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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode11 塔の迷宮・前編

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湖より生み出されたドラゴン

~前回のあらすじ~

ウィンディアのいると思われる湖の近くまでやってきた。

 火竜ファイヤードラゴンが着地すると、俺は火竜ファイヤードラゴンの背から飛び降り、ルシルに手を差し出した。

 ルシルは俺の手を当然のように掴んで、俺のフォローで地面に降り立った。

 クリスがじっと俺を見ている。


「クリス、どうした? やっぱりそのまま帰るのか?」

「帰りませんよ!」


 クリスは怒って火竜ファイヤードラゴンから飛び降りた。もしかしなくても、俺が手を出すのを待っていたのだろうな。

 そして、火竜ファイヤードラゴンの前に立つと、火竜ファイヤードラゴンはその顔をクリスに近付けた。

 クリスは火竜ファイヤードラゴンの鼻を優しく撫でる。


「ありがとうございました。マネットくんとの待ち合わせの場所まで行ってくださいね」


 クリスがそう言うと、火竜ファイヤードラゴンは無言で天を見上げ、翼を二度三度と大きく羽ばたかせると、一気に空へと飛び去っていった。


「ルシル、風の神子はこの先か?」


 風の宝玉を両手の平に乗せていたルシルに尋ねた。


「ええ、この先よ。契約の糸がかなり太くなっているから、目と鼻の先にいると思うわよ」


 俺がいくらふたつの瞳に力を集中させても、やはり風の宝玉から伸びるという契約の糸というものは見えない。

 ルシルの魔法の解析能力は本当に天才だな。

 俺達はこっそり、草陰に潜むように前に進んだ。


 そして、茂みの中から、湖を見つける。

 琵琶湖よりも大きな湖――対岸はここからだと見えない。


「コーマ、あそこよ」


 ルシルが指さす方向。

 湖岸に、ひとりの緑色の髪の女性が立っていた。

 後ろ姿のため、年齢はわからないが、靴は履いておらず、素足が見える。素足を見る限りだと、そう年はいっていない、若い女性のように見えた。


 ちょうどいいと、俺はその女性を診察スキルで確認した。


【HP120/120 MP39800000/821 操作】


 ……なんだ、これは。

 状態異常が操作になっているのはわかる。

 だが、MPがよくわからない。

 最大MPを現在MPが大きく上回っている。


「ルシル、最大MPを現在MPが大きく上回ることってあるのか?」

「そうね、一時的に現在MPを大きく増やすことができたなら、それもありえるわ。コーマが力の妙薬で力を底上げしているみたいな感じでね」

「なるほど、それならありるのか。最大MP3980万って、化け物だな」

「私は最盛期のMPは億単位だったわよ?」

「……マジか」


 俺はこっそり自分のステータスを確認する。

 7万だった。

 ベリアルと戦ったときは1万を超えたくらいだったから、7倍近くまで成長しているのだが……そういえば、俺の部下のウォータースライムのHPって100万を超えているんだよな。


「……数値が全てじゃないよな。うん。とにかく、HPは大したことないし、状態異常が操作だというのなら、エリクシールで治せばいいわけだ。どんな状態異常でも直せるこの薬でな」


 俺が自分自身に言い聞かせていると、横でクリスが俺の腕を掴み、引っ張った。


「コーマさん、あれ……」

「あれって……うぁ」


 クリスが指さしたのは、そして俺が見たのは、湖面だった。

 だが、その湖面が、まるで渦潮のように渦を巻いていく。鳴門海峡の渦潮の数百倍の規模のその渦の中心から竜巻が現れ、水を吸い上げていく。

 水柱を作り出した竜巻の上部が赤く光った。


 その姿は――まるで水のドラゴンだ。

 そして、それは間違いではなかった。


【HP8900/8900 MP2000/2000】


 存在したのだ、HPとMPが。

 そして、その水竜を作り出した女性――ウィンディアがこちらを向く。

 彼女は笑顔で立っていた。

 緑色のローブを纏った、二十歳手前の綺麗な女性が立っていた。

 その視線の先には、俺達がいる。

 彼女はすでに俺達の存在に気付いていたのだ。


「まぁ、火竜ファイヤードラゴンでここまで来た時点でそりゃ気付かれてるわね」


 ルシルが言った。

 いやぁ、もしかしたらっていう可能性も考えたんだけどさ。


「よくいらっしゃいました、皆さま。風の神子の名において、心から歓迎します」

「へぇ、歓迎してくれるってそこの水竜でか? おいおい、いくらなんでもその水竜の相手なんて役不足じゃないか?」

「そうですか? ではこうしましょう」


 ウィンディアがそう言うと同時に、背後の湖から、さらに七体、合計八体の水竜が現れ、一気に俺に襲い掛かってきた。

 やば、さすがに数が多い。

 ルシルを守りながら戦うには――


氷結領域アイスゾーン!』


 俺が振り返ると、そこにいたのは女子中学生くらいの年齢の見た目にまで成長したルシルだった。

 前を向き直すと、湖全体の表面が完全に凍っていて、水竜もまた完全に凍り付いて動けなくなっていた。


 ルシルはウィンディアに指差して言った。


「この私の相手をしようだなんて、水竜には役不足だったんじゃないかしら?」


 ルシルは自信満々に微笑んで尋ねた。

 役不足の言葉の意味を取り違えていなければカッコいいのにな。

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