火の宝玉を突け!
~前回のあらすじ~
「クリス! 今度は何をしでかした!」
クリスの剣から炎と氷、ふたつのエネルギーが溢れだし、辺り一面に無差別に降り注いでいた。
しかも数十倍もの力で――
「うわっ」
クリスの剣から溢れだした氷のエネルギーが俺の左足に当たって完全に凍らせた。
――靴と床が完全にくっついて動けないっ!
しかも、氷は靴の内側にまで達していて、俺の皮膚まで凍らせていた。
「こ、コーマさん! わ、私、レイシアちゃんを凍らせたらいけないと思って、氷の温度をちょっとだけ上げようと思って――剣に炎を纏わせたら、剣がおかしくなっちゃって」
あぁ、くそっ、バカがバカなことを考えてバカなことをした結果、バカなことが起こったってわけかっ!
「コーマ、すぐに解凍するわ!」
ルシルが俺の方に駆け寄ってくるが、
「ルシルっ! 後ろだっ!」
クリスの剣から溢れた炎の塊がルシルを襲った。
振り向いたルシルが、魔法を詠唱する暇もなく、炎に飲み込まれた。
「ルシルゥゥゥゥっ! ってあれ? 無事なのか?」
「コーマのおかげでね」
「俺のおかげ……ってあぁ、それか」
俺の中のルシファーの力を再封印したルシルにプレゼントしたものだ。
ルシルの氷の刃で作り出した桜の形の髪飾り。
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氷の髪飾り【装飾品】 レア:★×5
溶けない氷によって作られた髪飾り。
氷の加護により、炎の攻撃を防いでくれる。
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これがルシルを守ってくれたのか。
あと、ルシルの奴、俺のアイテムを信用してわざと炎の攻撃を避けなかったのか。全く、そこまで信用していいアイテムじゃないぞ。
それにしても、クリスの奴――本当に何をしてるんだよ。
まぁ、レイシアもクリスの剣から不規則に飛ぶ攻撃を防ぐのに苦労しているようだが――
「いったい、何がどうなってるんだ」
足元で氷を溶かしているルシルに尋ねながら、飛んでくる冷気を、炎属性の斧――エントキラーで防いだ。
……ってエントキラーが凍ったっ! 氷が柄の部分にまで広がってきたので、俺は慌ててエントキラーを投げ捨てた。
なんて威力の氷だ。元々は絶対に溶けない氷だっただけはある。
「魔法剣の暴走よ。氷と炎、相反する力が一つになったせいね――」
「もしかして、かなり凄い力なのか? 氷と炎が融合したとき、いかなるものをも消滅させる最強の魔法になるとか、そんな魔法になるとか?」
「そんなわけないでしょ。さっき言ったでしょ、あれは融合なんてもんじゃなくて、二つの異なる力の反発だって。そのせいで威力もかなり激減しているわ。もしも完全状態の氷の力がコーマの足に直撃していたら、コーマは全身氷漬けになっていたわよ……そういう点では、クリスのいう威力の抑制には成功しているわね」
「成功した結果暴走していたら意味がないけどな……ん?」
レイシアの奴、動きが変わった。
氷だけを躱し、炎はそのまま受け止めつつ、新たな炎を生み出してクリスに攻撃をはじめた。
「わわわわっ!」
クリスは暴走したままの剣を振るって次々と炎を斬っていく。
そのたびに暴走する炎と氷が、剣の振るう先――レイシアに向かって飛んでいく。
レイシアは炎を受け止めて氷を避ける。
受け止めた炎はレイシアの体に広がるが、その炎は一瞬のうちに消えた。
本当に一瞬――瞬きする間、時間にすれば一秒もないだろう。
そして、クリスの剣はその暴走に耐えかねたのか、音を立てて砕け散った。
だが――
「…………見えたっ! ルシル、はもう行くから!」
「え? コーマ、ちょっと! まだ解凍が終わってないのに」
そう言うと、俺は右足に力を込め、前に飛んだ。
左足の皮膚が剥がれ、激痛が走る――恐らく左足は皮が剥がれ見るも無残なことになっていることだろうが、俺はお構いなく前に跳び、
「クリス、ナイスだ! 後は任せろっ!」
レイシアが炎を受け止めた時、その炎は必ず一カ所に吸い込まれていく。
一点ではない。一カ所だ。
エクスカリバーをレイシアの右太ももへと突き刺した。
これも大きな賭けだ。
だが――さっき、確かに見えたんだ。
炎を吸い込んだとき、一瞬だけ光ったそれは、ある球の形をしていた。
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火の宝玉【魔道具】 レア:72財宝
火の精霊が住む宝玉。赤く輝く。
6つの宝玉を集めたとき、偉大な力が授かると言われている。
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火の宝玉がレイシアの体の中にある。
精霊との融合の原因がこの宝玉の融合にあるのだとすれば、火の宝玉を、ビリヤードみたいに突き出せば融合が解除されるのではないか?
そんなことを思った。
そして、俺が突いた剣は、見事にレイシアの足から火の宝玉を突き出した――刹那、火の宝玉がパリンと音を立てて割れた。
「……げっ」
72財宝が割れた……そのことにショックを受けた俺だったが、レイシアはどうなったか、と彼女を見ると気を失って倒れているようだ。
【HP:1932/1932 MP:0/45】
……さっきまで診断スキルを使っても診れなかったHPとMPが確認できる。
気を失っているのはMP切れが原因か。
ただ、そのMPの最大値が以前に比べてかなり減っていた。
「コーマさん……レイシアちゃんは無事なんですか?」
「……たぶん……な」
そして、俺は割れた宝玉を見た。
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精霊石【魔道具】 レア:★×8
精霊の力を宿しやすい石。一定量の石を錬成することで精霊玉となる。
組み合わせる素材により、宿る精霊が決まる。
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……これを見た瞬間、水の宝玉、光の宝玉、火の宝玉の作り方がわかった。
水の宝玉と光の宝玉ならすぐに作れるが、火の宝玉を作るには素材が足りないな。
ちなみに、水の宝玉、光の宝玉の素材はそれぞれ、水の花、光の花だ。
さて、これからどうしたものか。
ここにいたのはレイシアだけだ。他の神子はどこにいったんだ?
「コーマさん! 危ないですっ!」
『カガミ! いい加減に僕に気付いてくれ』
「え?」
声が聞こえた。小さな小さな声。
それは足許から聞こえてきた。
聞き覚えがあるその声の方向を見ると、
「サランっ!?」
トカゲ姿ではない、炎を纏った男の子のサランが俺の左足の前に立っていた。
そして――その左足を見て――
「いてぇぇぇぇっ!」
皮膚が捲れて血塗れになっている自分の足を見て、アドレナリンで誤魔化していた足の痛みがこみ上げてきたのだった。
もちろん、アルティメットポーションですぐに治療した。




