水の盾を貫け
~前回のあらすじ~
雷魔法のレベルが10に上がった。
魔法の巻物を使っていない以上、詠唱が必要だ。
だが、何を使ったらいいか、今の俺にははっきりしている。
「覚悟しろ!」
俺は叫んだ。
「我が身、雷となりて世界を駆け抜けろ――雷化」
刹那、表皮に電気を帯びた。
実際に雷になるわけではなく、体全体に雷を帯びて、高速で動けるようになるこの魔法。
ユグドラシルの杖のおかげで、その雷の力は通常の数十倍にも跳ね上がっている。
そして――俺はユグドラシルの杖をその場に投げ捨て、アイテムバッグから再度エクスカリバーを取り出した。
俺の表皮に帯びていた電気が、エクスカリバーに伝わり、剣が青く輝きを放つ。
電気を帯びているのか。
エクスカリバー改といったところか。
さらに、アイテムバッグから力の妙薬を取り、それを飲み、力を5割増しにさせる。
「……さぁ、いくぞ。律儀に待っていてくれてありがとうな」
ヒーローが変身している時には攻撃をしない怪人のように律儀な奴だな。
「少しは強くなってもらわないといけません。戦いにも調和は必要ですから。」
ディーネがそういうと、白い翼が大きく開き――その翼から無数の羽根が俺めがけて跳んでくる。
ただの羽根なのに何故か危機感を覚えた俺は一度その場に立ち止まり、水の剣を防いだ時のようにアイテムバッグから万能粘土を作り出し、それを元に壁を作り出したが――
「ぐはっ」
羽根はいとも簡単に壁を突き抜けて、俺の体を貫通した。
激痛が走る――急所はかろうじて外れた。
アルティメットポーションを飲む時間も惜しい。俺はアイテムバッグからエリクシールを取り出して振りかけつつ、壁から飛び出した。
羽根が、再度俺目掛けて跳んできていた。
今度は横に飛んで躱した。
ていうか、なんてスピードと貫通力なんだよ。
万能粘土の強度が何の役にも立たないなんて。
ディーネのMPは7000程減っているが、3000万もあるMPを考えると消費したうちに入らない。
さらに、ディーネは1秒間に500くらい回復していっているから、MPの枯渇による戦力ダウンは望めないか。
ならば――やられる前にやる!
俺はエリクシールの瓶を口に入れ、前に跳んだ。
そして、アイテムバッグの中に剣を入れ――俺は拳を握りしめた。
羽根が飛んできた。俺は鍛えぬいた回避能力を使い、急所だけを的確に躱して前に進み、拳を振るった。
水の盾が俺の拳を防ぐ。
高密度の水が俺の拳が通さない。電気も通らない。
今更ながらバカだよな。
一角鯨と戦ったとき、雷が弱点だった。あの時から、水属性の敵には雷がよく効くと思っていた。
でも、そうじゃない。
純水は電気を通さない――それもまた常識なのだ。
化学の成績がよければ、もっと早く気付いただろうに。
だから、俺は叫ぶ。拳を広げて。
魔法で作られようが、鉄よりも硬かろうが、それでも純水だというのなら、それはアイテム。
アイテムの勝負なら俺が負けるわけないだろ!
「アイテムクリエイト!」
剣を入れる時に拳に仕込んだ塩を出してそう叫んだ。
目の前の水の盾が――
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食塩水【素材】 レア:★
水に食塩を溶かした水溶液。
料理、医療等、様々な用途に使われる。
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悪いな、化学の成績があまりよくない俺にはこの程度の物しか作れなくてよ。
食塩水へと作り替えられた盾は俺の拳の電気をよく遠し――その電気はそのままディーネへと降り注いだ。
技あり――といったところか?
ニッと笑い、俺はディーネのHPだけを確認した。
【HP899712868/900000000】
……えっと、29万程度しか与えていないの?
と思った直後――ディーネから水の弾が飛んできた。
その水の弾が俺の腹にめり込み、俺は後ろに大きく飛ばされた。
歯を食いしばり、口の中のエリクシールの瓶をかみ砕く。
瓶を口の中から吐き出しながらも、痛みは消え失せた。
(……やばいな、これ、勝てないわ)
負けることが前提のバトルじゃないかと心から思った。
さて、どうやって逃げるかな。
無理ゲー




