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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode11.5 塔の迷宮・後編

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援軍の人形

 予想通り、転移陣の向こう側は迷宮の中だった。

 光の迷宮。俺の記憶が改竄されていた時に二度ほど入った迷宮。その迷宮の中と同じ空気がした。

 地上よりもわずかに湿度と温度が高い。


「そういえば、転移陣って空間が繋がっているんだよな。気圧の差、温度の差があるのなら、気流が発生したりしないのか?」


 突如として湧いた疑問を俺はルシルに尋ねた。


「転移陣は空間を繋げるんじゃなくて、文字通り陣の上に乗った人や物を転移させる。そして、陣の術式発動条件が質量なのよ。これはリミッターというよりかは陣を開き続けたら魔力が失われちゃうから苦肉の策でね。転移陣が開いていない間に空気中の僅かな魔力を吸収して陣を保ってるのよ」

「へぇ、いろいろと考えて作られてるんだな」

「コーマが思ってるより魔法って複雑なのよ」

「術式の手順ひとつ間違ったら暴走するみたいな感じか?」

「暴走することは稀ね。まぁ、わざと暴走する術式を作ろうとしたら別だけど。基本は発動すらしないわ」

「わざと暴走? そんなことができるのか?」

「うん、例えば転移陣の転移先を敢えて具体的に指定せずに大雑把したりね。ほら、私がベリアルに使ったでしょ? あれみたいなもの」


 あぁ、そんなものあったな。

 さて、転移したのはいいが、シルフィアはどっちにいるんだろうな。

 転移した先は小部屋で、戦闘の跡が残っていた。スライムと魔物達の戦闘がここであったのだろう。


「コーマさん、とりあえずしらみつぶしに探してみますか?」

「いや、さすがにこの迷宮は広すぎるからな……時間をかけていられない。聖殿の入り口を壊してしまったからな、地上の奴らがこの転移陣に入ってこないとも限らない」


 確か……


「そうだ、サラン!」


 精霊には精霊の場所を探る力がある。

 前にサランの力を借りてクレイの場所を探したことがあったが。


「そのためにあいつをここに連れて来たのに、どこに行った?」


 ピラミッドの転移陣を潜って来た時から行方がわからない。

 記憶を改竄されている時も姿が見えなかった。


 ベリアルの時みたいに別の場所に転移してしまったのか?

 記憶を辿ったり周囲を見回したり、一応アイテムバッグの中の精霊石を見てみるが、サランはどこにもいない。


「そういえばいませんね、サランさん」

「私も見てないわ」

「…………サランの行方は、とりあえずここにいる光の精霊ライを見つけたら行方がわかるだろう」


 薄情かもしれないが、ここでサランの行方を考えても答えに結びつきそうにない。

 それより、サランに代わる精霊を探す方法を考えないといけない。


「こうなったら、人海戦術しかなさそうだな」


 この時のために取っておいた奥の手その1を使うことにした。

 アイテムバッグから通信イヤリングを取り出す。

 現在、俺の耳には三つのイヤリングが着けられているが、それとは異なるもう一つの通信イヤリング。

 魔王城直通の電話のようなものだ。


 誰かいてくれよ――と念を送ると、


『……(ザザッ)……マ様。コメ……です。しんぱ……(ザザっ)……よ』


 コメットちゃんの声が聞こえてくるが、それよりも雑音がひどい。


「コメットちゃん、ノイズが入っていてよく聞こえないけど」

『……(ザッ)……せん、よく聞こえ……(ザザッ)……』


 どういうことだ? 携帯電話じゃないんだから、圏外とかそういうのはないはずなんだが――


「コメットちゃん、持ち運び転移陣を広げてくれ!」

『……陣ですね……りまし……(ザァァァっ)』


 これで伝わっていると思う。一応、俺たちに何かあったときのことを考えて通信イヤリングで連絡を取った時に魔王城と通じる転移陣を広げるように頼んである。

 そして、俺は持ち運び転移陣を広げた。


 転移陣が光っていない。繋がっていないんだろう。


 待つこと5分。


 ……遅い、コメットちゃんは何をしているんだ?


「……コーマ、この転移陣……僅かにだけど光ってるわ……」

「え? あ……確かに僅かに青く光ってるな……どういうことだ? コメットちゃんが少ししか開いていないとか?」


 なんのために?


「そうじゃないわ。この迷宮に原因があるんだと思うの」

「この迷宮に?」

「この迷宮、私たちの世界とコーマの世界を繋ぐための塔なんでしょ? それなら、ここはその狭間にあるのよ……この転移陣は私のいた世界の地点と地点を繋ぐには十分な魔力があるけど、狭間とはいえ異世界と繋がるには魔力が足りないわ」

「……通信イヤリングの繋がりが悪かったのもそのためか」

「一応私の魔力で使うことはできるけど……呼ぶことができても一人が限度ね……。その後は暫く休ませないと」


 くっ、スライムを大量に呼び寄せて人海戦術大作戦を決行する予定だったが、それも無理か。

 いや、待てよ、ひとり人海戦術できる奴がいるんじゃないか?


 俺はコメットちゃんに、そいつを呼ぶようにと、雑音が混じる中なんとか伝えた。

 そいつを待っている間にクリスはどこかに行ってしまった。

 どこに行くのか尋ねたら、顔を真っ赤にしながら、偵察です! と言っていたのでトイレだろうなと想像ついた。

 そして、十分後、そいつはやってきた。


「……はぁ……厄介なところに呼んでくれたね、コーマ」

「厄介なところに呼んで悪かったな、マネット」


 そう、俺の魔王城のゴーレム部門のリーダー。

 マリオネットの魔王マネット。

 こいつなら、僅かな素材を道具にゴーレムを作ることができるからな。


「悪いが早速、ゴーレムを大量に作ってくれ。それで迷宮を索敵する」

「コーマ……この迷宮には魔物がいるんだろ? そんな中で即席のゴーレムだけで索敵できるわけないだろ?」

「うっ、それは考えていなかった」

「全く、これまで用意してきてよかったよ――」


 マネットはそう言うと、ひとつのアイテムバッグ(魔王城の備蓄用)から取り出したのは――


「あ、俺のパーカ人形!」

「のダブリだよ。コ―マ、僕にいっぱいくれただろ? それをちょっと僕なりに改造させてもらったのさ」


 マネットは五十を超えるパーカ人形を置く。


「ふぅ……すっきり……じゃない、コーマさん、敵は近くにはいないようです。あ、マネットくんが来たんですね」


 何かを成し遂げたような笑みでクリスが戻って来た。

 そして、彼女は何の躊躇もなく足を前に出す――その先にはマネットが出したパーカ人形が。


「クリス、足を下ろすな!」


 俺はそう叫ぶと、クリスは片足立ちのまま静止した。

 その間に、俺はパーカ人形のひとつを救助する。


「クリス、気を付けろよな」

「え? 気を付けろって何にです?」

「足下だよ」


 俺がクリスの足元を指さすと、クリスは視線をその先に向けた。


「何もありませんよ?」

「え?」


 そんなバカな。今も――って、あぁぁぁぁっ!

 これはパーカ人形じゃない!


「言っただろ、僕なりに改造したって」


 俺は鑑定のおかげで、それの正体を知ることができた。

 はじめて見るアイテムだが、とても懐かしいアイテムだ。

……………………………………………………

裸の王様人形【魔道具】 レア:★★★


バカには見えない人形。バカじゃない人には見えます。

判断の基準は人形の気分で決まります。 

……………………………………………………


 ……まさかの裸の王様シリーズだった。


「魔物っていうのは大抵はバカな生き物だからね。これらをゴーレムにして使えば魔物に気付かれることもなく、索敵できるだろ?」

「……これらって、何を素材にゴーレムにするんですか?」


 クリスは首を傾げてそんな疑問を口にした。

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