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茶菓子とともに依頼文

かなりの誤植があったので、修正しました。


100万アクセス突破しました。みなさんありがとうございます。

~前回のあらすじ~

勘違いが起きています。

 ギルドから届けられた封書に入っていたのは……俺の求める情報等ではなかった。

 だが、それ以上にやばい情報だった。


 魔王。迷宮の最下層に巣食う悪魔。魔物を生み出し、アイテムを生み出し、迷宮内に力を循環させ、力を得る魔王。

 しかも、魔王は迷宮で得た力で、迷宮の外にも魔物を生み出しているという。

 どこからそのような“本当”の話が出回ったのかはわからない。

 だが、エリエールだけではない、多くの勇者、騎士、諜報員がすでにこの町に入っており、独自の調査を始めている。


 アイランブルグ国からも正式にギルドに使者を送り、このラビスシティーをアイランブルグの属州にするようにと命令したそうだ。

 当然、そんな内容は受け入れられないのだが、もしも魔王の存在が確認されようものならどうなるのか、俺には皆目見当もつかない。

 大規模な討伐隊が編成されるのか、もしくは迷宮の入り口を完全に塞ぎ誰も入れないようにするのか。

 それこそ、魔王とギルドが手を組んでいる、なんて話が出回れば、この町は孤立状態に陥るかもしれない。


 だが、どうしてこんな情報をエリエールは俺によこしたのか。


 エリエールについては3日間、少し調べさせてもらったため(主にパーカ人形目的で)、この情報は真実味があることはわかる。

 いや、実際に真実なのだ。

 魔王の一人である俺が言うから間違いない。


 そして、俺は彼女と実際に会うことになった。


「魔王の情報……でいいのかしら?」


 エリエールの問いに、俺は無言で頷く。

 そして彼女は――


「魔王の情報を伝えるにあたって、あなたには協力していただかなくてはいけません」

「魔王と関係あるんですか?」

「ええ、もちろんです。詳しい依頼内容はギルドマスターのユーリ様にお伝えいたしました。クリスティーナ様とともに依頼を受けていただけないでしょうか?」

「依頼を受けるかどうかは内容を見てから考えます。それと、エリエールさん」


 俺は忘れてはいけないもう一つのことについても尋ねた。

 そう、シークレット情報について。


「あの日伝えたもう一つのこと……いつか答えを聞かせてください」

「…………いつか必ず、お答えしますわ」


 彼女の言葉にとても強い念を感じた気がするが、気のせいだよな。


    ※※※



「というわけで、来い、クリス」

「いきなり来てなんなんですか、まだお昼ご飯たべてる途中なんですよぉ」

「いいから来い」


 パンをくわえながら引きずられるクリスは俺に文句を言ってきたが、


「先月分の借金の返済、滞ってるみたいだが……たとえば、俺がちょっと念じたらどうなるかわかってるのか?」

「ちょっと待ってほしいにゃん! 先月倒したゴーリキさんを捕まえた賞金が貰えたら、クリスティーナはすぐにお金を返すつもりにゃ、にゃにゃにゃ、やめてくださいにゃ」


 うわ、ちょっと試してみたんだが、本当に痛い子になっているなぁ。

 クリスとは借金に関して契約をしていて、お金を払えなかった時から3ヶ月間はこのように「一人称が自分の名前」「言葉が猫っぽくなる」の呪いを発動できるようになっている。

 さすがにずっとこの状態、というのはかわいそうなので、俺が念じた時だけ、不足分の借金を返せば呪いは解除されるようになっているが、少なくともしばらくは返せないよな。


「じゃあ、黙ってついてくるな」


 俺の問いに、クリスは涙目になりながら頷いた。


「そういえば、クリスは勇者エリエールって知ってるか?」

「はいにゃ……コーマさん!」

「悪い悪い」


 クリスの呪いを解除。


「はい、知っていますよ」


 流石は冒険者オタク。よく知ってるなぁ。

 俺も自分なりに調べたが、クリスに聞いた方が早かったかもしれない。


「勇者エリエールは3年前の勇者試験で唯一の合格者ですから」

「ん? 勇者試験は上位10名が合格するんじゃないのか?」

「試験内容は毎年変わりますから。20名以上の勇者が現れる年もあれば、一人も合格しない年もあります。需要と供給の関係らしいです」


 へぇ、じゃあ今回は運がよかったのかな。

 筆記試験とか言われたら、カンニングアイテムを作成しないと絶対に受からない。


「確か、その年は10階層を探索して、隠された迷宮を見つけた人間が勇者になれる、という試験内容だったそうです」

「隠された迷宮か」


 迷宮には、ギルド迷宮のように公に入口が設置されている迷宮と、ルシルの迷宮のように入口が巧妙に隠されている迷宮がある。


「勇者エリエールは宝石の原石が採取できる迷宮を発見して、一躍勇者の称号と巨万の富を得たラッキーヒロインだと言われています。ですが、勇者の実力もまたピカイチですよ」


 だから、サフラン雑貨店にはあれほどの宝石の原石が売っていたのか。


「ところで、どうしてその話題を?」

「今から、勇者エリエールからの依頼を受けに、ギルドに行くんだよ」

「え? 勇者エリエールからの依頼ですかっ!? 行きましょう、コーマさん! 急いで!」


 現金な奴だな。まぁ、やる気になるならそれでいいや。

 ギルドに到着すると、今回もギルドマスターの執務室へと案内された。

 今日は何があったのか、ルルがギルドマスターの席に座り、ユーリがルルにお茶を注いでいた。


「いやぁ、じゃんけんで負けてね、罰ゲームで立場が逆転してるんだよ」


 ユーリは笑いながら言う。ルルは無言でお茶を飲んでいた。

 それでいいのか? ギルドマスター。


「君たちへの依頼は私が伝えるから安心したまえ」

「あの、ユーリ様! 今回の依頼は勇者エリエール様からの依頼だと伺ったのですが」

「あぁ、そうだ。君たちは蒼の迷宮にいったことがあるかね?」


 俺とクリスは同時に頷いて肯定する。

 クリスが勇者になって、最初に探索したのが蒼の迷宮だ。

 通路が水の壁に挟まれた道で、神秘的な迷宮だったと印象に残っている。


「あぁ、では、30階層より下をギルドが立ち入り禁止にしているのも聞いているね」

「はい、伺っています。30階層より下は非常に危険のため、ギルドの許可がないと入ることができないと」

「実は、それは虚言だ。実は、35階層にあるものを代々隠していてね。君たちはそこに行ってほしい」

「35階層……そこに何があるんですか?」


 クリスが訊ねる。俺も気になる。

 ギルドがひた隠しにするもの。

 封印された魔物か、それとも財宝か。

 エリエールが言うには魔王と関係のあるものらしいのだが。 

 ユーリは、ルルに茶菓子を用意して言った。


「海と……そして人の住む町だ」


 その答えはさすがに予想外だった。


~閑話~

 暫く店を留守にすることになりそうなため、俺はメイベルと連絡を取ることにした。

 従業員寮の一階にいることを伝えると、メイベルも話したいことがあるからと店を抜けて来てくれた。


「メイベル、なんか機嫌がよさそうだな。俺がいなくなることがそんなにうれしいのか?」

「い、いえ、そうじゃないんです。ただ、珍しい品が安く手に入って」

「へぇ、それは興味あるな」


 メイベルが珍しいというのだから、相当珍しいのだろう。

 アイテム図鑑登録のチャンスだ。


「どんなアイテムなんだ?」

「こちらです」


 そう言って、メイベルが取り出したのは――どこかで見たことのある木の箱。

 そして、木の箱の中から出てきたのはどこかで見たことのある薬瓶だった。


「もしかして、力の超薬か?」

「ええ、本物です。私も実物を見るのははじめてなんですが」

「ちなみに……それを売りに来た人の特徴と、いくらで買ったか教えてくれないか?」

「はい。お金持ち風の50歳くらいの女性と、片眼鏡の執事風の男性の二人で――」

「よし、誰が売ったかはもういい。いくらで買ったんだ?」

「最初は金貨150枚で売りたいと仰っていたのですが、どうやら彼女は何か焦っているようでしたので、足元をみたところ、金貨60枚で買うことができました」


 メイベルが言うには、おそらく彼女は使う予定ではなかった金貨を使うハメになってしまったのだろうとのことだ。

 あぁ、用意した金貨150枚は見せ金で、本来は使ってはいけないものだったのか。

 でも、あの人、金貨90枚の損失か。少し憐れだな。


「メイベルが客の足元を見るって珍しいな」

「はい、「このようなボロボロの店にふさわしい品でないざますが」と前置きがなければ、適正価格の金貨80枚で買いましたよ」

「……そうか」


 同情撤回。自業自得か。


「ちなみに、それはいくらで売れそうだ?」

「金貨90枚で販売する予定なのですが……、先に購入したいと仰っている方がいらっしゃいまして、彼女になら金貨80枚で売ってもいいかと」


 それは誰か?

 力を求め、メイベルとも親しくしている人。そんなの一人しかいない。


「あぁー! コーマさん! ちょうどよかった、さっきメイベルさんに聞いたんですが、力の超薬が入荷してるんですよ。

 力の超薬ですよ! 筋力が1%も上がる薬で、歴代の勇者はこれらを飲んで強くなったといわれているんです。

 だから、コーマさん、お金を貸して――」

「お前にこれ以上貸す金はねぇぇっ!」


 力の超薬。筋力が1%上がる薬。

 それを求めるクリスはこれまで筋力が10%上がる力の神薬を10本以上飲んでいることを、彼女はまだ知らない。


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