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アルジェラ捕り物

~前回のあらすじ~

アルジェラと肉弾戦に持ち込むことに。

 アルティメットポーションを飲み、細剣で貫かれた左手と、アルジェラを殴ったことで傷ついた手を治療し、アルジェラから奪い取った聖銀の細剣はアイテムバッグに入れた。

 ふたつの拳を叩き合わせ、俺は力を籠める。

「全く、女の子を殴るなんて――本当にやってられないよ」

 それでも、アルジェラは本当に幸せそうだった。

 改心したグルースと一緒に住むことができて、本当に幸せだった。

 誰が何の目的でこんな事態を引き起こしたのかはわからないが、許せるわけないよな。


 でも、その怒りは後にとっておく。

 今はアルジェラを元に戻すことに集中しないと。

 アルジェラの体はいくら殴っても無駄――というよりは俺の拳が先にダメになる。

 殴るとしたら、アルジェラではなく、アルジェラの右腕の宝玉。それだけだ。


「行くぞ、アルジェラ!」


 俺は拳を前に突き出す。その速度はまさに神速――のはずだったのに、アルジェラは下に屈んで俺の攻撃を避けると、その小さな両腕で俺の右腕を掴んだ。俺の体のバランスが崩れて宙に浮き、次の瞬間には前方に放り投げられていた。

 頭から激突しそうになるが、空中でバランスを立て直し、足で壁に着地する。


「コーマさん! 行動が真っ直ぐ過ぎて動きが読まれているんです! ちゃんとフェイント入れてください!」

「うるせぇ、こっちは力はあるが戦いに関しては未だに素人なんだ」


 アイテムクリエイトの力と多種多様のアイテムでカバーしていたが、拳のみの攻撃だと俺の不器用さが露見される。

 これでも、タラ相手に修行して、ある程度は強くなったが、まだこの剣と魔法の世界に来て一年にもなっていない。


 でも、あんな小さな体の女の子に投げ飛ばされるのって、かなり恥ずかしいな。


 フェイントか……よし、やってみるか。

 俺は真っ直ぐアルジェラへと走ると、彼女の手前で左に大きく跳び、横にあった壁を蹴り、アルジェラの頭上に、そのまま反対側の壁に飛び移るとみせかけて、体勢を変え、天井からアルジェラの右腕目掛けて拳を振るった。


 が――アルジェラは再度俺の腕を掴み、その勢いのまま俺を下に投げつけ、彼女は後ろに飛んだ。

 そして、俺は顔から、ズゴンという音とともに地面に激突。


「っつぅぅぅ、いてえぇぇぇぇぇ」


 投げのカウンター技ってかなりつらいな。こっちの威力がそのまま敵の攻撃力になる感じだ。

 しかも、やっぱりアルジェラに投げ飛ばされるというのは精神的に辛い。


「あぁ、チクショウ。もう肉弾戦なんてやってられるか――!」


 俺に力技なんて無理だ。

 俺はアイテムバッグからひとつの玉を取り出した。

 ウォーターボムやエレキボムと同じ形の手榴弾を。

 そして、俺はサングラスをかけた。

……………………………………………………

暗視黒眼鏡【魔道具】 レア:★★★


暗い場所も良く見えるサングラス。

太陽のない場所で使うサングラス。

……………………………………………………


 それの留め金を抜き、7秒後、アルジェラの上に向かって投げつけた。


……………………………………………………

フラッシュボム【投擲】 レア:★★★★


留め金を抜くと10秒後、強大な光を発生させる。

目眩ましとしては最適の道具。不死生物に対し抜群の破壊力を誇る。

……………………………………………………


 ちょうどフラッシュボムがアルジェラの頭上に来たとき、フラッシュボムが爆発。光が部屋を覆いつくした。


「きゃぁぁぁ、コーマさん、使うなら使うって言ってくださいよ!」


 クリスの叫び声が聞こえてきたが、無視する。

 幸い、暗視黒眼鏡は暗視ゴーグルと違い、普通にサングラスとしても使えるので、この光の中でも俺は行動できた。

 目の前のアルジェラへと。


 だが、アルジェラはその目を閉じながらも――俺を再度投げ飛ばそうと俺の腕を掴み、投げ飛ばそうとした――が――彼女は投げ飛ばすことができず、俺の左手がアルジェラの右腕の宝玉を砕いた。


   ※※※


 クリス達の目が戻ったとき、彼女達が見たのは、俺の右腕にぶら下がるアルジェラの姿だった。


「コーマ、一体何をしたの?」

「アルジェラに投げ飛ばされないように俺の腕にこれを塗っただけだよ」


 俺はそう言って、自分の腕にくっついた白い物を取り出す。


……………………………………………………

強力瞬間とりもち【雑貨】 レア:★★★


とても強力なとりもち。なんでも一瞬でくっつく。

このとりもちを扱う時は専用手袋をお使いください。

……………………………………………………


 アルジェラは俺を投げ飛ばす時、かならず両腕で投げてくるからな。

 一瞬のことだしバランスも悪いしでその間に反撃をする技術は俺にはないが、捕まえることができたら話は別だ。

 何しろ、相手は自分から捕まりに来るんだからな。

 こうして、俺は無事にアルジェラを捕まえることができ、そして宝玉を叩き割ることができたわけなんだが。


「……そういえば、このとりもち、剥がれるまで一日かかるんだけど、どうしたらいいんだ」


 俺は右腕にぶら下がったままのアルジェラを見て、本気でどうしようかと思った。

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