立てるな。
これなら歩いて町まで行くことができる。
そう思った時だった。
索敵眼鏡が魔物の気配を捉えた。
下だ。
そう思った直後、白い影が俺の足元に迫った。
「ちくしょお、なんで海の中にあんなやつがいるんだよ」
俺は全力で走る。
なにしろ、俺を襲ってきたのは海のギャングの鯱や鮫などではなく――白ワニだった。
下から襲われるのは辛い。人にとって一番辛いのは背後からや頭上からの攻撃ではなく、足元からの攻撃じゃないだろうかと思ってしまう。
とりあえず、逃げる、逃げる、逃げる。
力の超薬のおかげで、脚力には自信はある。これまで30本飲んできたので、17倍の筋力を持つからな。
だが、白ワニを引き離すことはできない。普通のワニよりはるかに速い。
なら、力の妙薬を飲んで――と思ったところで、前方に小船が数隻見えた。
誰かが乗っているようで、ここで俺が逃げたら彼らが襲われてしまう。
ならば――
「乗せてくれぇぇぇっ! ワニが襲ってきたぞ!」
俺はそう言うと、小船に飛び乗った。
「な、なんだ、貴様! 海の上を走ってきただろ」
男が言うが、俺は慌てて言う。
「だから、それどころじゃない、巻き込んですまないが、ワニが襲ってきたんだって」
「何!? な、お前! シーダイル!?」
シーダイル? 海のワニだからシーダイルか。
刹那――シーダイルが海の中から飛び出し、俺に食い掛かってきた。
よし、今ならいける。
「火炎球!」
生み出された火の玉がシーダイルの口の中に入っていき爆発した。
だが、それだけでは倒せない。
咄嗟にアイテムバッグから鉄の塊を取り出す。
本当にただの鉄の塊。アイアンゴーレムからとったそれを盾代わりにする。
ワニはそれを噛み砕こうとしたが、とうぜんそんなものを噛みついたらただでは済まない。
そして――
(アイテムクリエイト)
横にいる男達に聞こえないように小声でつぶやく。
突如、鉄の塊が――
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鉄菱【投擲】 レア:★
鉄製の撒菱。追手から逃げるために道にばら撒く。
持ち運び難いアイテムとしても有名。
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無数のトゲトゲ武器へと変わった。それを噛みついたものだからシーダイルの口の中が大変なことになった。
そして、最後に俺はその口を押さえつけ、アイテムバッグから取り出したプラチナソードで一刺し。
のたうち回ったのち、絶命し、ワニ肉とワニ皮が残った。
「ふぅ、助かった……ありがとうな、俺はコーマ!」
「あんた、なんだ、今のは――」
「いやぁ、あんたたちは命の恩人だよ。助かった助かった。って、あれ? そっちのあんた、背中怪我してるじゃないか。ちょうどポーションがあるんだ、使ってくれよ」
俺は横にいた男の手を握って握手をかわし、ポーションを渡した。
とりあえず、なし崩し的にアイテムクリエイトのことだけでもなかったことにしよう。アイテムバッグのことはばれてもいい。地上で普通に売ってるアイテムだからな。
彼の背中が怪我してるのは、小船に飛び乗る前に確認していた。
「おい、あんた、これ一体」
「大丈夫、効き目は俺が保証するから!」
ニッと笑顔を浮かべ、親指を立てる俺。
怪しさMAXな気もするが、男はじっと薬を見つめ、
「……このポーション、何本ある?」
「ああ、20本ほど入ってる」
「そんなにか!」
男は驚くが、鞄の中にはポーションの他に、アルティメットポーションが50本ほど入っているし、解毒ポーション、解呪ポーションなどの多種類のポーションが入っている。
男は怪訝そうな顔をしながらも、ポーションをごくりと飲んだ。
へぇ、てっきり怪しがって飲まないと思ったんだが。
でも、飲んでもらえたら助かる。
「不味いな……だが、背中の痛みが確かになくなった」
「だろ?」
「悪いが、あと3本ほど貰えないか? 仲間にも渡したいんだ」
「ああ、いいぞ」
そういって、3本のポーションを渡す。
男は小船をこいでいき、もう一隻の船へと近づいた。
「見ていたよ、やるじゃないか、あんた」
「姉御 客人から上質の薬を貰った。効果は絶大だ」
「薬?」
姉御というのは、茶色い髪の眼帯美人のお姉さんだった。
手の甲に切り傷がある。
なるほど、さっきの男は自分が毒見をして効果があれば彼女に薬を渡す予定だったのか。
「お姉さん、その目は病気か何かですか?」
「ああ、昔の古傷が原因でね……」
お姉さんは眼帯を外して見せてくれた。
隠れた部分の肉が紫色に変色し、目の部分が空洞になっている。
思ったよりひどい怪我だ。
「……じゃあ、これ飲んでみてください」
「それは?」
「目にいい薬です。もちろん手の傷にも効きますよ」
「目にいい? 痛みはほとんどないんだがね」
お姉さんはそう言って、俺の渡した薬を飲んだ。
手の甲の傷がみるみる塞がっていくのを見て、周りの男達が感嘆の声をあげる。
「すげぇ……」
誰かが呟いた。
だが、一番驚いたのは、お姉さんのほうだろうな。
「…………あんた、何をした!?」
「目にいい薬なんですが、効果なかったですか」
「目にいい! ふざけるんじゃないよっ! 何だこの薬!」
お姉さんの怒気ともとれる気迫に、周りの男が俺を睨み付ける。
中には腰に携えた剣にまで手を伸ばす人もいるが、
「やめろ!」
お姉さんはそう言い放ち、再度自分の眼帯を握った。
そしてそれをむしり取るように外すと――きれいな眼球が彼女の右目に復元されていた。
もちろん、彼女に渡したのはポーションではなく、アルティメットポーションだ。相変わらず効果は抜群だな。
俺、魔王とか勇者の従者をやめて、薬師になったほうがいかもしれない。
どんな客にもアルティメットポーションしか出さないから問題になりそうだけど。
お姉さんの目が治ったことに男達は驚きの声をあげた。
中には俺を神と勘違いしたのか拝んでくるものまでいる。
おいおい、神と間違えて魔王を拝むなんて罰当たりにもほどがあるぞ。
「視力はどうですか?」
「あぁ、少しぼやけてるが、だいぶいい」
「そのうち元に戻りますよ」
「本当に、あんたいったい何なんだい」
「とりあえず、貴方たちを捕まえに来たものではない、とだけ言っておきますよ」
俺は笑って言うと、お姉さんは俺を睨み付けるように言う。
「あたい達が海賊だって気付いてたのかい?」
「そりゃ、気付きますよ」
俺はそういい、男達が頭に巻いている赤いバンダナを見た。
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海賊のバンダナ【帽子】 レア:★★
海賊が頭に巻く赤いバンダナ。素早さ小アップ。
海賊以外も使えるが、海賊に間違えられても知らないぞ。
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自分達が海賊です、と言ってるようなもんだろ。
ちなみに、頭装備は【兜】と【帽子】の二つに分かれる。
海賊のバンダナの他にも似たようなバンダナがあり、盗賊のバンダナは茶色、山賊のバンダナは緑色で、どれも似たような効果がある。全部作成済み。
海賊のバンダナだけがやけに派手だが、海賊ってものは、海賊旗をかかげたり、自分達の恐ろしさをアピールするものだからな。
「とりあえず、俺は地上から来たもので、情報が欲しいんですよ。できれば裏の情報が」
そんためには海賊からの情報というのはあんがい捨て置けないものだと思った。
恩を売ることも成功したし、俺を邪険に扱うことはないだろう。
それにしても、男達と彼女の手の甲の傷……。
詳しく聞くと、案の定、空から落ちてきた女剣士にやられたという。
クリスの無事を喜びながらも、通信イヤリングに手を取った。
明日はちょっと頑張って更新しようの日です。
更新回数が増えるのと、予約投稿ではなく、手動更新します。