ピラミッドの魔物
~前回のあらすじ~
サラン(分身)はカッチンコッチンに凍りました。
ルシルの案内で、俺とクリスは砂漠を進む。
ちなみに、ルシルは俺が引っ張っている氷像と化したサランの上に毛布を敷いて、日傘を差して乗っている。
なんだろうな、まるで遊園地によくある、100円玉を入れると音楽を鳴らして動く乗り物に乗っている小学生みたいだな。
と思って振り向くと、
「おい、なんでクリスまで乗っているんだよ!」
「いいじゃないですか……私も暑いんですから」
「俺だって暑いんだぞ」
「でも、コーマさん、私の従者じゃないですか」
「都合のいいときだけ従者扱いするな……はぁ」
まぁ、確かにクリスに倒れられて運ぶ方が大変か。
俺は渋々氷像を引いて歩くことにした
車輪でもついていたらいいんだけどな。
地味に疲れるんだよな。
力がいくら増しても、疲れるものは疲れる。
「ルシル、まだか?」
「この先よ、ほら、あそこ」
「お、やっとかって……うぉぉい、まじか? まじでここなのか? ていうかこんなのがあったのか? 近付くまで全くわからなかったぞ」
そこにあったのは、四角錐の建物――ピラミッドだった。
「結界が張ってあったみたいね。近くに来るまでわからなかったみたい」
「あぁ、原因はこれだな」
俺はピラミッドの対角線延長上に置かれた装置を見て呟くように言った。
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視界遮断結界in迷宮【魔道具】 レア:★★★
四つセットの石。外側から内側を見えなくする。
ただし、迷宮の中でしか使えない。
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俺も一度使ったことがある、意外と便利なアイテム。
ただ、俺が作ったアイテムは三日間限定だったが、その代わり迷宮の中でしか使えないという制約はなかった。
ていうか、ピラミッドって、ザ、迷宮っていう雰囲気のある建物なんだけど。でも、ここって迷宮の中なんだよな。
なんて迷宮の中に迷宮があるんだよ。
「ルシル、本当にこの中なのか?」
「うーん」
ルシルは氷像から降りると、俺に氷像を左右に動かさせた。
「この中で間違いないわね。この建物の頂上付近にいるっぽいわ」
そうか、ここを攻略しないといけないのか。
高さ一メートルの石三段目のあたりに、大きな入り口が見える。
「変わった建物ですね……」
「壊して中に入る……とかしたら火の宝玉が傷つくかもしれないから無理か」
「それ以前にレイシアちゃんが怪我しますから! 普通に入りましょ」
「でもなぁ、ピラミッドっていったら……」
俺がぼやいたのを聞いていたみたいに、ピラミッドの入り口から全身に包帯をぐるぐる巻いた人が現れた。
「コーマさん! アレ!」
「あぁ、出て来たな、ミイラだ」
ピラミッドの定番の魔物だ。
「大変、怪我人ですよ! 凄い重症の」
「違う、魔物だって言ってるだろ。行くぞ」
ピラミッドから溢れだすミイラ相手に、俺は――とりあえずロープで引いていたサランをぶん投げた。
「よっしゃ、ストライク!」
「コーマさん、無茶しないでください! あぁ、サランさん、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だって。あれ、分身なんだろ? たとえ粉々に砕けても本体は無事だろ」
「それはそうなんですが……」
俺たちは迷宮の入り口に上がる。
俺が一段上がり、ルシルを引っ張り上げる――を三回繰り返した。クリス? もちろん自分で上がらせたよ。
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ミイラ包帯【素材】 レア:★
ミイラが落とした包帯。素材は綿。
不衛生のため、普通に包帯として使ってはいけない。
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うわぁ、ゴミ素材だな。今のところ、これから作れるアイテムって包帯だけだし。
でも、アイテム図鑑埋める意味では必要なアイテムだ。
もちろん、レアドロップもある。粉末だ。
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ミイラ薬【薬品】 レア:★★
不老不死の薬と言われる薬。
だが、その実態は防腐剤。
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防腐剤なら鑑定でも防腐剤って出ろよ。
いや、良く見たら、これが防腐剤の素材になるらしい。
はぁ、ミイラはろくなアイテムを落とさないらしい。
「コーマさん、この中は暗いですね」
「……『明かり!』」
光の球が生み出される。
「へぇ、便利な魔法ですね」
「まぁな。クリスも覚えてみるか?」
「え? いいんですか?」
「あぁ、まぁ覚えておいて損はないだろ」
そう言って、俺は光の巻物を渡す。
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光の巻物【巻物】 レア:★★★★
光の魔法書。使用することで光魔法を複数覚える。
修得魔法【明かり《ライト》】【浄化】【聖域】
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光の花を買った時に光系のアイテムはいっぱい作ったからな。
「ありがとうございます。これでひとりで魔法剣を使うことができますね」
「あぁ、そういえばクリスってそんなスキルを持っていたな」
クリスは光魔法を覚えて上機嫌で、俺と同じように『明かり《ライト》』の魔法を使い……
光の球は一瞬で消え、そして倒れた。
ルシルがクリスの症状を見て診断を下す。
「MP切れね」
「……そのようだな」
脳筋にも程があるだろ。




