ピラミッドを上がる
~前回のあらすじ~
ピラミッドに到着
クリスにグリーンポーションを飲ませる。
グリーンポーションは、ポーションシリーズの中でもまだ味がマシなポーションで、微量だがMPを回復させる効果がある。
最大MPの少ないクリスならこれで十分に全快まで回復するだろう。
気絶しているクリスに無理やり薬を飲ませるのは僅かに危険性を伴うが、明かり一発で魔力切れになってしまったバカに、飲まずにMPが回復できるエリクシールを使うのは勿体ない。
いくら、ユグドラシルの葉を山ほどむしってきたといっても、無限にあるわけじゃないからな。
下手したら誤嚥性肺炎になる可能性もあるが、まぁそうなったら、その時にエリクシールを使ってやればいいと思った。
「ごほっ」
咽るようにクリスが起きた。
「気が付いたか?」
「コーマさん……私、いったい……」
「魔力切れの典型的な症状よ」
ルシルは退屈そうに言った。
「いえ、魔力切れはわかるのですが、口の中がものすごい渋味と苦味で……」
「あぁ、これは実はクルトと共に開発した、青汁グリーンポーションでな。めっちゃ苦いけど健康的な成分が含まれていて、美肌、便秘解消、夏バテ予防といった様々な効果があるんだよ。フリマでも好評発売中だぞ。今なら20本買うと青ちゃん人形が付いてくる」
「……まずい……」
「もう一杯?」
「いりません」
ノリが悪いな。ルシルの料理に比べたら十分に旨いレベルだろうに。実際、リピーターも続出の商品だ。癖になるとか、マズイのが逆に健康的な気がするとか。
あぁ、そういえばクリスはルシル料理を食べたことがないのか。あれを食べたら、人生の価値観が180度変わるどころか、もう神の存在を信じるレベルの奇跡体験をすることになるんだよな。
「じゃあ、私が今度美味しいジュースを作ってあげるから」
「よし、クリス! さっさとこの意味不明の迷宮を攻略するぞ!」
「はい、コーマさん! レイシアちゃんが待っていますから!」
それでもルシル料理の恐ろしさの片鱗を理解しているクリスは、俺とぴったり息を合わせ、迷宮を前進した。ちなみに、俺がサランの氷像を引っ張るのは変わらずだ。建物の中は涼しく、正直氷像は必要ないのだが。
ピラミッド内部は、薄暗い。そこは俺たちのいた真迷宮とは異なる。いや、さっきの砂漠が迷宮だとするのなら、十分明るいからやっぱり通ずるところはあるのかな。これが迷宮の建物だとしたら、光がないのは仕方がないともいえる。
後ろでルシルが「やっぱり基本はバナナジュースかしら。コーマにミキサーを作ってもらわないと」などと怖いことを言っている。
「それにしても、ピラミッドかぁ……」
「コーマさん、ピラミッドってなんですか?」
「俺の世界の建物でな。数千年前に作られた建物だよ。天に昇る階段という意味があって……ん?」
自分で言って、気が付いた。
天に昇る階段……か。考えてみれば、これもまた次元を超える建物の象徴なんだよな。
バベルの塔にピラミッド……いや、ただの偶然だよな。
でも、砂漠にピラミッドの組み合わせって、本当に偶然なのか?
「……コーマさん、どうしたんですか?」
「あぁ、ともかく、昔の為政者が造らせた巨大な建物なんだよ」
「途中から説明が雑になりましたね」
「日本にいたころはただの学生だった俺に、これ以上難しい説明を求めるな。詳しいことはルシルに聞け」
「私だって詳しくは知らないわよ。ピラミッドが出来たのは私が生まれる前のことだし」
あぁ、そういえばルシルは自称2700歳だったな。
エジプトでピラミッドができたころには生まれていないのか。
「ってあれ? じゃあルシルは最近の建物とかはわかるのか?」
「知ってるものもあるわよ。例えば、東京タワーがどうやって作られたとかはMHKの特番でやってたし」
「お前の情報源テレビかよっ! てかテレビ見られたのかよ!」
やけに日本の文化について詳しいとは思っていたが、まさかテレビを見ていたとは。いや、たまにテレビを見ていたような話はあったが、放送局まで言われると信憑性増し増しだ。
俺とはじめて会った時、翻訳魔法を使っていたのではなく、テレビを見ていたから日本語がペラペラだったのかもしれない。
でも、それなら日本の科学を利用して何かしようとしなかったのか?
「今は見れないんだけどね」
「……あぁ、俺に封印魔法をかけているから……」
「……まったく、アナログ放送終了って困るわよね」
「地デジ化に対応できなかっただけかよ」
どこまでが本気でどこまでが冗談かわからないな。
全部冗談であってほしい。
ちなみに、クリスはというと、「全く話がわかりません」と拗ねていた。
まぁ、日本ネタだったからな。
途中、ミイラを何体かやっつけながら俺たちはピラミッドの奥へと進んだ。
どうやらピラミッドは上に、上にと進んでいるようだ。
階段を何度も上がらされている。
基本的には一本道、隠し扉や罠の類も見当たらない。
途中で部屋のような場所もあったが、ピラミッド特有の財宝もなかった。
そして、感覚的には頂上付近となったとき、大きな部屋に出た。
そして――
「やっぱり迷宮といえば、こういうのがつきものだよな」
そこにいたのは、石の巨人――ストーンゴーレムだった。




