炎の精霊との戦い
なんでサランが蜥蜴に姿を変えて襲ってくるんだ、とか思っている暇もない。
向こうはやる気満々のようだ。
俺よりも先に動いたのはクリスだった。
クリスの炎の剣が炎の蜥蜴の頭に直撃――と思いきや、
「コーマさん、全然効いてません」
「バカっ! 炎の塊の相手に炎属性の剣で攻撃するなっ! 『水弾』!」
水魔法による攻撃――これならどうだ!
と思ったが、水は一瞬のうちに蒸発し、意味をなさない。
サランの爪が俺を薙ぎ払おうと振るわれたので、俺はしゃがんで躱す――が……
「っつー、髪の先が少し燃えたぞ」
完璧に避けたはずなのに。くそっ、近距離での戦いはこっちが不利だ。
炎の塊を相手にしているようなものだし、炎の塊相手に神雷の杖とかが通用するとは限らない。
「コーマ、第二段階まで封印を解くから、少し耐えてね」
「わ、わかった!」
ルシルの予告通り、俺の中に破壊衝動が湧きあがる。今すぐ目の前のサランを叩き潰したいという衝動が。
先ほどと違い、体にも竜の鱗が現れ始めている。
エクスカリバーを取り出し、俺は突撃してくるサラマンダーとすれ違いざまに剣を薙ぐ。
剣の刀身が炎を纏った。
軽く剣を振って炎を振り払う。
振り向くと、サランの体が真っ二つになっていたが、すぐに一つになる。
物理攻撃無効とか、どんなチートだよ。
いや、俺が言うのもなんだけど。
サランはこちらを向き、再度攻撃してきた。
「流水剣!」
今度は剣に水を纏わせる。
サランがジャンプして俺にのしかかってきた。
水の剣で受け止める――どうやら流水剣を使えば攻撃を受け止めることはできるようだが――水が蒸発していく。
長くは持たない。
「そんな、変身したコーマさんでも通用しないなんて」
「……クリス、勘違いするな。俺の封印を解いたのは、俺のパワーアップのためじゃないぞ」
「……え?」
「時間稼ぎは十分だよな?」
「もちろんよ、待たせたわね!」
ひとり、安全な場所で魔法の詠唱をしていたルシル(女子大生バージョン)が叫んだ。
彼女は、ユグドラシルの杖を使い、その魔法を唱えた。
「全てが氷結する世界! 私の氷は炎も命も凍らせる」
女子大生にまで成長しながら中二病っぽいことを言うが、大地から伸びた氷の槍がサランを貫き、氷像となって動かなくなった。
俺の中から破壊衝動が消えた。再封印が施されたらしい。ルシルも元の小学生バージョンに戻っていた。
「殺した……のか?」
動く気配のないサランを見て、俺はルシルに尋ねた。
「殺していないわ。凍らせただけよ。コーマのエリクシールを使ったら元に戻ると思うわ」
流石だな、俺のエリクシール。
「一体、どうしたんでしょうか、サランさん」
「暴走している感じだったな。まるで竜化して制御が効かなくなった俺みたいだったが」
「あぁ、確かに暴走したコーマってあんな感じよね」
「……いや、うん。自分で言うのはいいけど、他の人から見た暴走した俺って、やっぱりあんな感じなのかって思うと、少し鬱になるな」
「あ、で、でも、コーマさん。私、最初に竜化したコーマさんを見たとき、カッコいいかと思いました。もしかしたら魔物かもと思いましたが」
俺ってそんなのなんだ。
アメリカで流行っている蜘蛛男とか蝙蝠男だって、人間かどうかを疑われることは稀じゃないだろうか。
少し落ち込むな。
「ねぇ、コーマ。この氷を抱きながら移動したら、暑くても平気じゃない?」
「いや、さすがに凍傷になる……ってか、本当にどこにいったらいいかわからないしな」
「あ、それなら大丈夫よ。ほら、前に風の宝玉と風の神子……えっと、名前誰だったっけ? 忘れたけど、人間の場所を探すときに契約の繋がりを手繰ったでしょ? あれと同じで、この氷像の契約を辿っていけば、えっと、炎の神子のなんちゃらさんの場所に行けるわよ」
ちなみに、契約の糸は二本出ていて、一本はクリスに繋がっているらしい。
……そうか、これでレイシアの居場所がわかるのか。




