魔力が足りない
~前回のあらすじ~
鈴子を日本に戻すことになった。
俺とルシル、鈴子は神社の本殿に移動した。
万が一のことがあったら、精霊たちを連れて西大陸から脱出するように言ってある。
すでに集めた力のごくごく一部を使い、地上への転移陣は完成してある。
クリスにしては珍しく、俺の要請に素直に応じてくれた。
本殿の中に土足で上がり、ルシルがチョークを使って転移陣のような魔法陣を何重にも書いていく。
魔法陣を書き終えると、鈴子をその中央に座らせた。
「コーマ、できたわ」
「じゃあ、鈴子、行くぞ」
俺が鈴子に言う。
「……うん」
鈴子は静かに頷いた。
今回はギリギリのところを行くため、叡智のスキルを表示することにした。
よし、行くか。
俺とルシルは魔力の妙薬を飲んで、魔力の底上げを行った。
これで五割増しになる。
ルシルが封印を第一段階まで解除する。
第一段階だと俺は竜化を抑えることはできるが、今回は第二段階まで行くのでその必要はない。
【竜化状態が第一段階になりました】
【破壊衝動制御率99.99%。ステータスが大幅上昇しました】
その後、魔法の一時レベルアップ表示が羅列される。
くっ、ちょっと来たな。でも、今の俺だとこの程度なら問題ない。
ただ、破壊衝動制御率が100%に行かないのは相変わらずだ。100%まで行ったらアイテムからスキルを吸収できるんだが。
ルシルの体も中学生のそれにまで成長する。
「……人間、じゃないの?」
「元は人間だよ。ただの日本人だ。でも今は魔王をやってる」
「……驚き」
だから、お前は絶対驚いてないだろ。
「コーマ、次、行くわよ」
「あぁ、頼む」
【竜化状態が第二段階になりました】
【破壊衝動制御率34%。ステータスが大幅上昇しました】
魔法の一時レベルアップが表示される中、俺の中に破壊衝動が膨れ上がる。
【殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ、殺せ】
うん、まだ耐えられる。まだ耐えられる。
ルシルの体も成長し、高校生くらいに――今のままルシルが力を解放すれば、女子大生くらいの力にはなるだろう。
「……ルシル、どうだ? なんとかなりそうか? こっちはまだ耐えらえる」
「………………」
「ルシル、返事をしてくれ!」
「コーマ、ごめん……結構厳しい。ここ――日本と私の世界との中間点くらいだと思ってたけど、もっと手前だった……日本に行くまでの力が足りない」
「ルシル、それなら第三段階に――」
「コーマ、忘れたの? 第二段階にはじめてなったとき、あなたが何をしたのかを――」
「……そうだよな」
第二段階になったとき、俺はこの手でカリーヌと、そしてクリスを殺しかけた。いや、実際にはクリスの腹を貫いていた。ルシルの腹を貫いたベリアルのように。
竜化の段階はひとつ上がることで数倍の負担が俺に襲い掛かる。単純に二倍や三倍ではない。
「……くそっ、何か他に手はないか……他に何か……」
竜化したまま、俺は鱗を纏っている手の甲を顎にあてる。
魔力の神薬は一日一本しか使えないし、他に何か。
ルシルの魔力を一気に押し上げる何かはないか?
ユグドラシルの杖よりも凄いものはないか?
…………それだ!
アイテムバッグから、ひとつのアイテムを取り出す。
サッカーボールサイズの種。
そう、ユグドラシルの種を。
これを鑑定した。
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ユグドラシルの種【素材】 レア度:72財宝
世界樹とも呼ばれるユグドラシルの種。
種にも多くの魔力が込められている。
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枝は加工しないと72財宝にはならなかったが、種はそのままで72財宝だ。
これを加工したら何かできるんじゃないか?




