コーマ対コーマ
~前回のあらすじ~
コーマの偽者が現れた。
何を取り出すか――相手は俺だ。ということは俺の考えも手に取るようにわかっているはず。
こういう時に真っ先に俺が取り出すのは――決まってる、神雷の杖だ。
それならば――
「避雷針!」
俺は雷を受け止めるための鉄の柱を取り出して放り投げた。
だが――
俺と偽コーマ、ふたりが投げた鉄の柱が駐車場のアスファルトを貫いて突き刺さっただけだった。
……それならば、と今度はエントキラーを取り出して物理的に攻撃――するフリをして後ろに飛び、普段攻撃としてあまり使わない魔法を使った。
「火炎球!」
火の玉が飛ぶ――が、それもフェイント――火の弾に隠れるように、俺はアイテムバッグから、ウォーターボムを取り出し、それを放り投げた。
俺の勝利条件は偽者の俺に勝つことじゃない、俺の勝利条件はあくまでも鈴子を気絶させること。
それなら、水で押し流し、その間に鈴子を気絶させる……そう思った。
実は火炎球を放つまで偽者と俺とは全く同じ行動をしていた。
違うとすれば、ウォーターボムを投げたところだろうか?
と思ったのだが――
二つの火炎球が衝突して爆発した。だが、たかが俺の火炎球、その威力は、ちょっとした手榴弾程度の衝撃でしかなく、手榴弾によるダメージのほとんどは破片による傷であり、その破片も火炎球では生じないので、殺傷能力は低い。そんな威力の火炎球の衝撃に、俺がアイテムクリエイトで作ったウォーターボムが負けるわけもなく、相手の下に落ちるはずだった。
だが――
カンっ
金属と金属がぶつかる音が聞こえた。
爆炎が晴れ、落ちていたのはふたつのウォーターボムだった。
「なっ」
留め金を抜き、10秒経過――ふたつのウォーターボムが爆発した。通常の透明の水と、僅かに黒い水が混ざり合って溢れだした。
俺たちは同時に後ろに飛び、駐車場の壁の上に飛び乗った。
そうか、相手も狙いは俺を倒すことではなく、時間を稼ぐことだからな。同じことを考えたということか。
ド〇えもんという国民的アニメに出てくる男の子が物事を決める時、右手と左手とでジャンケンをしてどちらにするか決めるという話があった。
その時は、延々と決着がつかずに男の子が泣きだすのだが、まるでその男の子の気分だ。
でも――
(俺の勝ちだ!)
と俺はほくそ笑む。
何故なら溢れた水は荒れ狂い、鈴子を飲み込もうとしていた。
溺れて気絶しろ! そうしたらこっちの勝ちだ!
そう思ったのに――
「……え?」
水が飲みこまれていく――?
日本へつながる穴の周りにいた精霊へと。
あれは……そうか、水の精霊が水の力を吸収しているんだ。
ということは、水、火、土、風、光のエネルギーは、日本に通じる穴の傍にいる鈴子には効かないということか。
「ちっ」
その舌打ちは、俺の物ではなかった。俺も舌打ちしようとしたが、先にそう言ったのは偽者の俺だった。
「どういうことだ、まるで鈴子が倒れて欲しかったように見えるぞ?」
「言ってるだろ。俺はお前だ。鈴子と日本に通じる扉を守るように命令されているが、本心はこの世界を守りたいと思ってる。だから、俺に勝ってみな、俺!」
「いや、お前に勝つ必要なんてないだろ!」
と俺は卑怯な作戦に出た。
「落雷!」
雷魔法、これなら鈴子を気絶させられる!
そう思って放った雷魔法だったが――
雷は鈴子には行かず、避雷針に落ちて大地へと流れて言った。
「避雷針を投げたことを忘れていたのか? 俺のことだが、バカだろ」
「……うるせぇ、俺のくせに俺をバカにするな」
流石に少し恥ずかしいが――いや、待てよ?
俺は神雷の杖を取り出した。
「雷よっ!」
俺の放つ雷は全て二本の避雷針へと落ちていく。
「雷よっ!」
「気でも狂ったのか、俺! 雷は俺にも鈴子にも届かない――って、そういうことか!」
「さすが俺! わかったか!」
俺は不敵な笑みを浮かべ、ウォーターボムを避雷針に向けて放った。
偽者は全てを捨ててそれを追いかける。
当たり前だ。ウォーターボムが爆発したら、水が溢れる。
水が溢れたら、避雷針と、避雷針が砕いた地面の下の水に溜まった電気が一気に水を通じる。
そして、そんな水を水の精霊が吸収したらどうなるか?
それはわからない。
電気を通じても水ならば吸収できるのか、水だけ吸収して電気の衝撃は水精霊に伝わるのか、それはわからない。
わからないからこそ、偽者は守らないといけない。水の精霊を。日本への門を守るという命令があるから。
「でも残念だったな。ウォーターボムを止める方法はある!」
そう言って、偽者はそのウォーターボムをつかみ、爆発する前にアイテムバッグに入れた。が――
「雷よっ!」
俺の放った雷が、偽者のすぐ横にいた俺の避雷針へと流れ、その余波で偽者が吹き飛ぶ。
避雷針の傍に立ってはいけないって学校で教わらなかったか?
……いや、教わった覚えはないか。
「……がふっ、卑怯すぎるだろ、俺」
「能力が同じなら、卑怯なほうが勝つに決まってるだろ」
「……それが正しいよ。クリスなら、正義が勝つとか言い出しそうだがな」
偽者が血を吐いて倒れた。
「いいのか? アイテムバッグの中のエリクシールを使わなくて――回復できる時間はあっただろ?」
「そうしたいのはやまやまだが、もう両手も動かないんだわ。じゃあ、気張っていけよ、俺」
「あぁ、頑張るよ――俺――雷よっ!」
俺の放った雷が、俺の偽者――いや、紛れもなく本物であった俺を撃ち抜いた。




