残る謎
~前回のあらすじ~
偽アクアマリンがいなくなったが――
戦いが終わった……とは思えなかった。
結局、偽アクアマリンの正体もわからず、水の宝玉もどこにあるのかわからない。
「全てが終わったとは思えない――くそっ、なんだ、このもやもや感は……」
俺は天井を見上げながら、罅の入った壁に万能粘度を入れて、仕上げゴテで均していきつつ、そんなことを呟いた。
スライム達は全員去った。
偽物のアクアマリンと本物のアクアマリンが入れ替わっていたことは誰も知らないし、今は言う訳にはいかない。
水の宝玉が手元にない以上、こちらのアクアマリンが本物である証明ができないからだ。
着ている服が変わって、さらにボロボロになっていたり、やつれたりしていることは、魔法を使ってスライムを追い払った余波だと言い切った。
さらに、ボロが出そうになったら、力を使いすぎた影響で記憶が曖昧になっていることにしてもらった。
俺達の扱いは客人扱いになり、神殿への滞在が許可された。
ついでに、クリスに気絶させられた兵たちに関しては、緊急事態のため仕方がなかったということになり、俺が慰謝料を支払うことで解決。
冒険者への報酬名目で、スライムの核も通常の倍の価格で俺が全部買い取り、アイテムバッグの中に入れた。
唯一被害があった神殿も俺が修繕作業をしているので問題ない。
問題があるとすれば、これだ。
風の宝玉。
これをどう扱えばいいのか。
「やっぱり、この中は風の精霊がいるのか?」
「そうでしょうね」
神殿の修繕を終えた俺は、俺達に割り当てられた部屋で風の宝玉を見ていた。
ちなみに、この部屋、何故か俺とクリスが同室だったりする。
クリスの奴、チラチラと俺のことを見てくるので、少しウザイと思っている。
襲わないから安心しろと言ったら、「そんな心配なんてしてませんよ!」と怒られた。理不尽だ。
そして、クリスの肩に乗っているサランがじっと風の宝玉を見ていた。
「クリス、サランを乗せて熱くないのか? 精霊とはいえ炎の塊だろ?」
「大丈夫ですよ。全然熱くありません」
クリスがサランを指先で触って言う。
『ふふん、僕くらいともなると、断熱の結界を張ることもできるよ。それと、この中には確かに風の精霊――ルフラがいるよ。といっても、神子がいないんじゃ姿を現すことどころか力の一部すら使うことができない状態だけどね』
「クリスじゃ無理か?」
『無理だよ。彼女は火の神子としての力はあるけど、風の神子としての才能は全く別の話――というより、火の神子としての力が強いから、他の人より風の精霊との親和性は低いよ』
「そうか……まぁ、最初からクリスには期待していなかったんだけどな」
クリスが部屋の隅でいじけるが、無視だ。こいつ、最近は特に情緒不安定気味だから、構いすぎたらクリスのためにならない。
「風の神子の資質のある人間って誰かいるかな? 風と言えば素早いやつら――シグレやサクヤは速いけど、日本人の子孫だからなぁ……」
『風と速度は関係ないよ。風の神子の資質は自由にある。風は何にも捕らわれない、自由な人がなれるんだ』
「なるほど、常に多額の借金に捕らわれているクリスには無理な話だな」
「全部コーマさんのせいじゃないですか?」
「俺のせいだって?」
俺はクリスの前に座り、その口を引っ張った。
「俺は一度たりとも借金を無理強いさせたつもりはないぞ? 全部、お前に頼まれて仕方なくお金を貸してやったんだ。しかも、かなりの額免除してやってるのに、いったいどの口が言うんだ?」
「すひあせんでした」
「わかればいいんだ、わかれば。それで、サラン、水の宝玉の場所はわからないか? 前に土の宝玉の位置をかなり正確に言い当てただろ?」
『無理だよ。あの時は土の宝玉がある種、暴走状態だったからわかっただけで、普段は流石にわからないよ』
やっぱり無理か。
『じゃあ、クリス。僕は寝てるから、何かあったら呼んでね』
そう言うと、サランは炎の剣の鞘の中に入っていった。
「あ、コーマさん。サランが言っていたんですけど、剣の中にいるときは眠っている状態だから、外で何があってもわからないそうです。だから、魔王の話とかしても大丈夫ですよ」
「ん? あぁ、そうか」
そこまで全く意識がまわっていなかった。先にクリスに指摘されるのは少し恥ずかしいな。
「コーマさん、少し失礼なことを思っていませんか?」
「いや、思ってないよ。それより、風の宝玉が2個あって、こっちが予備ってことはないよな?」
「風車の村に風が来なかったのも、風の宝玉がここにあるからでしょうから」
「だよな……ウィンディアは、風の宝玉を盗まれ、人質に取られて、偽アクアマリンの言いなりになっていた――とかなら一番わかりやすいんだが」
とりあえず、もう一度行ってみるしかないか。
ウィンドポーンへ。
それと、アクアマリンには風以外の四カ国と同盟を結んでもらおう。
これで、西大陸統一まで残り一カ国だ。
それらを言うために、俺はアクアマリンの部屋に行き、彼女に声をかけたのだが―――
「コーマ様、そういうことでしたら、私もウィンドポーンへ連れて行ってください」
アクアマリンが頭を下げて、俺にそう頼んできた。
異世界でアイテムコレクター1巻の
大まかな発売日
イラストレーター情報
など、本日の活動報告にてアップさせてもらっています。




