光の迷宮の奥へ
~前回のあらすじ~
クリスがバカ扱いされた。
バカには見えない二百体のパーカ人形たちをゴーレム化し、迷宮の索敵作業を開始した。
紙を床に置き、ペンを片手にマネットは地図を描き上げていく。
この迷宮は中々に複雑だった。
一方通行の扉や、転移陣まである。
「……この地図は見覚えがあるな。こっち側はおそらく町があるはずだ」
「ということは反対側かな」
ゴーレムを同じ方向に向けたのか、町の入り口の反対方向の地図を描き続けた。
そして――
「コーマ、この部屋でゴーレム達がやられた」
「……誰かいるのか?」
「いや、蝙蝠型の魔物に襲われたらしい。凄い数だってさ」
「蝙蝠……か……」
蝙蝠がクリスより賢い魔物……ということではなく、奴らは目ではなく、超音波を使って動く物の位置を特定するからな。
「蝙蝠の向こうに、金色の髪の人間を見たそうだよ」
「……!? そこだ、ナイス、マネット! そこまで俺を案内してくれ!」
「わかった。クリス、肩を借りるよ――」
マネットがクリスの肩に乗った。
「なんで私なんですか?」
「一応、コーマとルシルは僕の上司だからね。うん、女性にしては肩幅が広くて乗りやすい――」
「落としますよ」
クリスがマネットを睨み付けた。
……クリス、普段から鎧を着ているせいで筋肉が付いたのが原因だろうが、そういうことを気にする女性らしい面もあったんだな。
「じゃ、ルシルは俺が負ぶるか」
俺は座り、ルシルを背に乗るように促す。
前みたいに竹籠の中に入ってもらうには、いきなり戦闘に入る危険性が高いこの場所では躊躇われたから。
ルシルは俺の首に手を回した。彼女の長いツインテールの髪が俺の顏の前を一瞬通過した。
女の子の匂いが俺の鼻腔を擽る。
(ぐっ、さすがルシル……やるな)
思わずノックアウトされそうになるが、かろうじて耐えた。
「しっかりつかまっていろよ。行くぞ、クリス」
「はい、コーマさん。マネットくん、振り落とされないでくださいよ!」
「クリス、言っておくが僕の方が年上なんだから……はぁ、もういいや」
マネットの案内の下、俺とクリスは全力で目的の場所に向かった。
「クリス、敵の気配がするぞ!」
「はい、コーマさん! 私も感じてます!」
曲がり角を曲がったところで、目の前に現れたのは無数の蝙蝠の群れだった。
俺はアイテムバッグから一本の杖を取り出す。
「雷よっ!」
神雷の杖により、数十羽の蝙蝠が一瞬で消し炭と化し、
「蛇紋剣!」
クリスの剣が蛇のように伸びて蝙蝠を一羽ずつ確実に仕留めていく。
蝙蝠たちの居た場所には、ゴーレムの核としてマネットによって組み込まれていた魔石が砕けていた。
パーカ人形のゴーレムたちがここで倒されたのは間違いないようだ。
「コーマさん! あそこ!」
クリスが指さしたその先にいたのは――
「シルフィア!」
そう、光の神子シルフィアだった。
シルフィアは無表情でこちらを見つめている。明らかに正気じゃない。
ただ、
【HP850:MP2500】
HPとMPが確認できた。HPがかなり増えているが、俺たちの敵ではない。
今すぐ正気に戻してやる――そう思った時、俺は信じられない光景を見た。
シルフィアがもうひとり、いや、ふたりいたのだ。
「シルフィア……いつの間に三つ子になったんだ?」
俺が苦笑している。こうなったら、三人同時に相手してやる――そう思ったら、部屋の向こうからそいつらが現れた。
「こ……コーマさん、これ」
「……いくらなんでも多すぎるだろ」
現れたのはシルフィアの群れ。その数は百を超える。
恐らく、本物はひとり、後は全て偽物だろう。
だが、全員、全く同じHPとMPが存在した。
いったい、どうやって本物を見つけたらいいんだよ。




