闇夜なのにサングラス
~前回のあらすじ~
見回りをすることになった。
「町を守る仕事って、勇者らしいですね、コーマさん」
「どちらかといえば警備員っぽいぞ、クリス」
夜の町を、俺とクリス、二人で歩いていた。
大通りは街灯がある。魔石の光だ。
だが、一本脇道に入ると、そこは闇が広がる世界。
「ほら、クリス、これを付けろ」
「でましたね、コーマさんの眼鏡シリーズ」
「心の声が漏れ漏れだぞ。ダサイとかいうな」
とはいえ、今回は流石に恥ずかしい。
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暗視黒眼鏡【魔道具】 レア:★★★
暗い場所も良く見えるサングラス。
太陽のない場所で使うサングラス。
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夜にサングラス。自分を有名人だと勘違いしている芸能人か!?
まぁ、クリスはいまや勇者様、有名人なんだけどさ。
「あ、でも凄いですね。夜でもよく見えます」
「あぁ、普通の暗視ゴーグルと違って、急に明るいものを見て『目が! 目がぁぁぁっ!』ってなることもないしな」
「なんですか? それ」
「いや、こっちの(世界の)話だ」
アニメネタは言っていて虚しくなるな。
わかってくれる人はこの世界には誰もいないんだから。
「……本当によく見えますね」
「とはいえ、昼間にサングラスをしているくらいには暗いんだけどな」
もっと明るいかと思ったんだけどな。
そこまで良いアイテムではないらしい。
クリスは見た目は外人女優みたいな美形だから、サングラスがとてもよく似合う。
それに比べ、俺のような優男は、ヤクザにも見られないだろうなぁ。
よくて、高校デビューに失敗した学生か。
ちなみに、クリスも俺も冒険者ギルドの臨時職員である証として、白色の腕章をつけている。
前、ジョーカーが付けていたものの色違いだ。
「まぁ、見回りはするけど、暫くは本当に歩いて回るだけだな」
「冒険者ギルドが秘密兵器を投入するそうですからね。犯人の居場所がわかったら通信イヤリングで連絡が来るそうです。コーマさんから貰ったものよりも高いものみたいですよ」
俺の耳に付けてるイヤリングは銀でできてるが、クリスがギルドから受け取った通信イヤリングは金でできている。
細かな違いだが、それだけで出所が同じだと思わなくなってくれる。まぁ、普通はそれでも勘付きそうなんだけどな。
「壊すなよ、弁償できないぞ」
「壊しませんよ。コーマさんから貰ったものだって大切につけているじゃないですか」
「そうか。ほら、健康ドリンクパート2。飲んでおけ」
「あ、久しぶりですね」
クリスは俺から黄色い液体の入った瓶を受け取り、飲み干した。
ちなみに、中身は反応の神薬。風の騎士団を全滅させた奴だからな。
備えあれば憂いなしだ。
「これ、あんまりおいしくな……あ、でも癖になるかも」
「お、クリスもわかるか? 確かに癖になる味だよな」
「はい。もう一本もらっていいですか?」
「ダメだ、一日一本だ」
「えぇぇ」
そんな会話をしながら、俺達は町の中を歩いていった。
とはいえ、平和なものだ。
酔っ払いが道端で寝ているのを見つけたが、それ以外は誰もいない。
勇者試験のころは祭りのように賑やかだったんだがなぁ。
不動産屋も宝石商も閉まっている。まぁ、夜も12時を超えたし、当然だとは思うが。
『定時報告、異常は見つからないわ。フリーマーケットに空き巣が一人入ったから迷宮に転移しておいたわよ』
ルシルから報告が入る。
今回はルシルにも一緒に映像受信器で町中を見てもらっている。
『それにしても、これが人間の町なんだ。今度一緒に連れて行ってよ』
と楽しそうに会話してくるが、俺は通信をオフにした。
「そういえば、この見回りは誰が参加してるんだ?」
「スーさんと、シーさんが参加してます。ギルドが内密に賞金をかけたの。あの二人はもともと賞金稼ぎでしたから」
「ちなみに、賞金っていくらなんだ?」
「金貨10枚って言っていました。生死を問わずです」
生死を問わず……デッドオアアライブ。
それは、おそらく破格の報酬なのだろうな。
だが、相手は風の騎士団を倒している。その強さは未知数。
「クリス、アイテムバッグにポーションと力の妙薬を入れておけ。いざとなったら使うんだぞ」
「ぶるぶる……コーマさん、優しいですね」
「だから身震いするな!」
俺は優しい人間だって言ってるだろ。
「それだけ今回はやばいかもしれないってことだよ」
クリスにアルティメットポーションを三本と力の妙薬を渡しておく。
俺の希望とすれば、犯人は通り魔ではなく、某国に雇われた暗殺者で、風の騎士団を殺した後はこの国を去っている。
なんて展開を希望するが。
「でも、殺し屋がいても今日は休業日かもな。雨も降りそうだし」
先ほどまで晴れていたのに、今は空に厚い雲が覆っていて、月も星も隠している。
本当に雨が降りそうだ。
レインコートと傘は用意してるが、クリスには諦めて帰ってほしいな。
「コーマさん、もしよかったら先に帰りますか?」
「クリス……」
なんて優しい勇者だ。
そんなこと言われたら、俺は――
「よし、帰るわ」
「あぁ、そこは、『クリスを置いて帰れるか』くらい言ってくださいよ! 私も一人じゃ怖いんですから!」
「勇者だろ、勇気を持っていけばいいさ」
「勇者でもお化けと殺人鬼は怖いんです」
魔王でもお化けと殺人鬼とルシルの料理は怖いわ。
『コーマ、聞こえる?』
お、噂をしたらルシル。
『えっと、ここは――』
ルシルが何やら言いよどんでいると、クリスの通信装置が反応した。
「はい、クリスティーナです」
二人同時に通信。もしかして
「え? 酒場リポップの裏?」
『C-24番。道をタタミ代わりにしてる男の人が切られてる……っていうより死んでるわね、これ』
「コーマさん、大変です! 酒場の裏で男の人が襲われてます!」
ルシルが言うには、犯人の姿はカメラにぎりぎり映らない位置らしく、男はすでに胴体が真っ二つにされ、さらにぐちゃぐちゃに切られているらしい。
「……西の脇道か」
「はい! 西にある酒場の名前です。スーさんとシーさんが先に向かってます。ユーリさんも急いでいくそうですが、私達のほうが先に到着しそうですね」
「よし、歩いていくか」
「走りますよ」
ぐっ、腹をくくるしかないか。
俺とクリスは力の妙薬を飲み、急いで西へと向かった。
できればスーさんが先に倒しておいてくれたらいいんだけどな。
そう思いながら走って行くと、再びルシルから連絡が入った。
『コーマ! 女の人二人が来たんだけど、ダメ、たぶんやられる』
「マジか……急ぐぞ、クリス! もう少しだ」
俺は速度を上げた。
『あ、犯人の顔が見えた。なんか獣の骨っぽいのを頭にかぶってる』
「いや、俺にも見えたよ……」
脇道にそれると、傷つき倒れるスーさん、シーさん。
もう人かどうかも判別できない、血の海に沈んだ肉塊。
そして、血の滴る剣を握った男――ゴーリキ。
四人の姿を、弱い光を放つ街灯が照らしていた。
~ネタ切れ~
すみません、そろそろあとがきのアイテムについて書くのが辛くなってきたので、アイテム豆知識あとがきは前回で最終回とさせてもらいます。ご了承ください。




