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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode11 塔の迷宮・前編

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再び大聖堂へ

~前回のあらすじ~

地竜ランドドラゴンに乗って移動した。

 地竜ランドドラゴンに乗り、聖地手前まで移動した俺たちは、そこから徒歩で移動した。

 前は戦争難民だらけだった湖の周辺も今ではすっきりしたもので、観光客らしい人達が遠くからこちら(恐らくシルフィア、ウィンディア、アルジェラの三人の神子)に向かって手を振っている。ちなみに、その観光客がこちらに近付けないように、先回りしていたウィンドポーン、アークラーンの兵が合同で警備にあたっていた。


 聖地の湖では相変わらず空飛ぶ大聖堂が俺達を見下ろしていた。

 聖竜――白竜ホワイトドラゴンバイルスが運ぶゴンドラに乗り、今から大聖堂に向かうことになる。

 ちなみに、すでにアクアマリン、鈴子、レイシアの三人は大聖堂入りしているそうだ。


「今回で最後、今回で最後、今回で最後」


 呪文のように自分に言い聞かせるシルフィア――眉間にしわを寄せていて、歯を食いしばり、その顔はかなり怖い。

 最後と言っているが、帰りもこのゴンドラに乗ることは理解しているのだろうか?

 果たして、レイシアも無事に大聖堂に辿りつけたのだろうか?


 シルフィアはつい最近も土の神子であるアルジェラ、そして闇の神子である鈴子と同盟を結ぶために大聖堂に赴いている。

 俺の知る限りでは4度目の来訪となるはずだが、それでもまだ怖いようだ。

 でも、一応自分の足でゴンドラに乗り込んでいるし、意識も失っていないから成長はしているのだろう。


「眠ってるところを運んだらダメなのか?」


 普段はそういう風に運んでいると、前にサクヤが話していたのを思い出した。

 わざわざ怖がらせるのも申し訳ないな。


「向こうには各国の代表者が集まっているんだぞ。意識を失ったまま大聖堂に入る神子様の姿など見せられるわけないだろ」

「それもそうか」


 確かに、それはかっこ悪いよな。下手すれば外交問題に発展する可能性すらある。

 となると、レイシアの奴も無理して上がったのか。

 あいつ、ひとりで大丈夫だったのかな?


 ちなみに、この中で唯一恋人持ちのマルジュは聖竜を見て大興奮している。

 今のマルジュにかかれば、地竜ランドドラゴン? はん、あんなのでっかいトカゲにすぎないね、となるだろう。

 まぁ、地竜ランドドラゴン狂走竜アグリアステップドラゴンは正式にはドラゴンではなく、亜竜に分類されるらしい。

 となれば、マルジュにとってのはじめての竜はこの白竜ホワイトドラゴンということになるからな。


「アルジェラも一緒に乗ろうぜ」

「うん、乗る。グルースも行こ」


 ゴンドラの扉を開けて、マルジュ、アルジェラ、グルースが乗り込み、俺とウィンディア、ウィンディアの護衛達や文官たちも三人に続いた。

 何人かの文官や護衛の兵たちは、少し涙ぐんでいる。

 大聖堂に上がることは信者にとって、とても名誉なことらしいからな。

 最後に乗ったのは、シルフィアとサクヤだ。シルフィアの足は震えているが、大丈夫だろうか?


 そして、全員が乗り込むと、ゴンドラの扉が閉じた。

 そして、聖竜が大きく羽ばたくと、空へと舞った。

 ゴンドラに付けられた金属製のワイヤーがピンと張り、聖竜の力強い羽ばたきに呼応するかのごとく大地より離れはじめた。


「うぉぉぉぉっ、すげぇぇぇっ! 本当に飛んでるぞっ!」


 マルジュが大はしゃぎでいると、サクヤは苦い顔になった。


「マルジュ、そろそろ礼節をわきまえろ」


 サクヤが言うと、一瞬、マルジュが別人と入れ替わった。

 いや、そう思ってしまうほど、ふとマルジュの立ち振る舞いが変わった。

 ただ立っているだけだというのに、気品というかオーラが見えるようだ。

 

「これは失礼いたしました、サクヤ様」


 微笑を浮かべ、恭しく頭を下げるマルジュの姿に、アルジェラ以外の誰もが目を丸くした。

 いったい、これはどこのお坊ちゃんだ。


 などと思っていると、聖竜はさらに上へ、上へと登っていき、大聖堂の塔の上にゴンドラを降り立った。


「……つ……ついたのですか?」


 ずっと目を閉じていたシルフィアがそう呟く。

 ただ目を瞑って立っていただけなのに、成長したなと思う俺は彼女に甘すぎると思う。

 

  ※※※


 大聖堂の地下に降りていく。

 そこは湖族こぞくが営む町があるのだが、全ての店の戸が閉じている。冒険者ギルドも休みのようだ。


「なんだ? 今日は国民の休日か?」


 ここまで店が閉まっていると、日の丸の国旗でも掲げたくなる。


「各国の代表が集まっているから用心のためだろう。我々にとっても、湖族の皆にとってもな。恐らく彼らはどこか町の端の家の中で我々が去るのを待っているはずだ」

「……あぁ、そういう理由ね」


 過ぎたる威光は嵐と同じってわけか。日本のひとつの島に各国の首脳が集まるようなものだしな。

 マルジュじゃないが、俺ももうちょっと緊張感を持った方がいいかもしれない。


「コーマさぁぁぁん!」


 緊張感や、威光とは無縁のクリスがこちらに向かって手を振っていた。

 ……一応、あいつは勇者で大富豪のひとり娘なんだがな。

 クリスを見て、俺はちょっとだけ強張ってしまった口元を緩ませた。

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