プロローグ
プロローグ
ラビスシティーの真迷宮は、十階層から様々な迷宮へと通じている。溶岩が溢れるような迷宮もあれば、まるで海の中を歩いているかのような迷宮まである。一貫性のない迷宮ではあるが、その構造にはひとつの大きな特徴がある。
すべての迷宮は、地下へ、地下へと通じている。
それは、かつてラビスシティーのあった場所へと逃げのびたゴブリン王が地上に住む人間から逃げるために地下へ、地下へと逃げた名残であると言われている。それは真実であり、そして全てではない。
そもそも、ゴブリン王とその仲間たちが作ったのは十階層までであり、それより下は彼らが作ったものではないのだ。
ある者がゴブリン王の作った迷宮を利用し、さらにその地下へと逃げた。
それが、11階層より下の迷宮の現実だ。
しかし、いったい、誰が、何のために作ったのか?
それを覚えているものはもう残っていない。
あの恐怖を覚えている者はもう誰もいない。
この僕を除いて。
「ぐっ……ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
叫びとともに、起き上がったら、そこは寝室だった。
サイルマル王城の王家の寝室。巨大なベッドの上だった。
「陛下、何事ですか!?」
見張りの近衛が寝室に駆け込んでくる。
「……大丈夫だ。悪い夢を見ただけだ。下がっていろ」
激しい鼓動を抑えようと胸を掴みながら、僕は言った。
その命令を聞き、近衛が部屋を出る。
【よう、グリューエル、辛そうじゃないか】
僕の中で、そいつは嬉しそうに笑いながら言った。
かつて僕の名――ベリアルを与えて自由にさせていた影。そいつを取り込んでもう数ヶ月になる。だが、この影の気配が消えてなくなることはなかった。
【にしても、お前に取り込んでもらえて、いろいろと面白いことがわかった。なんだよ、あの軍勢。ぜひ俺様が戦ってみたいな。なぁ、グリューエル、俺を出してくれよ】
煩い。もう、影を外に出すつもりはもうない。計画は最終段階に入っている。あのコーマも無事に見つかったようだしな。予定外の行動をする奴をこれ以上外に出していられない。
ラビスシティーに戻って来たのは僕の目が確認している。
【そうか、コーマの奴も戻って来たのか。もう一度戦いてぇな】
影は再度大きく笑う。この笑い声も今では僕の頭痛の種だ。はやくこいつを消さないといけない。もっとも、こいつを消そうと焦ったせいで、力を大きく消耗し、本来は必要ではないはずの睡眠をとって悪夢を見てしまったわけだが。
影の意識の残滓は、こびりつくように僕の中に残っているが、力があるわけではない。僕の意識が乗っ取られることはまずない。
僕は心の中の影に語り掛けるように言った。
「言ったはずだ。コーマは僕の計画に必要だからな。奴と戦うわけにはいかない。それに、僕が夢でみた軍勢とも戦いたいと言っていたな」
この声は、影に向けているようで、実は誰にも向けていない。
自分に言い聞かせるように言ったに過ぎない。
「あの中の一体でもやってきたら、今の僕が勝てるかどうか」




