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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode Extra01 短編集

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タラの修行旅~中編~

 いろいろと謎があった。

 どうしてこの村の獣人はこれほど大きな規模の村を築くことができたのか?

 その理由は、先の宴でみた川魚が原因だとわかっていた。

 その魚がこの洞窟の奥にある地底湖で取れるのだという。

 では、何故そのような湖のある洞窟に他の魔物が近付かないのか?


 その答えが、マイナの言う守り神様だった。


 といっても、本物の神ではない。

 ヒュドラという名の三つ首の竜だ。

 そのヒュドラが湖の中の浮島に住んでいるため、他の魔物はこの洞窟に近付かないのだという。


 それなら、何故この村の獣人はヒュドラに襲われないのか?

 その理由が贄だった。


 一年に一度、ヒュドラに生贄を捧げることで、獣人達はヒュドラにこの地に住むことを許されるだけでなく、湖での漁を許されるのだという。

 ただし、湖で獲れた魚の半分はヒュドラに捧げているそうだが。


「贄となった者はどうなるのだ?」

「守り神様の血肉となります」


 某の問いに、マイナは当然のように答えた。

 つまりは食べられるということだ。


 某は考えた。

 この村の事情は思ったより複雑だ。

 ヒュドラがただの魔物だとするのなら、退治すれば全てが解決する。

 だが、今回はそんな単純な話ではない。

 ヒュドラを討伐すれば、この洞窟に魔物が押し寄せ、獣人達は住む場所を失う。


 解決方法がないわけではない。

 かつて主がしたことを話で聞いた。

 それをヒントに手段は思いついた。

 だが、某にそれが可能かどうか。

 否、某が考えるのは、それをするかどうかだ。


「……マイナ殿、某に贄の役を代わってもらえないか? もしくはその守り神の棲む浮島まで同行させていただけぬか?」

「お気持ちだけいただきます。タラ様にそのようなことをさせるわけにはいきませんし、なにより守り神様が望まれるのは純潔の乙女です。タラ様が生贄になることはできません。守り神様は男の方が浮島に上がるのを許しませんから」

「そうか」


 純潔な乙女しか生贄になれないのか。

 某はリュックサックの中に入れてあるアイテムバッグを取り出した。


   ※※※


 翌朝。


「タラ様、その御姿はいったい」

「……秘薬を用いてな」


 現在の某は、女性の姿になっていた。

 かつて主が作った性別反転薬。

 それを某も預かっている。

 主が言うには、「間違えて飲んでしまった後でアイテムバッグを無くしてしまったら、元に戻れなくなるかもしれないから」ということで、某を含めコメットやルシル様のアイテムバッグの中にも同様の物が入っている。

 この度、そのうちの一本を使わせてもらった。

 もちろん、戻るための薬はまだ残っている。


 この姿は好まない。

 胸が邪魔で仕方ないからだ。

 しかも、この姿を見せたらコメットが怒るから困る。


「この姿なら、付き人として共に行かせてもらえるか?」

「……長老に相談してみます……あのタラ様?」

「何だ?」

「その秘薬には胸が大きくなる効果が……いえ、もう今の私には関係ありませんね」


 女という生き物は全員こうなのだろうか?

 自分の胸を撫でて落ち込むようにいうマイナを見て、某は思った。


   ※※※


 結論から言うと、某が完全に女であると認められ、付き人としてマイナを浮島まで送ることを許可された。

 どのようにして某が女であるか確かめたかはここで語る予定はない。


 地底湖まで歩いていく。

 某は女性らしい格好をするように言われ、絹のドレスを纏っている。

 このドレスというものは動きやすいのはいいのだが、足元がスースーする。好きになれそうにない。

 途中、篭に山のように入った魚を持っている獣人の若者とすれ違った。

 あれだけの魚を毎日獲れるのだとすれば、たしかに100人規模の村でも暮らしていけるだろう。


 途中でキノコを栽培している部屋もあった。


「これは……見事な……」


 某は少し感動した。

 地底湖の中に輝く光――すべて苔によるものだろう。だが、その光量は洞窟内にあった苔の比ではないほど輝いている。

 その光に照らされながら、魚群が湖面付近を遊泳していた。

 網を用意すれば簡単に捕まえられるだろう。


「守り神様の魔力が水に溶け込み、苔を育てています。その苔を食べて魚が暮らしています。全ては守り神様の恵みなのです」

「……そうか」


 某は湖の中央にある浮島を見た。

 そこにいたのは、三つ首の竜――ヒュドラだった。


 ふたつの首は眠り、ひとつの首が黙々と魚を食べていた。

 そして、湖岸に浮かぶ小船にマイナはゆっくりと乗り込む。

 そんな彼女を見て、某はすでに決めていた覚悟をさらに強めた。


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