エピローグ & はじまりの話2
~前回のあらすじ~
コメットちゃんとグーが一緒になった。
衝撃的な再会の後、メイベルにも連絡を取った。彼女も俺のことを心配してくれたらしく、かなり怒られてしまった。
コメットちゃんのこともあったし、かなり参っていたのだと思う。フリーマーケットは一昨日から営業を再開しており、売り上げも順調という言葉が虚しくなるほどの大金を稼ぎ出しているらしい。
あと、新たに奴隷を二人買い、雇い入れたそうだ。
それでもコメットちゃんの抜けた穴を埋めるのは数週間の研修が必要だろうと言っていた。
そのコメットちゃんは、グーとして受けた仕事が残っているといって畑の拡張を行っていた。
タラも一緒だ。
ちなみに、グーとコメットは俺への愛情で共鳴したそうだが、ゴーリキとタラは俺への忠義で共鳴したらしい。
コメットちゃんに、自分を殺した相手なのに普通に接することができるのか訊いてみたところ、
「確かに殺したのは許せません。ですが、タラは私の弟ですから。タラと共鳴できるってことは悪い人じゃないはずです」
そう、尻尾を振りながらお姉さん風を吹かせていた。
グーとタラは血のつながりのある姉弟というわけではないのだが、いつの間にかそういう組織図ができあがっていたようだ。
俺も最初はゴーリキのことを殺したいほど憎んでいたが、悪いのはあくまでもブラッドソードだしな。
コメットちゃんが割り切っているのに、俺が割り切らないわけにはいくまい。
それにしても、気になるのは、ゴーリキに剣を預けたという少年だ。
少年がゴーリキに近付いてきて、剣を風の騎士団に届けてほしいという依頼を出したそうだ。
本来ならそのような話は断るんだが、その剣を見た瞬間、誘惑にかられたそうだ。
すでにブラッドソードはスラム街で数十人もの人を殺したため、魔力が備わっていたということだろうか。
とはいえ、わずかに残っていた、蝕まれていく理性が、その剣を風の騎士団に届けなくてはいけないという指令となる。
だが、その指令は最悪の形で幕を開けた、というわけらしい。
そして、ゴーリキはその後のことも全て覚えていた。
俺やクリスとの2度の戦い、ギルド職員やコメットちゃん、酔っ払いの男など多く人間を殺したこと。
そして、俺が魔人化したことも。
脳の大半が麻痺していたため、夢かとも思ったが、タラと一緒になり、俺が魔王だと知ることであれが夢でなかったのだと知る運びとなった。
「それにしても、この剣が72財宝の一つだったのね」
ルシルは、部屋に置かれた【竜殺しの剣グラム】を見つめて感慨深げに呟く。
72財宝も2つ目、在り処を知っているのは1つだから、残り69個。
先はまだまだ長い。
「グラムっていう名前の剣でな、試し切りしたが切れ味はかなりのものだったぞ」
「そのくらい知ってるわよ」
ルシルは剣を見つめて言う。
「だって、お父様を殺した剣士が持っていた剣だもの」
「……なんだって?」
剣の説明には財宝を守る竜を殺すために――
竜?
そういえば、魔王ルシファーは、7人の英雄と戦った時、巨大な闇竜の姿で戦ったという。
おそらく、この剣の説明文を見るに、竜攻撃に特化した性能があるのだろう。
まさにとっておきの武器だ。
「じゃあ、この剣の元の持ち主は、7人の英雄の誰かってことなのか?」
「そうなるわね……。じゃ、コーマ、お願いがあるんだけど」
「……なんだ?」
このタイミングでお願い。
その内容を想像することすらできない。
「チョコレート作って! 無くなったの!」
「はぁ!? お前、先週1ヶ月分作っただろ」
「ほら、それはコーマの看病でストレスが溜まって」
「俺の看病しながらチョコばくばく食ってやがったのか」
「うぅ、じゃあもういい。自分でつく――」
「らせる訳にはいかないから俺が作る。ここで大人しく待ってろ。動くな、一ミリも動くな、瞬きもするな」
そう言い、俺はカカオ豆と砂糖とミルクを用意する。
ミルクチョコレートを作るために。
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レア:★ 12064種
レア:★★ 941種
レア:★★★ 94種
レア:★★★★ 15種
レア:★×5 13種
レア:★×6 4種
レア:★×7 3種
レア:★×8 2種
レア:★×9 1種
72財宝 3種
13140/862139218
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図鑑はまだ0.01%にも満たない。
ちなみに、余談だが、4人で仲良くチョコレートを食べた結果、コメットちゃんとタラが腹痛を起こした。
チョコレート中毒という犬に出る症状であり、アルティメットポーションで治療できたんだが。
今後は、玉ねぎなども禁止にしないといけないとな。
そんなことを思いながら、その平和を満喫することにした。
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Episode3 に続く
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~はじまりの話2~
気が付けば――美人がいた。
銀色の長い髪に赤色の瞳の、20歳くらいの女性。黒いドレスを着ていて、まるでファンタジー世界から抜け出してきた吸血鬼のようだ。
「気が付いたようね」
彼女が妖艶な笑みを浮かべる。
あれ? 誰だ?
いや、そもそもここはどこだ?
彼女が座っているのは玉座。赤色のカーペット。
少し段差があり、足元には碧く輝く魔法陣。
思い出してくる。そういえば、俺はさっきまで釣りをしていて……ルシルと名乗る少女に会って、驚いて湖に落ちておぼれたんだ。
目の前の女性を見る。
「言葉はわかるわよね。一応、あなたが眠っているうちに翻訳魔法をかけたんだけど」
「あ、はい、わかります」
翻訳魔法……言葉が通じるようになる魔法か。
「あなた、もしかして、ルシルって少女のお姉さんですか?」
「いえ、あれも私よ。異世界に送った分身なの」
彼女は笑い、そう言った。
「改めまして自己紹介するわ、私はルチミナ・シフィル。大魔王、ルシファーの一人娘よ」
ルチミナ・シフィル……縮めてルシルだったのか。
「……火神光磨です」
とりあえず、俺は自己紹介をして頭を下げた。
そして、頭に理解が追いついてくる。
異世界、そうか、ここはつまり異世界なのだ。
確か、ある物を集めてほしい、そのために俺は異世界に呼ばれた。
「あなたをここに呼んだのは、あなたに集めてもらいたいものがあるからなの」
「72財宝……ですね」
俺が訊ねると、シフィルは満足そうに頷いた。
「72財宝とは、強大な力を持つ72の秘宝。これらを全て揃えたら、世界を手中に収める力が得られるといわれている」
つまり、世界征服するために俺に財宝を集めさせる。
そういうわけか。
「俺には拒否権はない……んですよね」
「ないな」
「もしも断ればどうなるんです?」
「伏せろ――!」
シフィルがそう叫ぶと同時に、俺の身体が意図せずに伏せた。
なんだ、今、何をされた?
「召喚魔法によって召喚されたものは、絶対服従状態になる」
「そんなの聞いてませんよ」
「いってないからな。もういいぞ」
シフィルが言うと、俺の身体に自由が戻る。
「私は無理やり従わせるのは好きではない。できれば協力を望みたい。72財宝を全て揃えたら、日本の元の時間に戻すことを約束しましょう。君が生きて帰れるようにこちらも最大限の力を貸そう」
「…………俺、なんの力もないただの高校生ですよ?」
「そんなことはない。72財宝を集める能力のあるものという条件で召喚したら、コーマ、君が現れた」
「……君が現れたって、そんなこと言われても」
こういうのは伝説の勇者とかが選ばれるものじゃないのか。
いや、魔王は勇者を召喚したりはしないか。
だが、ただの高校生が異世界で何をできるっていうんだ。
「何か役立つ武器とか、スキルとかはないんでしょうか?」
「ええ、もちろん用意してるわよ。お父様のコレクションアイテムが」
そう言って、シフィルは一冊の本を渡した。
そして、本を捲ってみると、様々なアイテムの名前と説明文が書かれている。
ルシファーコレクションと呼ばれるアイテムで、これらすべてが魔王城に所蔵されているという。
とても便利なアイテムばかりだ。
ていうか、日本語じゃないのにきっちり読めているな。
これも翻訳魔法のおかげなのかな。
「……これらを使って、72財宝を集めたらいい……そういうわけですね」
「ええ……あ、そうそう。夕食を用意してるの」
「夕食?」
そうか、今は夜なのか。
そう思っていると……シフィルは玉座の後ろからそれを取り出した。
「パン作りにはじめて挑戦してみたの。食べてもらえるかしら?」
「へ……へぇ、シフィル様自ら料理を作られたんですか……ですが、なんですか? ぐねぐねと動いているみたいなんですけど」
「パンは鮮度が命だからな」
そう言うやパンが――俺の口めがけて襲い掛かってきた。
え? これが異世界の――魔界の料理!?
パンはそのまま俺の口に入っていき――そのあまりの苦味とえぐ味に、俺は――
「水ぅぅぅぅっ!」
走り出した。
水を求めて走り出した。
シフィルは「そうかそうか、慌てて食べるんじゃないぞ」と平然に言うが、それどころじゃない。
このままだと二度目の死を迎えてしまうぞ。
俺はそのまま水を求めて走って行く。
「そこは宝物庫!」
そんなシフィルの声が聞こえたが、俺の足は止まらない。
命令されたら止まったのかもしれないが、命令されてないから止まらない。
そして、俺は見つけた。水が湧きでる壺を。
近くにあった杯でその水を掬い――
「その杯は!? コーマ今すぐ――手を」
ゴク、ゴクと俺は水を飲みほした。
まだ気分が悪い。
「コーマ! 貴様、父上の魂を飲み込んだなっ!?」
「え? 父上の魂?」
そう言われた刹那――俺の胸が熱くなってきた。
そして、声が聞こえる。
【殺せ】
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はじまりの話3 に続く
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