表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode Extra01 短編集

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

348/742

魔王退治 ~後編~

 何故か巨大なヒヨコの上にルシルがいた。

「コーマ、どうしたの?」

「じゃあぁぁらくしゃぁぁぁぁっ!」

 意味の分からない掛け声とともに、俺はアイテムバッグの中から煙玉を取り出し、それを地面へと投げつけた。

 あたり一面が一瞬のうちに煙に覆われた。

「こほっ、こほっ」

「何すんだい、コーマ!」

 シーがむせてスーが叫ぶが、俺はそれどころじゃない。

 目の前の巨大なヒヨコの影を見つけ、それを抱えて、全力で走った。

 巨大なヒヨコはその大きさの割には軽かったが、それでも35キロはあった。ルシルを合わせて70キロ強はある重さだった。

「キャァァァァっ!」

 ルシルの叫び声が森に響き渡った。



   ※※※


「何するのよ、コーマ! 目に煙が入っちゃったじゃない!」

「お前こそ何してるんだ! 魔王城にいたんじゃないのかよっ!」


 巨大ヒヨコの上でこほこほと咳をしているルシル。

 彼女が自主的に迷宮の外に出ることにも驚きだが、こんなところにいたのも驚いた。


「ほら、メディナの封印を解いたときに、そういえば他にも部下を封印していたのを思い出したのよ。このピーちゃんもその一匹なのよ」


 ピーちゃんと呼ばれた巨大なヒヨコは、その黄色い羽を上げた。

 こっちの言葉がわかるんだろうか?


「なぁ、ルシル。そのピーちゃんって、何て名前の鳥なんだ?」

「なんだったかしら? ヒヨコだったかしら?」

「それは絶対に違う……と言い難いんだが」


 うん、大きさを除けばどう見てもヒヨコだもんな。

 でも、大きさはやはり重要だ。

 象よりも大きなヒヨコがいてたまるか。


「もしかして、マザーバードって名前じゃないのか?」

「あぁ、それよ。うん、ピーちゃんはマザーバードね」


 やっぱりそうか。


「俺はこのマザーバードの嘴を取りに来たんだよ。アルティメットポーションで治療してやるから、その嘴をとってもいいか?」

「ピーちゃんの嘴を?」


 ルシルは巨大ヒヨコから降り、じっとその瞳を見つめた。


「……ねぇ、コーマ。コーマの頼みならできる限り聞いてあげたいと思ってるわ。でも、やっぱりピーちゃんは家族なのよ」

「……ルシル」

 そうだよな。

 たとえ、いままでその存在をすっかり忘れていたとはいえ、家族の嘴を傷つけることなんてルシルにできるはずがないよな。

「ルシル、俺が悪か――」

「DXチョコレートパフェ三週間分で手を打つわ」


 家族の嘴は案外安かった。


「その条件で手を打とう」

「わかったわ。ピーちゃん、ちょっと痛いけど我慢して――いたっ、痛い痛い、ちょっとピーちゃん、何をするのよっ! いた、いた!」


 ピーちゃんのつつく攻撃がルシルの頭頂部を二回攻撃し、さらに今度はツインテールの左側を噛んで引っ張った。

 あぁ、やっぱりこっちの言葉を理解しているのか。


「大変、女の子がマザーバードに襲われているわ!」

「……助けないと」


 うわぁ、この非常事態の中、スーとシーが追いついて来た。


「くそっ、こうなったら力づくで嘴を切り取ってやる! 悪いが我慢しろよ!」


 俺はそう言うと、エクスカリバーを構える。

 ピーちゃんはじっとこちらを見つめた……少しびびっているようだ。

 すると、


「ピヨォォォォっ!」


 ピーちゃんは咆哮とともに飛び上がった。

 ピーちゃんが空を飛んだのだ!


「はぁぁぁ!? あの巨体で飛ぶって物理法則を無視してるだろ!」


 しかも、ルシルのツインテールを咥えたままだ。

 つまりはルシルも一緒に飛んでいる。


 これじゃ、魔法で攻撃することもできない。

 下手に攻撃したら、ルシルがそのまま地上に真っ逆さまだ。

 やはり、直接あの嘴を斬りおとして、その手で助けるしかない。


 と思ったら、


「こんの、バカ鳥ぃぃぃっ!」


 突如、ルシルから力が溢れて来た。


「コーマ、気のせいかもしれないが、捕まっているあの子、少し大きくなってない?」

「……成長期?」


 スーとシーが疑問を口にする。

 気のせいじゃない。

 ルシルが魔力を高めて一時的に成長したのだ。

 そして、


 巨大な爆炎がピーちゃんを包み込んだ。


 落ちてくるルシルを受け止め、「他人のふりな」と囁くように言った。

 ルシルは黙って頷き、


「どこのどなたか存じませんが、助けてくださりありがとうございます」


 とルシルは俺達三人に頭を下げた。

 うん、なかなかいい演技ではあるが、


「助けたっていうか」

「……勝手に助かっただけ」


 スーとシーが言った。

 だよな。

 マザーバードを倒したのはルシルだし。


「きっと、あのマザーバードも天国で幸せになることでしょう」


 空ではまだ炎の玉がピーちゃんを飲み込んでいる。

 容赦ないな、こいつ。

 ……生きていたら治療してやるか。


 そう思った時、炎が沈静化し、そして俺達は今度こそ言葉を失った。

 ヒヨコだったはずのピーちゃんの姿はスリムボディーへと生まれ変わり、細い体に炎の両翼を持つ姿へと生まれ変わっていた。

 その姿はどこからどう見ても――


「え……うそ、フェニックス?」


 ルシルが呟いた。

 そう、その姿はどう見ても不死鳥、火の鳥、フェニックスだった。


 ピーちゃんは生まれ変わった姿を俺達に見せると、そのまま背を向けて飛び去った。

 その飛び去る姿はまるで一枚の絵のようにも見えた。


「……世界って広いわね」

「……だな」


 ルシルのつぶやきに、俺は頷いた。

 そして、


「なぁ、コーマ。あの火を纏った鳥が飛び去ったせいで、あちこち木が燃え始めてるわよ」

「……このままでは大火事」


 …………はぁ。


「じゃあぁぁらくしゃぁぁぁぁっ!」


 俺はアイテムバッグからウォーターボムを取り出し、空に放り投げた。

 巨大な水球が空に現れ、多くの木々をなぎ倒し、大さな池が作れるくらいの水が地上に溢れた。

 こうして、森の大火事は防げたが、結局、スーとシーの仕事は失敗で終わった。

もはや魔王退治でもなんでもない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ