ユグドラシルの成長
~前回のあらすじ~
ユグドラシルの上にシルフィアが現れた。
光の中に浮かび、宙を浮くシルフィアを見る。
相変わらず診察スキルを使ってもHP、MPは確認できない。ここにきて本当に役立たずスキルに成り下がったな。
と、その時、鼓動が聞こえた。
俺やルシル、ベリアルのものではない。そして、シルフィアのものでも。
振り返ると、俺はその鼓動の主を見つけた。
「……まだ成長しようとしているのか……ユグドラシルが……はっ」
俺はとある異変に気付き、樹の枝の上に飛び乗った。
そして、それを見た。
「コーマ、どうしたの?」
「草原が……大地が、枯れていく」
大樹の周辺のみの樹が枯れていたはずの草地。だが、その範囲は急激に広がっていき、瞬く間に俺の視界すべての緑の大地の色が失われた。茶色い大地が広がっていった。
そして――
「ルシル、氷のバリアを張ってくれっ! 早く!」
「バリアって、どっちに!?」
「どっちとかじゃねぇ! 全方位だ!」
俺は枝の上から飛び降りた。
「私、さっき魔法使ったばかりだから、ちょっと封印解くわよ!」
「あぁ、少し耐えるから」
ルシルが封印解除をせずに魔法を使えるようになったように、俺も封印の第一段階を解除している状態でも竜化せずに耐えられるようになっているからな。俺の中に力が溢れ出すが、それを抑え込んだ。
ルシルが中学生バージョンに変身した。
「氷壁」
ルシルが氷を張った。
「それで、コーマ。なんでこんな壁を作らせたの?」
「せまってくるんだよ――」
俺が言った――その時、氷の向こうにそれが迫って来た。
炎の嵐が。
「なんで炎なのよ! 火は火の神子の領分でしょ!」
「光は火を生み出すことができるんじゃねぇのか! 虫眼鏡で蟻を焦がした悪ガキはどの世界にもひとりはいるだろ」
それに――俺は足元の枯れた草を握った。草は水分が完全に奪われていて、握ると粉々に砕け散った。
土からも完全に水分が奪われている。
「水を吸い上げている」
俺はユグドラシルを見上げて言った。
「二酸化炭素を作っている」
炎が消え失せ、焼け焦げた草が大地に広がる。
本来ならあれだけの炎が広がれば、酸欠になってもおかしくない。だが――
「他の植物から養分を吸いとるだけではなく――」
迷宮中から吸い上げた水、草原を燃やして作り出した二酸化炭素、そして――太陽と光の精霊から出る光。
それらすべてを使い、ユグドラシルは光合成をしているっていうのか。
ユグドラシルはさらに巨木へと成長していった。
そして、
「樹が光ってる――」
ルシルがぽつりとつぶやいた。
「さらにエネルギーを吸い上げているの? でも、このエネルギー……」
ルシルはユグドラシルに手を当てて言った。
「明らかに、この迷宮全体のエネルギーをも上回っているわ……まさか」
※※※
「クリス、大変だ! 外に来い!」
私に割り当てられた部屋で素振りをしていると、レイシアちゃんがそう言って駆け込んできました。
「どうしたの、レイシアちゃん!」
「ちゃんというな……と言いたいが、それどころではない……いいから早くしろ!」
「わ、わかりました」
レイシアちゃんに促され、私は聖堂の見張り台に向かいました。そこでは、多くの人が見張り台から外を見ています。
何があったのか、それはすぐにわかりました。
湖面がすぐ近くにあったのです。聖殿の一部はもう水に浸かっているように思えます。
「大聖殿の高度が下がっている?」
「それだけではない……森を見てみろ」
「森……?」
大聖殿の聖地を囲うようにある森。
私はそれを見て――私はその異変にもすぐに気付きました。
「……森が、枯れている」
何か良くないことが起こっている。それだけはすぐにわかりました。




