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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode Extra01 短編集

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孤児院での日常

「なぁ、コーマ兄ちゃん、また仕事さぼってるのかよ」


 久しぶりに孤児院を訪れた俺に飛んできたのは、そんな辛辣な声だった。

 もちろん、そんなことを言うのはカイルだ。


「うるせぇ」


 金色の髪をぐしゃぐしゃにしてやった。


「さぼってるんじゃないって。ほら、こうして草むしりをしてるだろ?」

「うわ、コーマ兄ちゃん、土のついた手で髪に触んなよ!」


 実はこの教会で採れる草が、マヒアヒ草という、そのままだとただの雑草だが加工することで、飲み物に溶かすと炭酸飲料になる薬ができる。

 今、俺がしているのは、コーラの完全再現作業だ。

 ただ、どうやってもあの会社のコーラだけが再現できず、こうしてたまに教会に来ては草むしりをしているわけだ。

 もちろん、代金はしっかりと払っている。メイベルが。

 多額の寄付をしていて、今は教会の改修工事も行われているだけでなく、週に一度臨時教師を雇い、孤児たちにも教育を施しているそうだ。


 草むしりを終えた時、修道服を着た50歳くらいの女性がこちらに近付いてきた。

 この孤児院の責任者であり、教会の管理者である修道女シスターだ。


「コーマさん、ありがとうございます」


 彼女は頭を下げた。


「もしよろしければ、ハッカ茶でも飲んでいきませんか?」

「あ、すみません、ご馳走になります」

「ふふふ、このハーブもコーマさんが持ってきたものですよ」


 そう言えばそうだった。

 子供の舌にはかなり不評で余っているってカイルが言っていた。

「俺は大人だからハッカ茶の味もわかるけどな」

 と自慢げに語っていたので、周りにいた子供たちに、「おおい、リンゴジュースあるけどみんな飲むか? あ、カイルはハッカ茶のほうがいいよな?」と言ったら、本気で拗ねていた時、俺は大人げないなと思った。


 シスターがお茶を淹れにいったので、俺はその前に、アイテムクリエイトでマヒアヒ草を薬へと作り替えた。

 白い粉が七袋になった。

 麻袋の中に入っている白い粉を見て、この麻袋はどこから生まれたんだ? という疑問はもう感じなくなっていた。慣れって恐ろしいな。


「コーマさん、お茶が入りましたよ」

「あ、はい」


 立ち上がり、俺は一瞬麻袋の山を見た。

 まぁ、危ない薬じゃないからいいか。

 食べても問題ないし、料理に使っても感触がおかしくなるだけだ。

 前にこの粉をパンに混ぜたことがあったが、新食感の弾けるパンができて、それはそれで美味しかったからな。


 後でアイテムバッグに入れると決め、俺はハッカ茶を頂くべく、孤児院の中へと向かった。

 もちろん、ただご馳走になるだけだと悪いので、アイテムバッグの中に入れてあった数十種類のプチケーキを提供したところ、子供たちとの取り合い勝負になった。

 もちろん、反応の神薬を大量に飲んでいる俺に死角はない。

 効率的に食べたいものを奪って食べ、子供たちが抗議の意味を込めて後ろからのしかかってきた。

 もちろん、力の神薬を大量に飲んでいる俺がその程度で参るはずはない。

 うん、我ながら大人げないが、勝負には大人も子供もない。


 これも子供達の成長へとつながる。

 ……悪い、やっぱり大きなイチゴが乗っているショートケーキを食べたのが悪かったようだ。

 子供達の目が怖い。


「よし、みんな! 今日の夕食は俺が最高に旨いものを作ってやる! デザート付きだ!」


 俺がそう言うと、子供達が笑顔になって跳ね上がった。

 前に一度子供達に料理を作ってやったとき、また作ってと言われていて結局これまで作っていなかったからな。ちょうどいい機会だ。


「すみません、コーマさん。ケーキだけでなく夕食まで用意していただくなんて……」

「気にしないでください、前に子供達とした約束を守っているだけですよ」

「そうそう、約束を守るのは大事だよな、コーマ兄ちゃん」


 カイルがそう言って俺の背中を叩いた。


「カイル、コーマさんに失礼ですよ。それより、井戸にさらし粉は入れたんですか?」

「すぐやってきまぁす!」


 カイルはそう言って、部屋を出ていった。


   ※※※


 その日、俺は孤児院で、クリスも呼んで美味しく料理を食べ、炭酸粉を持って帰った。

 その時、俺は気付かなかった。

 気付くはずが無かった。

 炭酸粉の量が僅かに減っていることに。

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