その腕を封じろ
~前回のあらすじ~
アルジェラの腕にエクスカリバーが弾かれた。
エクスカリバーがアルジェラの腕に弾かれた――その不測の事態に、俺は後ろに跳び、体勢を立て直す。
(アルジェラのことを思って手加減してしまったせい――というわけじゃないよな)
確かに俺は手加減した。それはたしかだ。
でも――こっちはオリハルコンだぞ。さらに鉄ですら楽々切り裂くなんてもんじゃない、それこそプリンにナイフを入れるよりも楽に鋼鉄を真っ二つにしてしまう……というのは若干誇張表現が入っているが、つまりは手加減したからといって生身の肉体で防げるものではない。
それに、たとえ斬ることができなくても、衝撃はたしかに伝わっているはずだ。むしろ、下手に斬れない分その衝撃はアルジェラの体全体に伝わったはず――にもかかわらず、アルジェラの小さな体は吹き飛ばされることもなく、俺の攻撃を真っ向から受け止めていた。
正直、俺の手への衝撃のほうがきつそうだ。少し痺れている。
何かトリックがあるのは確かだと思うんだが――
HPとMPは、レイシアの時同様見ることができない。
これだと、さっきの攻撃が効いてるかどうかわからないが――いや、効いていないな。
「コーマさん、今のは一体何があったんですか? コーマさんの剣がアルジェラ様の腕に弾かれたように見えたんですが」
「見えたんじゃねぇ、実際に弾かれたんだ」
いや、弾かれようが弾かれまいが問題ない。
さっき、アルジェラは土の宝玉を庇った。つまり、土の宝玉の部分は無防備というわけだ。そこを攻撃したらいいだけの話だ。
「クリス、アルジェラの右腕を封じることができるか?」
「……アルジェラ様の腕を封じることができたら、なんとかなるんですか?」
「なんとかするっきゃないだろ」
相手の攻撃を封じるのはルシルが得意とするところだが、彼女が魔力を解放するには、俺の中の封印を解かなければいけない。
最近、当たり前のように封印解除を行っているが、それでも俺の精神的には結構な負担がかかる。それは薬では回復できない類のものだ。
この様子だと、戦闘はまだまだ続く。
節約できるところは節約しておきたい。
「マネット、ゴーレムを五体ほど使ってアルジェラを攪乱してくれ」
俺はそう言って、聖銀の細剣を五本、鞘に入れたまま投げた。
マネットは無数の糸でそれを受け取ると、そのまま五体のシルフィアゴーレムに投げた。
「わかったよ――行け! シルフィアゴーレムたち!」
マネットの命令で、五体のシルフィアゴーレムが舞い踊るように前に出た。
人間にはできないアクロバティックな動きでアルジェラを翻弄するように動く。
一体のシルフィアゴーレムがレイピアでアルジェラの体を突いた――が、やはりその剣先はアルジェラの体に食い込むことはない。
いったいどんな体の造りをしてるんだ。全身オリハルコンででもできているのか?
そして、クリスはシルフィアゴーレムの陰に隠れるように前へ進んだ。
よし、俺も戦闘再開だ。
アルジェラがシルフィアゴーレムのレイピアを奪い取ってシルフィアゴーレムの目を狙って突いた。
それにより、表面をミスリルでコーティングしていたはずのゴーレムの顔の右半分が破壊された。
(力も強いのか――)
あんなのまともに喰らったらひとたまりもないぞ。
竜化の出し惜しみをできないかもしれない――そう思った時だった。
「蛇紋剣!」
シルフィアゴーレムの間を縫うように、剣が伸びていった。
クリスの蛇紋剣、蛇のように剣を動かし――そして、その剣がアルジェラの腕に巻き付く。
アルジェラはその剣を引き離そうと引っ張るが――クリスがなんとか耐えている。
「コーマさん、今です!」
「ナイスだ、クリス!」
これなら――と俺のエクスカリバーが、アルジェラの左腕にある土の宝玉目掛けて突き出された。
アルジェラはその腕を背中に回そうとしたが――クリスが全力でアルジェラを引っ張ると、アルジェラの体が四分の一回転し、その腕がぎりぎり狙える位置に。
そして、俺の剣がアルジェラの腕の宝玉を貫いた。
――やったか!?
そう思ったその瞬間、アルジェラが笑った気がした。
「なっ」
俺は思わず声を上げた。
剣が――エクスカリバーがアルジェラの宝玉に当たったはずなのに――その宝玉を突きだすどころか――逆に取り込まれている。
剣は上に、下に力を入れても動かない。
「コーマさん、もう……もう限界です!」
アルジェラの右腕を捕らえていたクリスの剣が解けた。
と同時に、アルジェラの剣が俺の顏めがけて迫って来た。
俺は足でアルジェラの小さな体を蹴飛ばし、その反動で後ろに跳んだ――剣の柄から手を放し。
そして、次の瞬間には、土の宝玉がエクスカリバーを完全に取り込み終わっていた。




