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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode11.5 塔の迷宮・後編

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ユグドラシルの種

~前回のあらすじ~

ベリアルが落ちて来た。

 ユグドラシルの種……リーリウム王国にあるユグドラシルには、少なくともそんなものはなかった。

 さっきのリンゴもどきも実っていなかった。


「……ベリアル、その種」

「ほらよ」


 ベリアルは四つある種のうち、三つを俺に向かって投げて来た。


「あいつからはひとつは持ち帰るように言われているから、残りはお前にやるよ」

「……いいのか? 恋愛シミュレーションのヒロインじゃないから、好感度が上がってイベントが発生したりはしないけど。いや、もう返せって言われても返さないが」


 何しろ、貴重な72財宝だ。

 72財宝を集めると言いながら、魔剣グラムはエントキラーに作り替え、エクスカリバーは失い、宝玉は壊しまくり、ユーリや生命の書は放置しているし。手元にあるのは、魂の杯と友好の指輪とユグドラシルの杖くらいだ。

 あれ? 俺、コレクターに向いてないんじゃないか? コレクションの保存はコレクターにおいては最大の義務のようなものなのに。


「で、グリューエルはなんで一個種を持って帰るように言ったんだ? あいつも一個持ってるだろうに」

「あぁ? あれはもう使ったからな。ってあれ? お前、俺様がいまグリュ……あいつに使われているって話したか?」

「ばれていないと思ったのなら、俺はお前を尊敬するよ……でも、意外だな。あいつよりお前のほうが強そうなのに」

「……俺様もそう思ってたよ」


 ベリアルは背中を向け、何か悔しそうに言う。

 負けた……のだろうか?


「ベリアルが負けるところなんて想像できないが」

「おいおい、俺様を負かせたお前が言う台詞じゃないぞ」


 ガハハハとベリアルは笑った。


「コーマ、なにベリアルと楽し気に会話してるのよ」


 ルシルが半眼で睨み付けた。


「しまった! くそ、これがプレゼントの効果なのか。俺の好感度が上がったのか」

「コーマがBLモードに入ったのは別にいいけど、それより、何の目的でユグドラシルをここに植えたの?」

「植えた? ベリアルが?」

「コーマ、気付いたでしょ。この周辺の草が枯れていることに」

「……あぁ、ユグドラシルに栄養を取られたんだろうな」

「ユグドラシルが前からここに生えていたのなら……前からって言い方は変ね。迷宮ができた時から生えていたのなら、草は枯れる前に生えてこないでしょ」

「あ、言われてみればそうだな」


 ユグドラシルは植えられた。

 自分で言ったことじゃないか。グリューエルはユグドラシルの種を持っているって。


「ってあれ? ベリアル? お前、種なんて持っていたか? それ、結構大きいから目立つだろ?」

「ん? あぁ、ここにな」


 ベリアルは自分の腰蓑の中に手を入れた。俺とルシルは共に嫌そうな顔をするが、


「おいおい、勘違いするな。これだこれ」


 ベリアルが腰蓑から取り出したのは、見慣れた鞄だった。


「アイテムバッグか」

「おうよ。まぁ、あいつから貸してもらったんだけどな。ラビスシティーに売っていたのを手練手管を使っていくつか買ったらしいぜ」

 

 まじか。俺が作ったアイテムが巡り巡ってグリューエルやベリアルの物になるってなんか嫌な気分だな。


「つまり、ベリアルがユグドラシルの種を植えて、ユグドラシルをここに生やしたってわけか。一瞬で巨木になるって、さすがだな」


 そう言えば、エントも一瞬で巨木になってたし。


「それで、なんでベリアルはユグドラシルの種を植えたんだ? あ、言えないなら別に無理して言わなくてもいいぞ」

「あぁ、なんでもこの迷宮はまだ中途半端な迷宮らしいからな。それを完全なものにするために、ユグドラシルの種をここに植える必要があったらしい。俺様にもよくわからないんだが、樹というのは肥料を吸い上げるから、なんかの象徴になるとかそんなこんなだ」

「……よくわからない奴が説明しているせいか、余計にわからないな。ということで、ルシル、教えてくれ」


「コーマ、私に丸投げするところ、クリスにそっくりよ」


 ……ぐっ、それを言われると辛いが。


「バベルの塔っていう迷宮は異なる世界に行くための手段として作られているんでしょうけど、まだ未完成なの。つまり、この塔は日本には通じていないの。根本的に、六つの宝玉だけだとエネルギーが足りないのね、きっと。だから、エネルギーを集めているの。恐らく、精霊を逃がさずどこかに転移しているのも同じ理由かもしれないわね」

「エネルギーを上に送るためにこの樹を生やしたってわけか。なんでグリューエルはそれに協力してるんだ?」

「そんなの私も知らないわよ」


 ルシルが怒った時だった。

 まばゆい光が輝いた。新たな太陽が生まれたような光に、俺はサングラスを取り出して見上げた。


 すると、その光の中心に彼女がいた。


 光の神子――シルフィアが。

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