アルジェラの発見
~前回のあらすじ~
この迷宮のボスはシルフィアではなくアルジェラだった。
「クレイゴーレムの中身はただの土だけど、表面は鉱石を混ぜているんだね。ミスリルを基礎にした合金のおかげで魔力が高いのか。でも、魔力が高くでも魔法回路がないから宝の持ち腐れだね。強度だけは中々のものだけど、無理やりシルフィアの姿をしたせいで能力が著しく下がっているうえに、命令回路が単純すぎるよ。土の中から命令を送っているようだけど、その命令も目の前の敵を倒せみたいな単純なものだしね。自立機能がまるでない。クリスに投げ飛ばされた時、受け身を取ることができなかったのも地面から離れたために受け身をとるための体勢維持ができなかったせいだよ。本当に数と剣の性能だけでなんとかしようとしているみたいだけど、それもコーマやクリス相手だと通用しないよね。どうせなら攻守を分けた連携でもさせたら怪我のひとつくらいならさせられたかもしれないのに――はい、完了!」
長々と説明して、地面の土に対して糸を伸ばしていたマネットがパンっと手を叩く。
すると、シルフィアたちが、一斉に敬礼した。次に腕立て伏せを開始した。一体何がどうなった?
「単純にゴーレムの操作基盤を乗っ取っただけだよこれでこのゴーレムたちは僕の言いなりだよ」
「ゴーレムの操作基盤を乗っ取っただって? ……そんなことができるのか?」
「コーマ、僕だって魔王なんだから、このくらいできるよ。こっちは数百年ゴーレムを作り続けてきたんだからね」
そうだった。マネットは子供の人形の姿をしているが、俺よりもはるかに年上なのだ。
「ちなみに、全員に簡単な知能を搭載させたよ。もちろん僕達には絶対服従だからね。どうだい、コーマ、ひとりくらい侍らせてみたら?」
「ありがたい申し出だが、さすがにこの年でお人形遊びっていうのもな。後ろでクリスが睨み付けてるし」
クリスの殺気を久しぶりに感じている。
「お人形集めは必死でしているけどね。まぁコーマは一声かけたら体を差し出す女性がひとりやふたりじゃないから不自由してないか」
「だから余計な事を言うな……」
俺の言うことを聞いてくれる人間なんてそんなにいるわけないだろ。
もうメイベルたちも俺の奴隷じゃないんだし、無条件で俺のお願いを聞いてくれそうな女の子といったら、もうコメットちゃんしか思い浮かばない。だからといって、見た目十代前半の彼女に手を出せるわけがない。
まぁ、それを言ったら、今のルシルにも手を出せないことになるんだが。
「じゃあシルフィアゴーレムたち、アイテムバッグに聖銀の細剣を入れてくれ」
俺がそう命令してアイテムバッグを広げると、全員がミスリル製にレイピアを収め鞘を入れ、俺のアイテムバッグに入れてくれた。
これは今度鋳潰して、ミスリルの宝飾品にしてメイベルにでもプレゼントするかな。彼女、ミスリルの指輪でかなり感激していたから。
いっそのことミスリルの指輪を五本の指にはめてメリケンサックとして使うのもありかもしれない……いや、ないな。
「アルジェラの場所を知っていたら案内してくれないか」
俺が尋ねると、シルフィアゴーレムは頷き、一体が前に出て、奥へ進むように促した。
この先にアルジェラがいるということか。
俺たちが前に進むと、シルフィアゴーレムたちも後ろをついてくる。
「それにしても、これだけのシルフィアゴーレム、どうするんだ? 今、転移陣は普段通りに使えないから連れていけないぞ?」
かといって、ここで置いていくのも僅かに躊躇われる。
「あぁ、それなら大丈夫よ。転移陣に関しては考えがあるわ。だから、まずはアルジェラをなんとかすることに集中しましょ」
「そうなのか?」
ルシルの考えは、クリスの考えの数百倍頼りになるからな。
ならばルシルの言う通りアルジェラを倒すことに集中させてもらうか。
幸い、アルジェラの攻撃手段であるゴーレムに関してはマネットが完全に封じてくれるどころかこちらの力へと変えてくれている。
あとは土の宝玉の場所を見抜いてそれを抜きだす――それが無理なら壊せばいいだけだ。
もう負ける理由が見つからないな。
そう思って、シルフィアゴーレムの案内の下、俺たちは迷宮の最奥に向かった。
「うわぁ、広い部屋ですねぇ」
クリスが天井を仰いで驚くように言った。
東京ドーム何個分かってくらい広い部屋に俺たちは辿りついた。
確かに広い部屋だ。柱一本ないのに崩れずに保っていられるのは迷宮の材質の強固さによるものだろう。
迷宮の壁や天井の硬さは俺も嫌というほど知っているからな――
「……で、アルジェラはどこにいるんだ?」
俺がシルフィアゴーレムに尋ねると、全員一斉に天井を指さした。
天井――迷宮の天井を。
そして、それは落ちて来た。
小さな少女……そう、アルジェラだ。
虚ろな瞳の少女の左腕に土の宝玉が埋め込まれていた。
彼女の細い腕のせいで、宝玉の表面が丸見えだ。
よし、あれを突き出せばこの迷宮も突破できる。
俺はエクスカリバーを抜き、その土の宝玉を突き出そうとして前に跳んだ。
あと少しで剣が届く――そう思った時、アルジェラの右手が左腕を庇うように出された――
奥歯を噛みしめながらも、俺はアルジェラに謝罪した。
腕も手もすぐにアルティメットポーションで治療してやるからな――と。
――カキンっ
その音は想像できないものだった。
なぜなら、それは、アルジェラの右手に――俺のオリハルコンで作ったエクスカリバーが弾き返された音だったから。




