本当に探さないといけない者
~前回のあらすじ~
シルフィアがいっぱい現れた。
一匹見たら二十匹いると思えとは、黒光りのGという害虫を表す言葉だったはずだが、暫く見ない間にシルフィアがいつの間にか百人に分裂していた。
まぁ、本当に分裂なのか、もしくは幻影なのか、それとも偽者なのかはわからない。
唯一わかるのは、本物を見つけないと、迂闊に手が出せないということだ。
「コーマさん、私、聞いたことがあります!」
クリスが大きな声を上げた。ちなみに、彼女の肩に乗っていたはずのマネットは岩場の陰に避難している。
「何か考えがあるのか?」
「お父さんが昔言っていました! 幻影には影がありません! だから影を見れば誰が本物か――」
「全部影があるぞ!」
「……あれ?」
やっぱりクリスはバカのようだ……逆説的にいえば全員幻影じゃないとなるのだが、影を作ることができる幻影という可能性もある。
シルフィアがレイピアを抜いて俺たちに襲い掛かってきた。しかし、全員走ることなくゆっくりと歩いて。
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聖銀の細剣【剣】 レア:★×8
ミスリルを鍛え上げた細剣。狙った獲物を一突きにする。
聖なる力を持ち、死霊系、悪魔系の魔物に大ダメージを与える。
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「クリス、シルフィアが持っているレイピアはミスリル製だ! 気を付けろよ!」
「わかりました。でも動きは大したことありません」
クリスの神銀の剣がシルフィアのレイピアを弾き飛ばしていく。
クリスの言う通り、シルフィアの動きは大したものではない。これなら、シルフィアたちの居ない方向にレイピアを弾き飛ばすのも容易だ。
だが、ジリ貧なのは変わりない。細剣を失ったシルフィアたちは奥へと引いていき、レイピアを持ったシルフィアが新たに現れる。
このままでは――
「コーマ、降ろしてもらっていいかしら?」
「ん? あぁ、確かに危険だからな――ルシルもマネットと隠れてろ」
「そうじゃなくて――んー、なんて言ったらいいかしらね」
俺の背から降りたルシルはじっとシルフィアを見ていた。その視線は僅かに下に向けられている。
一体、何を見ているんだ?
「クリス、シルフィアを投げ飛ばして!」
「ルシル、それなら俺が――」
「コーマは女の子を投げ飛ばしたいの?」
ルシルは別に睨み付けていない。蔑んだ眼でも見ていない。
ただ、俺の性格なら本物か偽者かわからなくても女の子を投げ飛ばすのは嫌だろうと言っているのだ。
そして、俺はそう言われたら引き下がらないといけない。
そのため、俺は突いてくるシルフィアを躱して下がる
「誰を投げてもいいんですか?」
「誰でもいいわ! 一応二、三人投げて」
「わかりました! 本物だったらすみません!」
クリスはそういうと、ひとり飛び出たシルフィアのレイピアを弾き飛ばし、その腕を掴んで大きく上に放り投げた。
宙を舞ったシルフィアは受け身を取る余裕もなく、部屋の向こうに投げ飛ばされた。
クリスはそれを二度、三度と繰り返す。
そして――ルシルは気付いた。
「マネット! 気付いた?」
「あぁ……ここは僕の出番のようだね――」
マネットが前に出て、シルフィアに向けて糸を伸ばした。
他人を操る糸だ。
「どういうことだ、ルシル」
「コーマ、いっつもクリスのことバカバカ言っているのに気付かないの? この異常性に」
「異常性って、何が異常なんだ?」
「例えばこの迷宮にいた魔物、コーマは覚えてる?」
「ん……蜘蛛、蛇、蝙蝠……だったかな? あとゴーレムは多かったぞ。記憶を操作されている時にいろんなゴーレムを倒した……ってそうか」
そこまで言って俺は気付いた。
「どういうことですか、コーマさん!」
シルフィアの細剣を弾き飛ばしながら、その体を死なない程度に蹴り飛ばしつつ、クリスが尋ねた。
「魔物のラインナップがおかしいだろ。特に蝙蝠って。蝙蝠は光というよりかは闇に近いだろうが」
「あ、そう言えば――」
「これみよがしに光の迷宮や、アークなんて名前をつけていたが、それらも全部トラップ。この迷宮のコンセプトは光なんかじゃない――闇に近く、様々な鉱石が産出できる。そして多数のシルフィア――いや」
仕組みを理解した俺は確信を持ち、シルフィアの腕を切り落とした。
切り落とされた腕からは出血しない。そこから見えるのは土の塊。
そう、こいつらは全てゴーレム――クレイゴーレムだ。つまりはマネットの領域というわけだ。
これほど大量のクレイゴーレムを生み出す存在。
ここから導き出される結論はただ一つ。
もっと言えば、俺はグルースを見つけた時点で気付くべきだった。
あの子に少しでも心が残っているのなら、グルースの傍にいることを望むはずだと。
「ここで俺たちが探さないといけないのは、シルフィアじゃない! アルジェラだ」




