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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode11.5 塔の迷宮・後編

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浸食する日常

~前回のあらすじ~

???

 光の迷宮の中を、俺はひとり歩いていた。

 蛍のように発行する虫の群れを掻き分けながら先に進むと、銀色に光るゴーレムの魔物を見つけた。

 ようやく今日の飯の種の発見というわけだ。

 動きの遅いゴーレムなので、慌てる必要もなく、のんびりと歩いてゴーレムに近付く。

 ゴーレムも俺に気付いたようで、大きく拳を上げ、俺めがけて振り下ろす。

(それにしても、なんで迷宮ってゴーレムが多いんだろうな……)

 迫りくる拳を目にしながらも、俺の頭はそんなことを考えていた。

 ゴーレムが俺の顏を捉えようとしたが――拳を避けるように下に回り込み、俺はアイテムバッグから剣を抜いて薙ぎ払った。ゴーレムの体が左右真っ二つに切り裂かれ、瓦解と化す。

 振り向き、残っていたのは二つのアイテムだった。


……………………………………………………

ミスリル鉱石【素材】 レア:★×7


不純物を含むミスリルの鉱石。金の10倍の価値はある。

モリア迷宮でのみ取れるので、モリア銀とも呼ばれる。

……………………………………………………

……………………………………………………

魔石(高)【素材】 レア:★×5


高純度の魔力の塊。高レベルの魔物が落とす。様々な用途に使われる。

この石ひとつで、ひとつの町の一週間分のエネルギーを賄える。

……………………………………………………

 銀色に輝くミスリル鉱石。ここはモリア迷宮ではないのだが、それでも手に入れることができる。

 ここに出てくるミスリルゴーレムのドロップアイテムであり、鍛冶師である俺にとっては絶対に必要なアイテムだ。

 そして、魔石も高い値段で売ることができる。


 ミスリルをアイテムバッグに入れ、俺はさらに迷宮の奥へと進んでいこうとしたが、やはりそろそろ帰ろうと、俺は踵を返して迷宮を出た。



 迷宮の上にある町、アーク。光の迷宮の上にあるこの町では、迷宮で一山当てようと多くの冒険者が集まる。

 また、一山当てることに成功した金持ちも多い。

 そんな町の外れに、俺の工房はある。


「今帰ったぞ……」

「お帰り、コーマ」


 銀色のツインテールの髪に、赤い瞳、黒いドレスとマント姿の少女ルチミナ・シフィル――ルシルが笑顔で出迎えた。

 俺と彼女が婚約したのは半年前のことだ。運命の出会いを果たした俺たちは、年齢のこともあり結婚はできないものの、婚約することになった。


「コーマ、ご飯にする? ディナーにする? それとも、ゆ・う・しょ・く?」


 目を輝かせて近付いてくるルシルに対し、俺はその頭を指で軽く押し、カレンダーを見せる。


「今日は俺が飯当番だろ……ルシルは休憩していなよ」


 カレンダーには当番が書かれていて、食事当番は一日を除き、全て俺が食事当番だ。つまり、ルシルの食事当番は月に一度だけ。

 ちなみに、ルシルの食事当番の次の日は休養日にしてある。いくら薬で治しても精神的な疲労を拭い去るには時間がかかるからな。


「もう、コーマ。今度は自信があるのよ!」

「自信……ね」


 天井に開いた大きな穴の補修跡を見て、俺はため息をついた。

 あの大きな穴を開けた原因が野菜炒めだって言って誰が信じるのか。


「魔石を売って、質のいい肉が買えたからな。今日はステーキにするぞ」

「あ、それなら私はサラダを――」

「作らなくていい!」


 俺はそう言って、狭い厨房に入っていく。

 鍛冶工房に併設された我が家はあまり広くない。

 それでも二人で暮らす分には十分だ。

 熱したフライパンに牛脂を入れて滑らせる。そして、下ごしらえを済ませたステーキ肉を投入。良い匂いがしてきた……と思ったその時。

 足音が近づいて来た。


「コーマさん! ミスリルの剣を売って下さい!」

「……来たな、バカ勇者」


 ノックもせずに俺の家に入って来た無礼者、金色の髪に白銀に光る鎧を着た美人剣士――自称勇者のクリスティーナだ。

 全く、勇者ってどこのおとぎの国の住人だよ、とツッコミを入れたくなるが、彼女の実力は本物であり、恐らくこの町で俺に次ぐ実力の持ち主だろう。


「で、金は用意できたのか?」

「うっ、それはツケで」

「ツケなら、前に売ってやったプラチナソードの代金、金貨5枚を払ってから言いやがれ」


 剣がないと泣きつくクリスに鋼鉄の剣をツケで売ってやったのは三カ月も前だ。

 彼女の実力を見抜いた俺は、彼女なら三日もあれば剣の代金くらい払えるだろうと思った。

 だが、クリスの奴、お金が溜まる前に詐欺師に騙され、盗賊に騙され、子供に騙され、とにかく金を盗まれる始末。

 

 悪いやつじゃないんだけどな。

 でも、こっちも生活と未来があるから、己の腕を安売りするつもりはない。


「用がそれだけならとっとと帰れ」


 俺はそう言って、ミディアムレアに焼けたステーキ肉をテーブルの上に並べていく。


「いえ、実はお金が無くて、宿を追い出されたので――今晩泊めていただけたらと」

「あのな……なんで俺がお前を養わなければならないんだよ」

「まぁ、そうは言ってもコーマったら、そろそろクリスが宿を追い出されるころだろうって、家を増築してベッドを購入してたじゃない。今日だってステーキ肉、三人分用意してるじゃない」

「そんなことは言ってない。家を増築したのは……お客様が来たときに困るからというだけだし、ステーキ肉を3枚買ったのは、1枚なら銅貨40枚だが、3枚なら銀貨1枚とお得だったからだ」

「私、コーマのそういう優しいところは結構好きよ」


 ルシルの臆面もなく言った台詞に、俺は思わずステーキを乗せたお皿を落としそうになった。

 そして、


「仕方ない、今晩だけだぞ」


 と俺はクリスの椅子の前に、一番小さなステーキ肉を置いた。


「ありがとうございます、コーマさん」


 全く、なんで俺はこうもクリスに甘いんだろう。

 サラダを作りながら、俺はそんなことを考えていた。


 まぁ、平和なのはいいことか。

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