ピラミッドの頂上
~前回のあらすじ~
巨大なストーンゴーレムがいた。
「やっぱりあのゴーレムがボスだったみたいですね。倒したら扉が開きましたよ」
「ドロップアイテムもゴーレム石か……マネットが大量に持ってるからいらないなぁ」
ゴーレム石はゴーレムの核として使うと高性能のゴーレムを作り出すことができるアイテムなのだが、マネットあたりは魔王の力なのか、粘土あたりから普通に作り出してしまうため、俺にとっては価値のないアイテムだ。
「……一瞬だったわね……あのゴーレム、一応強いボスみたいだったわ。三回くらい変形したし」
ルシルがゴーレム石を見て言う。
「確かに十秒ごとに変形してたな」
「四十秒目に百体に分裂したときは驚きましたね。私は四十体倒しましたよ」
「嘘つけ、俺は六十五体は倒したから、お前は三十五体くらいだろ」
つまるところ、この程度のボスは俺たちの敵ではなかったわけで、もう戦闘描写など全て省略してもいいレベルだった。
「それにしても、クリスって強いのよね……うちのタラといい勝負じゃないかしら?」
「タラくんって、確か元々はゴーリキさんなんでしたよね。まだまだですよ……ゴーリキさんに比べたら。スキルもほとんど低レベルですし」
タラがゴーリキだという話は、ベリアル迷宮を攻略しているときに話したんだよな、たしかに。
あの時はクリスもかなり驚いていたが、懐かしいな。
といっても、ほんの数カ月前のことなんだよなぁ。
ゴブカリを巡ってベリアルと戦ったんだったよな。
ベリアルか……あいつ、いったいどこにいったんだ?
そう思いながら、俺たちは開いた扉を進む。
それにしても、本当に肩透かしだな。
ピラミッドといえば、冒険映画の中では即死クラスのトラップがわんさかだというのに、全く危なげない。
「コーマさん、大岩が転がってきますよ。適当に砕いておきますね」
「そこに無差別転移の魔法トラップがあるから解除しておいたわね」
「迫りくる壁か。とりあえず鉄のつっかえ棒を三本くらいかましておけば……大丈夫っぽいな」
速度タイプのクリス、魔法タイプのルシル、そして万能タイプの俺の三人が揃っているからな。
そして、俺は最上階らしき場所にたどり着く。ボス部屋以上に大きな扉があった。
そこにいたのは――予想通りの人物だった。
「レイシアちゃん!」
赤色の髪の戦姫、レイシアが後ろを向いて立っていた。
二本の足でしっかりと立っている。
「レイシア、無事だったのか。他の神子は一緒じゃないの……か」
こちらを向くレイシアを見て、俺は一気に警戒心を露わにした。
虚ろな瞳の彼女の目には、明らかに殺気がある。
そして――一気に彼女の体が激しく燃えだした。
「……これは厄介ね……この子、火の精霊と融合してるわ」
「融合!? アルジェラみたいにか」
かつて、アルジェラは土の精霊であるクレイと融合していたことがあった。中途半端な融合ではあったが、数万、数十万、いや、それ以上のクレイゴーレムを操る驚異の力を見せた。
HP診察スキルを使ってみるが、HPを見ることができない。
こうなったら、まずは先手必勝――沈黙させる!
俺が取り出したのは、エクスカリバー。
その剣の腹で殴りにかかった。もちろん、手加減をして。
だが――俺の剣はレイシアの体をすり抜けた。
(物理攻撃無効――サランと一緒か!)
と同時に、レイシアの目が赤く染まった。
ものすごい暑いのに寒気がした。
俺は咄嗟に後ろに飛ぶが、レイシアが手を前に向けると――手のひらから、バレーボールサイズの火の球が現れる。
普段の俺なら、エクスカリバーで跳ね返すなどを考えるところだが――何故か嫌な予感がし、俺は咄嗟に避ける選択を取った――すると、その火の球は目でようやく追えるというスピードで、先程まで俺がいた場所を通り過ぎ――ピラミッドの壁をぶち破って遥か彼方に飛んでいく。
……おいおいおいおいおい、いくら迷宮の壁と違い、破壊可能の壁だったとしても、あのスピードで飛んでいって激突音がしないって、一瞬で壁を溶かして進んでいったとしか思えないが。
「ルシルっ!」
「わかってるわ――すぐに封印を第二段階まで」
「待ってください、コーマさん! ここは私が戦います!」
そう言って、クリスは剣を抜いて宣言した。
「バカ、お前が敵う相手じゃ――」
「大丈夫です、今の攻撃なら目で追えました。それに、友達ひとり救えなくて何が勇者ですか! 私がレイシアちゃんと戦って時間を稼ぎますから、コーマさんはその間にレイシアちゃんを元に戻す方法を考えてください」
「……相手は物理攻撃を無効化するんだぞ。お前になんとかなるのか?」
「考えがあります」
ったく、魔法に至っては光の球を使えば気絶する程度なのに、何をしようというのか。
「危ないと思ったら問答無用で選手交代だぞ」
クリスに戦わせている間に、俺は突破口を見つけないとな。
勇者の従者として。




