プロローグ
サイルマル国の玉座に座る。
僕は齢4歳にして王の座に登りつめた。
否、登りつめたというのは語弊があるだろう。担ぎ上げられたに過ぎない。
前国王と前王妃、つまりは僕の父と母に当たる人物とともに乗った馬車が魔物の群に襲われ、護衛についていた100名もの兵とともに命を奪われた。
そんな惨劇において、生き残ったのは数人の護衛の兵と僕だけだった。
国民は奇跡の王子として僕を出迎え、元老院の老人達の後押しで王の座を与えた。
僅か5年前のことだ。
ようは、僕が大人になるまでの間、代理で政治を行う権利が欲しかったのだろう。
彼らは、国王や王妃といった厄介者がいなくなり、政治を何もしらない僕が生き残ったことに歓喜したことだろう。
だから、彼らは気付かない。
僕とともに生き残ったはずの兵が一年以内に謎の死を遂げていることにも。
そもそも、そのような惨劇の中で子供である僕が生き残れるはずがないことにも。
僕を本物の王子と信じて疑わない全ての者を、僕は笑顔で騙す。
全ては戦争を起こすために。
風の騎士団、彼らはよくやった。
見事に僕が放った玩具にやられて勇者試験に落ちてくれた。
見事に僕が放った玩具にやられて命を捨ててくれた。
考えてもみればいい。たった6人、そう、たった6人の命で戦争が始まるんだ。
すでに同盟国のアイランブルグ国から、ラビスシティーへの使者が送られた。
さて、あのギルドマスターはどういう答えを出すかな?
ゆっくり見物させてもらおう。
玉座の上から高みの見物とさせてもらおう。
それとも、闇の底から見上げてみようか。
胸をときめかせ、僕は瞳を閉じた。
そうだ、あとあれもやっておこう。
僕はそう決意し、瞳を閉じたまま兵を呼んだ。
※※※
ラビスシティーでもはや知らないものはいないと言われるまでに至った大型雑貨店。
フリーマーケット。通称フリマと呼ばれる店内はピリピリとした緊迫した空気に満ちていた。
いつもは長蛇の列が途絶えることのないフリーマーケットも、今日は閑散としている。
「相手さんも流石だな」
俺が笑顔で言うと、フリーマーケットの店長、メイベルは奥歯を噛みしめて、悔しそうに、
「今だけですよ……相手に合わせることなんてありません、こちらはいつも通りでいたらいいんです」
「なんだ、わかってるじゃないか」
快活に笑い、メイベルの肩を叩く。
ちなみに、メイベル以外の店員は客の呼び込みにいっているらしく、従業員以外にいるのは俺だけだ。
こんな雑談ができるのも、客が少ないからなんだから、別にいいじゃないか。
例え、隣に――大型雑貨店が新しくオープンしたって。
もともとは宿屋だった建物を改装、僅か1ヵ月のリフォーム期間を経てオープンした。
雑貨店「サフラン」。隣国では指折りの大商店であり、ポーションから入手困難なレアアイテムまで様々なものを取り扱う。
「コーマ様はずっとうれしそうですね」
「あぁ、珍しい品が山ほどあったからな」
「行かれたんですか!? あの店に」
「ん? 言ってなかったか? 開店前日の昼から並んで一番乗りしたぞ」
コレクターとしては当然です。
一品もののアイテムや素材アイテムを買いあさったよ。金貨50枚くらい使ってしまった。しかも、先着100名様には粗品ももらえた。
木の箱に入ったアイテムで、それを空けて出てきたものに狂喜乱舞した。
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パーカ人形〔ミック〕【雑貨】 レア:★
パーカ迷宮で拾うことのできる指人形。全97種類ある。
ジャックが親に黙って飼っていた犬。
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このアイテムを見たとき、俺は神に感謝したね。
97種もコレクションアイテムが存在する迷宮が存在するんだぞ。
これが喜ばずにいられるか。
しかも、パーカ人形って、木の箱に入って見つかるアイテムで、地上に戻って開けるまで中に何が入ってるかわからないんだ。
なんでこんなアイテムが迷宮で見つかるのかわからない?
そんなの、俺みたいなコレクターを誘い込むために決まってるだろ。
ちなみに、このパーカ人形、コレクター本まで販売されていた。
シークレットを除く96種を網羅したイラスト付き解説本で、誰が考えたのかいろいろな設定が書かれている。もちろんコレクター本はきっちり購入済み。
主人公となる少年の名前がパーカで、ジャックというのはパーカの弟の名前らしい。
ちなみに、俺の持っているミックという犬に餌をあげていたのはジャックだけではなく、パーカも隠れて餌をあげていた。
親と一緒に飼ってもらえるように説得するが、許可が貰えず、パーカと一緒に里親を探して、ゴンザさんに引き取ってもらった。
ちなみに、ミックを捨てたのは、パーカの裏の家に住むギンバという男で、実はパーカの生き別れの兄の友人なのだ。
これらの物語は「パーカの町の日常」というタイトルで、物語小説として販売されているらしい。今度買ってみようかな。
それにしても、テレビも雑誌もないこの世界で、キャラクターグッズからメディア展開をするってすごいことだと思う。
あぁ、行きたいなぁ、パーカ迷宮。
俺がまだ見ぬ迷宮に思いを馳せていると、
「偵察に行かれたんですか、どうでした?」
メイベルが曲解したみたいだ。それなら、それなりに答えるとするか。
「とりあえず、流石はアイランブルグ国で一番の商店だな。品揃えが豊富なうえに値段も安い。銅の剣なんて銅貨30枚で売ってたぞ」
「それは安いですね。それで採算が取れるとは思えませんが」
「大量生産の薄利多売だな。他の雑貨品も似た感じだ」
地球でいうところの産業革命時の工場制手工業を取り入れているのかもしれない。アイテムも本国から輸送されているそうだし。
「ま、うちにはうちの戦い方があるだろ? 暫くは様子見でいいんじゃないか? 金には余裕もあるだろ」
「それはそうですが……」
メイベルはそれでも何か頑張りたい、そういう感じだ。
この店を世界一の店にするのが彼女の目標だからなぁ。
でも、頑張りすぎて隣の店を閉店に追い込むようなことはするなよ。
いくら俺が仕入れたアイテムだからって、安値で売るのは厳禁だ、と言っておく。ただでさえ、俺がアイテムを作るのはチートなんだからな。
そのチートでよその店を壊すのは流石に寝覚めが悪い。
「わかりました。では、今まで通り営業を続けます」
「ああ、無理しないでくれていいからさ」
俺はそれだけを言うと、他の店員が帰ってくる前に店を出ることにした。
そして、店を出て暫く歩くと――彼女がいた。
約束はしていたが、待っていてくれるかどうかは正直半々だった。
茶色い縦ロール、青いドレスを着た優雅な女性だ。
待っていてくれたのならうれしい限りだ。
「こんにちは、エリエールさん」
「ごきげんよう、コーマ様」
「相変わらず儲かってるみたいですね」
「おかげさまで……ですが、初日の売り上げには及びませんわ」
まぁ、俺一人で金貨50枚分購入したからな。
彼女が俺の店、フリーマーケットのライバル店「サフラン」の店長。
エリエール・サフラン。
もしも俺が彼女とこっそり会っていることを知られたら、メイベルに何を言われるかわかったものじゃないが。
「それで、本当に教えてもらえるのでしょうか?」
「ええ、このブローチに誓って……ね」
エリエールは胸に付けたブローチを指さして言う。
彼女の胸には勇気の証――勇者のブローチが輝いていた。
勇者エリエール。
6年前、15歳の若さで勇者となり、迷宮で様々な財宝を見つけて持ち帰った。それをもとに、故国のアイランブルグで商売をはじめ見事に成功。
メイベル達にすべてを任せている俺と違い、商売の才能があったのだろう、次々と事業を拡大していく。
そのため、彼女には様々な情報が入ってくるそうだ。
その中の一つ、彼女から買う情報は――流石にヤバいものだった。
「魔王の情報……でいいのかしら?」
~あとがき~
2章のあとがきを3章のプロローグで書くのもどうかと思いますが。
1章と2章、合わせて文庫本1冊分くらいかな?
という感じで、とりあえず
・勇者 ・魔王 ・店舗経営
テンプレの隠された力を最後に持っていき、物語を終えることにしました。
あと、ヒロインとしては、ルシル&クリスがメインヒロイン。コメットちゃんがメインとサブの間くらい。メイベルがサブヒロインという形です。
ちなみに、グー・タラの性別は、
グー=ジャングルはい○もハレのちグゥ のグゥから女の子。
タラ=サ○エさんのタラちゃんから男の子。
でした。
はじまりの話はエピソードごとの進展ですが、伏線としてだいぶ登場していますので、この後の展開も予想通りかな。
はじまりの話は、4話構成の予定で、その後、グーとタラのお話や、クリスのお話などをエピローグ後に加えたいと思ってます。
3章も書いている分には楽しかった物語です。
ぜひお楽しみください。




