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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode11.5 塔の迷宮・後編

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戻れない理由(ワケ)

~前回のあらすじ~


 現在、五体の精霊により、日本への扉が開かれようとしている。今は人が通るには小さすぎる穴だが、もう少し大きくなれば、鈴子の小さな体だと通れるようになる。

 彼女が扉を通れば、地上から集めたエネルギーの約半分が失われ、恐らく西大陸は未曽有の大飢饉に見舞われる。

 それだけは回避しなくてはいけない。


 ならば、俺が取る手段はふたつ。

 ひとつは、扉の破壊。扉の解放には五体の精霊の力が必要不可欠だ。それなら、精霊を遠ざけたら、もしくは殺したら扉が壊れるんじゃないか?

 だが、それはあくまでも奥の手だ。


『コーマ、とにかく今から私がそっちに行くから、扉に手を触れたらだめよ。その異界への扉が持つエネルギーは、今まで潜って来た転移陣の比じゃないわ。下手にいじったらこの迷宮だけじゃない、西大陸全部吹き飛んでしまうことになるわよ』


 走る音が聞こえた。通信イヤリングの向こうで、「ルシルちゃん、どっちですか!?」と叫んでいるクリスの声が聞こえたので、彼女がルシルを負ぶって走っているのだろう。

 結構な距離があったからな。ここまで来るのに何分かかるかわらかない。

 となれば、俺ができることはただ一つ。


「鈴子、俺はお前を気絶させるぞ」

「……あなたは、日本に、戻りたくないの?」


 鈴子はとても不思議そうな目で俺を見た。

 まるで、俺が日本に対して郷愁の念がないことが信じられないように。


「あぁ、日本はいいところだよな……ボトルキャップはあるし食玩はあるし、本当にトレーディングカードゲームを開発した人は天才だよな。そもそも、情報社会だから、何かを集めるときのゴールが明確だし、同士も多いし、情報交流という目的で友達ができるし、それに何より――」


 俺の脳裏によぎったのは、たった二人の顏だった。


「あっちには親父と……母さんがいる」

「……なら、私と一緒に来ればいい……この世界のことなんて忘れて」

「悪いがそういうわけにはいかないんだよ」


 クルトの師匠であり、カリーヌの兄であり、メイベルたちの元オーナーであり、コメットちゃんやタラたちの主人であり、クリスの従者である。他にもスーやシー、サクヤやシグレたちの友達だし、スウィートポテト学園の生徒たちにとっては校長だし、他にも、この世界で多くの人と出会ってきたが、でもそれらの全てを合わせてやっと届くか届かないかという約束がある。


「悪いが、俺はここに残らないといけない理由がある。お前と一緒に行くことはできないし、お前をひとりで行かせることもできない」

「……我儘」

「はっ、故郷への片道切符を買うために大陸ひとつ売り払う我儘お嬢様に言われたくないよ」


 俺はそう呟きながら、アイテムバッグに手を入れて、力の妙薬を取り出して飲んだ。

 苦味が口の中に広がり、瞬時に消えていく。


 これで準備完了だ。

 

「お前は闇の精霊と融合しなくていいのか? 生身の体で俺に勝てると思ってるのか? それとも何かチート能力でも隠し持ってるのか? 異世界小説みたいに」

「……異世界小説? チート?」

「……あぁ、そうか……平成8年、お前がいたころには異世界小説なんてほとんどないし、チートって言葉もほとんど広まってないんだったか。同じ日本人なのにジェネレーションギャップ……」

「……チート能力というのが何かは知らないけど――あなたが強いというのなら、あなたが戦えばいい」


「いや、戦うって言われても、俺、ただのコレクターなのに、なんでこんな面倒なことになってるんだ」


 ……何を言ってるんだ?


「でも、この能力は便利だよな。サフラン雑貨店の先着百名様のパーカ人形配布のときとか、ふたりで並べばふたつのパーカ人形が貰えたのに」


 ……こいつはいったい、何を言ってるんだ?

 いや、こいつは一体誰なんだ?


 目の前に――俺がいた。ただし、全体的に、何か黒い。

 ただでさえ黒い俺の服なんて、まるで光を吸収するかのような黒さだ。


「おいおい、驚くことはないだろ。結構お約束じゃないか? 自分のコピーと戦うのはな。まぁ、俺はコピーじゃなくて、影なんだけどな」

「驚いていたのはあまりのネタの古さにだよ。全く、昭和のアニメから出て来たのか、お前は」

「出て来たのはお前の影からだよ。さて、クリスが来たら『コーマさん、双子だったんですか?』なんて馬鹿なことを言うだろうからな、手早く決着をつけようぜ! 勝つのは俺だけどな」

「……お前が俺なら、戦いを避けることは?」

「それができないのもお約束だろ?」

「……だな」


 そして、俺たちは同時にアイテムバッグに手を入れた。

~嘘次回予告~


コーマ(本人)「いでよ、イカ墨の足りないイカ墨スパゲティー(ルシル特製)!」

コーマ(偽者)「バカな、俺、まさか相打ちに持ち込むつもりか! てかそんなの食いたくねぇ! イカ墨スパゲティーじゃなくて、巨大ダイオウイカじゃねぇか!」

コーマ(本人)「ははは、相打ちなわけないだろ! このイカ墨スパゲティは色が薄い。黒さを求めている。そう、お前の黒さをな! 死ぬのはお前だけだ、偽物!」

コーマ(偽者)「……それならこれはどうだ! ちょっと焦げたトースト(ルシル特製)! 焦げたパンはこれ以上黒くはなりたくないと思ってる! だから、黒い俺を食べることは無い。食べられるのはお前だけだ!(ダイオウイカに掴まりながら)」

コーマ(本物)「うわ、お前、それの封印を解いたのか! ていうか、それ、トーストじゃなくて、トー〇スじゃないか! 線路もないのに機関車が走ってる! 蒸気が凄い! 絶対食べ物じゃない! それなら、俺は黒さを求めるブラックカレー(ルシル特製)!」

コーマ(偽者)「それなら俺は白さを求めるホワイトシチュー(ルシル特製)!」


ルシル「いつの間にかコーマがふたりに増えてるけど、そうまでして、そんなに私の料理を食べたいのね。わかったわ! 今から満漢全席をご馳走してあげる!」

コーマ(本物&偽者)「え゛」



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