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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
第一部 東大陸編 Episode01 勇者試験
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後の勇者のロングソード

~前回のあらすじ~

勇者試験が締め切られた。

「勇者試験を受けたいんです!」

「規定時刻を17秒オーバーしております。先ほども申しました通り、勇者試験の受付は終了しました。来年度の勇者試験の受付を今からなさいますか?」


 17秒、そんなの誤差のうちじゃないか。

 そう文句を言おうとしたら、俺を案内してきてくれた男の人が俺と受付嬢のお姉さんとの間に割って入った。


「そこを頼むよ、レメちゃん!」

「ジョークさん、冗談は名前だけにしてください」

「俺の名前はジョーカーだ!」

「では名前も冗談にしてください」

「ひどくね? ちょっとひどくね?」


 受付嬢のお姉さんは、ジョーク……じゃなくてジョーカーのことを無視して、俺をじっと見つめてきた。

 サファイアのような蒼く輝く瞳が俺の顔を映し出す。


「お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

「コーマです! どうか勇者試験を受けさせてもらえないでしょうか?」

「コーマ様、勇者とはどのような方だと思いますか?」


 お姉さんはそう尋ねた。

 それに、俺は考える。

 勇気を持つ者、魔王を倒す者などいろいろ考える。

 そして、結局答えは無難なものになった。


「…………魔物を倒す人でしょうか?」

「そうですね、それも勇者の一つです。ですが、それだけだと冒険者と大差ありません」


 正解ではあって正解ではない、彼女の評価はそういうものだった。


「勇者には多くの権利が与えられます。迷宮の探索だけではありません、情報の提供、多くの関所もフリーパスですし、他にも勇者のみ立ち入ることのできる施設もあります」


「その力は絶対ではありません。ですが絶大です」と、彼女は告げた。

 それが許されるのは、許されてしまうのは勇者という職業にいるものの働きによるもの。

 過去の勇者の功績が、勇者に権利を与える。


「だからこそ勇者を選ぶときは厳格なルールのもと判断しなければいけません。たかが17秒といえども、規則を守れないものを勇者にはできません」

「…………そうですね、失礼しました」

「いえ、コーマ様が物わかりのいい方で助かりました。時間を数分ほど無駄にしましたが、あなたに業務妨害による損害賠償請求をするのはやめましょう」


 損害賠償請求されるところだったのか。危なかった。


「ところで、どうしてコーマ様は勇者になりたいのでしょう?」

「迷宮の探索を。11階層より下に行きたくて」

「そうですか。ならば勇者の従者になられてはいかがでしょうか?」

「従者に?」

「はい、幸い、この町には勇者試験を受ける勇者候補が多く存在します。彼らの仲間になって勇者試験を受けられてはどうでしょう? 勇者ほどの権利はありませんが、勇者の従者も迷宮の探索許可が与えられます」


「現在の勇者の従者になるのは厳しいかもしれませんが、勇者候補の従者なら枠もまだあるでしょう。試験は明日からですからそれまでに従者枠に空きがある勇者候補を探してはどうでしょう?」

「それだ! ありがとうございます――ええと、レメさんでしたっけ?」

「申し遅れました、私の名前はレメリカ・リュリュシュです。気軽にレメリカさんとおよびください」


 気軽に「さん」付けなのね。呼び捨てされることを絶対に許さないタイプのようだ。


「ありがとうございました、レメリカさん。俺、絶対に勇者の従者になります」

「絶対など言うべきではありませんよ。世の中はできないことで満ちています。不可能なものは不可能と諦めないと、躓いたときに起き上がる気力がなくなりますよ」

「えっと、それ、言う必要あります?」

「失礼しました。それと、コーマ様、冒険者ギルドでは、ドブ掃除から魔物討伐まで幅広い仕事を多数用意しております。冒険者として登録されますと、ランクGからスタートいたしまして、依頼を達成するごとにランクが……」

「それこそ今言う必要あります? まるで俺が勇者の従者にもなれずに冒険者として生きていくことが確定されているようだけど!?」

「そう申しております」


 レメリカさんはそう言って仰々しく頭を下げた。

 言葉遣いや振る舞いが丁寧ならなんでも許されるというわけではない。


「実際、私がこの話をした勇者候補や従者候補の皆様は、勇者試験が終わった次の日にここに来るわけですから、今のうちに説明を聞いておいても損はないかと」

「聞きたくなかったよっ、なにそのジンクス、怖っ!」

「私、人を見る目はあるんですよ?」

「前置きされる前に聞きたかったよっ!」


 ダメだ、この人怖すぎる。


「では、コーマ様。私の予想を裏切る成果、期待してお待ちしております」

「……はい、頑張ります!」


 そうか、わかった。彼女はいわゆるツンデレだったんだ。

 最後に俺を励ますために辛辣なことを言ったのだ。

 そうに決まっている。そうじゃなければ、受付嬢なんていう接客業をできるわけがない。


「頑張ってください。あと、仕事の邪魔ですからそろそろ出て行ってください」


 前言撤回。どうして彼女が接客業をできているのか、本当に謎だ。



 その後、なんとかレメリカさんに頼み込んで、勇者試験の内容について詳しく聞いた。


 勇者試験は、ギルドが用意したギルド迷宮で行われる。

 勇者試験に申し込んだ受験生(以下、勇者候補)は3人まで従者として契約を結ぶことができる。

 そして、迷宮で魔物を倒し、アイテムを集めて戻ってくる。

 一週間続き、以下のポイント合計で勇者になれるかどうかが決まる。


・討伐ポイント(ゴブリンの爪など、魔物を倒した証のアイテムによって与えられる)

・成果ポイント(高価なアイテム、珍しい薬などのアイテムによって与えられる)

・寄付ポイント(ギルドへの貢献値によってポイントが与えられる)


 寄付ポイントってなんだよ。せめて貢献ポイントにしろよ。

 金持ちが得をするシステムなのか? 

 詳しく聞くとまさにその通りだった。

 財力も力の一つというのが勇者試験の趣旨らしい。なんとも酷い話だ。

 試験は明日から一週間行われ、最終日終了時の上位10名が勇者として認められる。

 ちなみに参加者は370名、勇者になれる確率は1/37というわけか。


 勇者候補は右腕に黄色い布を巻いているからすぐにわかると言われたのだが。


「あぁ、なんで俺がお前みたいなガキを従者にしないといけないんだ?」

「悪いが従者枠は埋まったんだ」

「あら、ぼく、可愛い顔をしてるわね、どう? 夜の相手を一緒にするなら――」


 ちなみに、三人目は髭面のごつい男だからな。全力で逃げ出したが。

 つまりは、俺みたいな実績もない高校生を従者にしてくれる人なんてどこにもいなかった。


 とりあえず、今晩の宿代でも稼がないとな。

 人気のない通路に行き、背負ってきた籠の中に入った石を10個ほど取り出す。


……………………………………………………

鉄鉱石【素材】 レア:★


不純物を多く含んだ鉄の鉱石。

鈍器としても十分通用しますが、ステータス補正はありません。

……………………………………………………


 確かに鈍器としても十分に使えそうな岩ともよべる鉱石を手に持ち、


(アイテムクリエイト)


 鉄の鉱石が鉄の板へと変わった。


……………………………………………………

鉄インゴット【素材】 レア:★


鉄鉱石から不純物を取り除いた、純度99%以上の鉄の塊。

磁石がくっつきます。

……………………………………………………


 鉄の延べ棒ができあがった。

 さて、妙なことがもう一つ。

 この鉄インゴット、質量が鉄鉱石のころと全く変わっていない気がする。

 不純物を取り除いているのになぜ質量が変わらないのだろう?

 あと、取り除いた不純物はどこにいったんだ?

 まぁ、このあたりはアイテムクリエイトのチートな特性だろう。


 ちなみに、アイテムクリエイトとよく似た魔法で、「アルケミー」というものがあるらしい。

 ただし、アルケミーを使うには、アイテムのレシピが必要であり、時間もかかるそうだ。

 もしも誰かに俺がアイテムを作っているところを見られたら「アルケミー」の新技法だとごまかそうと決めていた。


 そして、もう一度アイテムクリエイトを行う。

 

……………………………………………………

ロングソード【剣】 レア:★★


鉄から作られた剣。短剣と区別するためにロングソードと呼ばれる。

特筆するほど長いわけではない。

……………………………………………………


 長いわけでもない鞘に収まったロングソードが生み出された。

 その数10本。そして、質量は、鉄鉱石のころよりも重くなっている。

 質量保存の法則完全無視だ。

 それを再び籠に入れて、仲間にしてくれそうな勇者候補を探す途中で見つけた武器屋に向かった。


 買いたたかれるだろうが、一晩分くらいの宿代にはなるだろう。

 それにしても重いなぁ、力の妙薬を持ってくればよかった。


 武器を売って、宿屋をとったら、また勇者候補を探さないとなぁ。

 なんて思って武器屋に入ったら、


「一週間、一週間でかまいません、武器をお貸しください」


 皮の鎧を着た若い女性が店主に土下座していた。

 金色の髪の女性だ。声を聞く限り若いと思う。


「そうわいわれてもよ、嬢ちゃん。お金もない、担保もないで売り物の武器をおいそれと貸せないんだ。こっちも商売なんでな」

「そこをなんとか、金銭の用意ができましたらもちろん対価は支払います」

「うちはツケはやってないんだ」


 まぁ、普通はそうだろうな。

 そもそも、金を払ったからといって武器を貸してくれるとも思えない。武器は使えば刃も傷つくし、下手したら折れる可能性もある

 武器を貸してくれるとすれば、武器の価値以上のものを預けないとな。


「すみません、ロングソードを売りたいんですが、買取ってできますか?」

「はいはい、やっておりますよ! お嬢ちゃん、そこにおられたら邪魔だから帰ってくれ」

「そこを……ん?」


 先ほどまで土下座していた彼女は起き上がると、俺の持っていたロングソードを一本抜き取った。


 ていうか、かなり美人な女性だな。俺と同い年か、少し年上っぽい。

 容姿だけならどこかの貴族の令嬢といわれても不思議ではないが、貴族の令嬢は金がなくて土下座なんてしないだろうが。

 そして、彼女は俺の剣の鞘を抜き、


「なんて綺麗な刀身……素材は鉄ですが、不純物も少なく、さびにくい加工もしてある。刃こぼれしにくい形状で初心者にも玄人にも使いやすい。あの、この武器をぜひ私に売って下さい」

「お姉さん、お金持ってないんでしょ?」

「金は必ずいつか……」


 話にならない。

 断ろうとしたとき、俺の目線は彼女の腕に行った。

 黄色い布を腕に巻いていた。


「お姉さん、もしかして勇者候補?」

「はい、そのために武器が必要で」

「よし、一本うってあげよう。ただし、俺を従者にしてくれたら、の話だ」


 俺がそう言うと、彼女は頷くしかなかった。武器がないのなら試験もろくに受けられないからな。


 こうして、俺はこちらが優位に立って、自由に使えそうなパートナーを見つけた。


 彼女の名前はクリスティーナ。

 俺の予定では後の勇者だ……たぶん。

~剣~

剣は勇者の定番アイテム。一般的な強さ。

素材だけでいえば、

木→銅→鉄→鋼鉄→プラチナ→ミスリル→オリハルコン

といったところかな。金の剣は銅よりも強く鉄よりも弱い程度で扱われますが、売値が高い剣です。魔力剣についてはまた別の機会に。

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