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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode11 塔の迷宮・前編

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スライムが持ってきたもの

~前回のあらすじ~

スライムが、スライムが来るよー

「なんてことするんですか、コーマさん! 町が大混乱じゃないですか!」

「……目が見えるようになってから、私が見るのは変なものばかりなので……あの、町のひとに危害を加えるのはやめてほしいんですが」


 アクアポリスの街の中を逃げ惑う人々を見て、クリスが叫び、アクアマリンは泣きそうになっていた。

 アクアマリンは不幸特性があるな、きっと。第二のクリスとなる素質がありそうだ。

 でもまぁ、自分の国が大量のスライムに襲われるのを見て笑っていられる人などいないか。


「大丈夫だ。スライムたちには、人には危害を加えないように言っているから。スライムにはこのくらいの大きさの球体状のものを集めてくるように頼んでいるからな」


 と、俺は手で大きさを示す。

 アイテムバッグから双眼鏡を取り出し、ひとつをグルースに渡して、俺は町の様子を見た。

 剣と盾のマークの看板、あれは冒険者ギルドか。

 アクアポリスはこの大陸で四ヶ所しかない冒険者ギルドを有する町だ。その施設の中から、戦い慣れていそうな剣士風の男達が施設から飛び出して、スライムの討伐を開始する。だが、そんなので追いつかない。

 何故なら、俺の横の岩陰で、俺によって作り出された大天使アークエンジェルスライム二十体が、スライムの量産にとりかかっている。


「やられているな、スライムたち」


 グルースは涙を流しながらそう言った。


「感動した。種を残すために自らの命さえも投げ打つとは。かつて神は仰った。友のために命を捨てるよりも大きな愛は存在しないと。だが、スライムは友ではなくその種を残すために――主君に尽くし、主君の命に従い、その命を散らしているというのか」

「人を悪鬼羅刹みたいに言うな。一応言っておくが、スライムは死んでもその核がある限り生きているんだよ。スライムの核は食材としてや薬の材料としても使われるから、捨てられることなくどこかに保存されるだろ? 全部終わったら、買い取らせてもらうさ……って、おい、スライムの突然変異が出現したぞ」


 増えすぎたスライムが融合をはじめ、色の違うスライムが生まれた。

 普通は青色なのに、黒いスライムが生まれた。突然変異になっても人を襲わないという俺との約束は守っているようだ。

 黒いスライムは剣で斬られたと思ったら、なんとその剣を錆びさせて使い物にならなくなった。腐食系のスライムか。

 それでも、人体には無効らしく、武道家風の男に殴られて吹っ飛んで壁にぶつかり、核を残して消滅した。

 それを見ていた剣士達は、黒いスライムは蹴って倒し、青いスライムは斬って倒すという戦い方に変更。すると、スライムたちは今度は分裂をはじめた。豆粒サイズのスライム達が冒険者の足元を通り抜けるように前に進む。


 だが、冒険者が僅かに稼いだその時間に、今度は国の兵たちが出て来て、スライム討伐に乗り出した。

 訓練された兵たちは統率がとれ、確実にスライムたちの数を減らしていく。

 兵たちが護っている一番大きな神殿――そこに一匹たりともスライムの侵入を許さないという陣形なのだろう。

 そこも目的のひとつであるが、俺の目的はそもそも、水の宝玉であるからな。


 そうこうしているうちに、スライムたちが目的のアイテムを次々と運んできた。

 俺はそれを吟味していく。


「ボール……はまぁ予想の範囲内だな」


 ボールを持ってきたスライムは、俺の後ろに置かれている持ち運び転移陣に入っていく。

 見事に目的のアイテムを持ってきたスライムはもれなく魔王軍の仲間入りだ。

 転移陣の向こうにいるカリーヌがスライムたちに命令をすることになっている。マユ曰く……正確にはマユの被っているウォータースライムの話なのだが、スライムたちにとってカリーヌは、全スライムの姉的存在であり、彼女の部下になるのは最大級の喜びなのだとか。


「これはアンティーク調のランプですね。コーマさん、これもらっていいですか?」

「ダメだ。全部終わったら元の場所に戻すんだからな」

「球体状の地図? なんですか? これ」


 球体状の地図と呼ばれたそれは、軸を中心に回転するように設計されていた。それを見て、俺は驚きを禁じ得ない。


「お、アクアマリン、それは地球儀――いや、ここは地球じゃないか。えっと、星球儀じゃないか。ほとんど未完成だが、大地平面説が主流のこの世の中で球体説を考えている学者がいたんだな」

「あ、そういえば私、前にルシルさんにこの世界の形を見せてもらいましたよ。とても綺麗でした」

「地球は青かった――か。どうやって見たんだ?」

「ルシルさんの転移魔法で、映像送信器をかなり上空に転移させたんです。ルシルさんが言うには、えーせーきどーに乗ったそうなので、いつでも見れますよ」

「ルシルにかかれば人工衛星の打ち上げも安上がりだな」


 俺は未完成の星球儀をくるくる回した。回し過ぎて壊れたらいけないのでそろそろ回すのをやめておく。下手に壊して弁償するのもバカらしいしな。


「私も見てみたいです……あら? これは果物ですね。いっぱい持ってきています」


 アクアマリンがスライムから受け取ったのは、果物なんかじゃなかった。

 そう、果物ではなく、野菜だ。


「スイカじゃないか。そうか、スイカは英語でウォーターメロン、水の都に相応しい野菜だな」


 スライムは三十個の小ぶりなスイカを運んできた。とりあえず、アイテムバッグに入れておく。

 他にも、毛糸玉だったり、丸い石だったり、これは、と思うのもただの水晶球だったりした。

 さらにいえば、完全な丸ではない物まで持ってきた。

 その中には――


「きゃぁぁぁぁぁあっ!」


 アクアマリンが声を上げた。

 それは――人間の頭蓋骨だった。


「なんでこんなものが――町の中に……」


 顔を真っ青にしてガクガク震えるアクアマリン。


「これは、事件の予感がしますね」


 クリスはどこか冷静に言うが、グルースはそれを一目見るなり、


「それは骨格標本ですね。大方、どこかの病院から持ってきたのでしょう」


 と言った。


「そうなのですか……ほっとしました。つくりものなんですね」


 アクアマリンがほっとした様子で恐る恐るその頭蓋骨を持ち上げた。


「つくりものではありません。骨格標本の九割は本物の人骨が使われていますから」


 グルースがそう言うと、アクアマリンは驚いてその両手を上に挙げた。その反動で頭蓋骨は宙に跳び――そのままアクアマリンの頭に衝突。その痛みで彼女は気を失ったようだ。

 一方そのころ、最前線で戦うスライムたちに変化があった。

 スライムたちが水の中に飛び込んでいったのだ。

 そして、水の中を移動して神殿に向かったのだ。

 水で張り巡らされたウォーターポリス。この構造は、本来、敵から攻められた時に壁のような防御の要になるはずなのだが、スライム相手だとその構造は弱点になったようだ。

 結果、スライムたちは兵たちの追撃を振り切り、神殿に入っていき――そして神殿の中から溢れだした。


 大量の水だ。


 そして、その大量の水とともに神殿から現れたのは――俺の横で盛大に気を失っているアクアマリンとうり二つの女性だった。

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