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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode Extra01 短編集

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今日は〇〇〇の日

「デートをしよう!」

「え? えぇぇぇぇぇぇっ!」


 俺の宣言に、コメットちゃんは仰天したようだ。

 ううん、俺の言い方が悪かったのか?

 別に驚くことでもないと思うんだが。


「いつもコメットちゃんって地下深くで頑張ってくれているからさ、ふたりっきりでお出かけしようって意味なんだけど」

「あぁ、そういうことですか。安心し……ませんよ。やっぱりデートですよね?」


 うん、ここまで取り乱すコメットちゃんははじめて見た気がする。

 新鮮でいいなぁ。


「ビル・ブランデの博物館に行きたいんだけどさ、ひとりでいくのもつまらないし、今、博物館なのにカップル割引きってやってるらしいんだよ」

「あの、クリスさんやマユさんやルシル様では?」

「クリスは実家の仕事。マユはあの通り、ウォータースライムがないと喋れないし、ルシルは出不精だからな。転移陣だけは作ってもらうつもりだけどな」

「私でいいんですか?」

「コメットちゃんがいいんだよ」


 俺がそう言うと、コメットちゃんは笑顔で頷いた。


「お供させていただきます」


   ※※※


 【本日休館日】


   ※※※


「ビル・ブランデの空気ってラビスシティーより美味しいですね」

「……そうだね」

「見てください、コーマ様、あそこで羊の群れが牧羊犬に追われていますよ」

「……すごいね」

「もう、コーマ様、元気出してくださいよ。休館日なのはコーマ様のせいじゃないじゃないですか」


 そうは言われても落ち込むよ。

 普段は言わないデートなんて言葉を使って、コメットちゃんを連れだして向かった先の博物館が休館日なんて。


「あの、コーマ様。どうせなら休館日を楽しみませんか?」

「休館日を楽しむ?」

「はい。知ってますか? コーマ様、あっちのお店のマトンシチュー、とても美味しいそうなんですよ。博物館が開いている日は他の町から来る人も多く訪れて、酷いときなんて三時間待ちなんだそうですよ。でも、休館日の時だけは空いてるんです」

「へぇ、じゃあそこに行ってみようか」

「はい」


 コメットちゃんが笑顔で頷いたので、俺はその店に向かった。

 博物館から歩いて三分ほどの場所にあるその店は、それでも多くの客で賑わっていた。

 テーブルが五つとカウンターがある店内だが、テーブルは満席だったため、俺とコメットちゃんはカウンターに座った。

 設計ミスなのか、それとも予定通りなのか、カウンターの一部分が柱になっていて、そこには誰も座ることができないので、俺達が座っている場所はカウンター席にもかかわらずふたり席になっていた。

 狭いので、少し肘を横にしたら当たってしまうような距離。


「コーマ様、お水飲みます?」

「あ……うん」


 いつの間にか空になっていたグラスに、コメットちゃんが水を注いでくれた。

 このあたりは水が豊富のため(某聖女様のおかげだという噂を聞いたが、この町では俺は何もしていない)、水は飲み放題だ。

 暫くして、マトンシチューが運ばれてきた。

 ビーフシチューの羊肉版かと思ったら、そうではなく、焼いた羊肉が入っているクリームシチューのようなものだった。


「美味しいな……小麦粉と羊乳を使っているのか」

「隠し味に白ワインを使っていますね。多めに使うことで小麦粉の粉っぽさを消しているようです」

「あぁ、でも惜しいな。どうせならこの羊肉を羊ベーコンにしたらもっと美味しそうだよな」

「あと、前にコーマ様が作って下さった昆布茶の粉末を入れたら美味しくなりますよ」


 俺達が話していると、店員が笑いながらやってきた。


「ははは、昆布茶は海が遠いから無理だが、羊ベーコンか……今度試させてもらうよ。ほら、これ情報提供のサービスだ」


 30歳くらいのシェフは、そう言って俺達の前に置いたのは、フランスパンのような固いパンだった。シチューにつけて食べると、とても美味しかった。

 その後は、博物館に併設された植物園は、博物館と休みが違うとコメットちゃんが教えてくれたので、そこに行った。

 植物園といっても、もちろんガラス張りの建物だとかビニールハウスではなく、花壇がいっぱいある庭園のようなものだ。


「うぉ、この花レア度【★★★★】だ。売ってくれないかな。あ、でも派生アイテムは全部見たことのあるアイテムばっかりだな」

「見てください、コーマ様、このふたつの花、手を繋いでいるように見えますよ」

「おぉ、マジだ。へぇ、面白いな」


 俺達は植物園を結構楽しんだ。

 ところで、


「なぁ、コメットちゃん……この町に来たことがあるの?」

「いえ、ありませんよ」

「じゃあ、なんでマトンシチューの店や植物園のことを知っているの?」

「えっと、調べてました」


 コメットちゃんは言った。なんでも、俺はこの博物館にいつか行くだろうからと、前に本を大量に買った時、この町のガイドブックのようなものもあってそれを熟読したんだそうだ。

 これじゃ、本当に逆だな。

 俺がコメットちゃんをエスコートするはずだったのにな。


「あの、コーマ様。なんでデートと仰ったんですか?」

「え?」

「いつものコーマ様なら、今日のような外出は、お出かけと仰るはずです」

「あぁ……ええと、俺から言うのも結構恥ずかしいんだが……コメットちゃんの気持ちにちゃんと答えないといけないなって思ってさ」

「……私の気持ちに? ですか?」

「俺にとってコメットちゃんは家族だと思っているんだけどさ、でもそのままなし崩し的にコメットちゃんの気持ちを無視するのはダメだと思って。なんというか、ちゃんと家族になりたいというか、その前段階というか」

「…………ふふ……ふふふふふ。なんですか、それ」


 コメットちゃんは笑って言った。


「コーマ様が私の事を家族と思ってくださっていることは知っていますし、恐れ多いことですが、私もそう思っています。なし崩しと仰いますが、きっかけとかそういうものを関係なく一緒にいて、それが自然だと感じられるから家族なんじゃないですか?」

「……仰る通りです」


 参ったな。今日はコメットちゃんに言われっぱなしだな。


「でもコーマ様、今日のデートはとても楽しかったです。また連れて行ってくださいね」

「あぁ、今度はちゃんと準備して最高のデートを――」

「ダメですよ。先に、マユさんとデートしてあげないと。マユさん、コーマ様に忘れられているんじゃないかっていつも不安になっているんですから」

「……でも、マユって俺のことを好きかどうかわからないだろ?」

「……コーマ様、それをマユさんに言ったら絶対にダメですよ」

5月13日は愛犬の日です。

もしかしたら、いつの間にかこの話が消えてるかも。

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