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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode11.5 塔の迷宮・後編

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崩壊する塔

~前回のあらすじ~

天使が現れた。

 グラッドストーンに天使と呼ばれた謎の少女――彼女が言った。クリスの父と一緒にルシファーを倒したと。


 その言葉に、俺たち三人はそれぞれ違った反応を見せた。

 俺は単純に驚きだろう。


 ルシファーを倒した七人。

 クリスの父親エグリザ、ギルドマスターユーリとルル(当時はルナと名乗っていたらしいが)、詐欺師サイモン、忍の元頭領グンジイ、魔術師ジューン。

 残りふたりが不明だったが、そのうちのひとりが目の前の少女だっていうのか。


(ルナとこの少女――七英雄、ロリ率高すぎだろ)


 七人中二人ロリ、ひとりが爺さんか。下手したら三世帯家族に見えるぞ。


 ルシルとクリスは何を考えているのか?

 クリスにとっては、父親の仲間。

 ルシルにとっては、父親の仇敵。

 

 だが、俺はこの機会に、彼女に質問をぶつけることにした。警戒心を出しながら。


「俺の名前はコーマだ。お前の名前は?」

「……リエル」

「そうか、天使にも名前はあったのか……いや、そもそも本当にお前は天使なのか?」

「そう呼ばれている」


 ただの人間……それを素直に信じる気には、今はなれない。

 グラッドストーンを一瞬にして殺したあの力は、普通の人間が持っているとは思えない。


「お前が七英雄のひとりなのか?」

「七英雄を、魔竜を討伐した六人と一体のパーティーの呼称だとするのなら、その通りです」


 ユーリを一体と数えたのか。まぁ、あいつは人形だから正しいのだが。


「七英雄。グンジイの腰を治したのはお前か?」

「その通りです」

「もうひとり、ルナとひとり女性がいたはずだが、それは誰だ?」

「それは言えない契約になっている。伝えることはできない」


 間髪入れずに返ってきた答え。謎は深まるが、でも今はリエルについて知ることが優先だろう。


「お前の目的はなんだ?」

「この塔を壊す」

「え?」


 言っている意味がわからない、そう思った時だった。


「コーマ様っ! 後ろに飛んでっ!」


 声が聞こえたと思った次の瞬間、俺はその声に従い後ろに飛んでいた。と同時に、気付いた。先ほどまで俺が立っていた場所がなくなっていた。

 穴が開いていたのだ。普通の穴ではない。穴は虚空のように広がり――それはまるで、迷宮の壁を壊したときに開いたような虚空。


 いったい、何が起きたんだ?

 そう思ったら、先ほど俺に注意をしてくれた彼女が叫んだ。


「早く脱出します! ここはもう持ちません」


 その注意を発したのは、意外な人物だった。


「エリエールさん!? なんでここに!?」

「いいから走ってください! クリスティーナさんはルチミナさんを抱えてください! 精霊様たちを忘れずに!」

「わ、わかりました、エリエール様!」


 クリスがルシルを背負い、俺たちはエリエールを先頭に走り出した。


「私もこの世界に関してはいろいろと言いたいことがありますが、今は走ってください。塔が崩壊します」

「エリエールは知ってたのか? あいつが何なのか、この塔が何なのか」

「すみません、私が徹夜でフリーマーケットダークシルド店の財務整理をして寝落ちしてしまったせいで、気付くのが遅れました……本店の財務整理をひとりでなさり、さらに全店舗の報告を聞いて指示を出しているメイベル様は化け物です」

「いや、そんな仕事の愚痴こそ後でいいだろ! 一体、何が起きてる?」

「今現在、ふたつの勢力による迷宮崩しが始まっています……ひとつは天使による迷宮の破壊。そして――もうひとつは魔王ベリアルによる迷宮崩しです」

「ベリアル!? あいつ、また来たのか!?」

「いえ、コーマ様の知っているベリアルとは――すみません、私もあまり詳しくは知らないのですが、ブックメーカーからの情報だけなので」

「ブックメーカーからの?」

 

 やばい、情報が錯そうし過ぎて本当にわけがわからない。

 ただ、兎も角、今は転移陣に向かって走るしかないってわけか。


 背後を見るが、リエルは俺たちを追ってきてはいない。

 その代わりに、世界が崩れていく。

 後方数十メートルより向こうは、空間が完全に闇に包まれている。あそこに入ったらどうなるのか、考えたくもない。


「コーマ様、前がっ!」

「嘘だろ! 転移陣が消えかかっている」


 転移陣の光が淡くなっていき、もう消えそうだ。

 くそっ


「ルシル! なんとかしてくれっ!」

「どうしようもないわよっ! 全力で走って!」

「やっぱりかぁぁぁぁっ!」


 俺たちは全力で転移陣に向かって走る。


「悪いっ!」


 俺はエリエールを抱え上げた。彼女の速度は人間としてはかなり速いが、それでも俺やクリスには劣る。彼女を先頭に走らせるより、俺が彼女を抱えて走ったほうが速い。


「こ、コーマ様」

「ごめん、エリエールさん。でも勘弁な」


 肩越しに背後を見ると、クリスのすぐ背後まで闇が迫っていた。

 闇の精霊と戦って、闇の竜の力を宿していても、根本的にあれは違う。あれは闇というよりかは無だ。


 俺はすぐ後ろにいるクリスの手を掴み、転移陣に向かってダイブした。


 そして――気が付けば、俺たちは大聖堂の隠し部屋にいた。

 その部屋にあったはずの転移陣は綺麗に消えて無くなっていた。

よくわからない状況のまま、今章はあと一話で終わります。

暫く、普通の日常(?)っぽい雰囲気に戻ります。

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