人の夢
~今回から短編が続きます~
魔王城の会議室。
ルシルは俺が作ったエクレアを美味しそうに食べていた。
最近は料理スキルも成長し、普通の作り方でも、かなり美味しい料理を作ることができるようになった。
もちろん、少しでも油断すれば、あまりの美味しさに気絶してしまうほどに美味しい料理になってしまうのだが。
それはともかく、美味しそうにエクレアを食べるルシルを見て、
「そういえば、ルシルって別に食事をする必要も、寝る必要もないんだよな?」
ルシルは大きな口を開けてエクレアを食べようとしていた手を止め、肯定した。
「ええ、そうよ。もちろん、食べた物もエネルギーに変えているから、全くの無駄ってことはないけれどね」
「そうか、食べたものが全部う〇こになるってわけじゃないのか」
「ちょっと! う〇こなんて言わないでよ! 私は大魔王の娘だからう〇こなんて行かないわよ」
お前はアイドルか! とツッコミを入れたいが、確かにルシルがトイレに行ったところを見たことはない。
そういえば、ドラ〇もんもトイレに行かないって設定だったよな。
「なぁ、ルシえもん、質問があるんだが」
「人を某未来から来たロボットアニメの主人公みたいに言わないで」
「お、さすがは俺の世界についてある程度調べただけのことはあるな。でも、そのアニメの主人公はのび〇くんだろ?」
「ドラ〇もんよ。藤〇先生が言うには、ドラ〇もんが主人公で、のび〇くんは副主人公なの」
思わぬトリビア知識を繰り出す。
なんてこった。
俺はずっとのび〇くんが主人公だと思っていた。
ドラ〇もん、のび〇、どちらが主人公かという論争はキノコタケノコ戦争と同様永遠に決着がつかないものだと思っていたのに。でも、作者が言うのなら、ここは素直に引き下がるしかない。
「って、お前、俺の世界についてちょっと調べたにしたら詳しすぎるだろ!」
「そうだ、コーマ、カリアナで小豆を手に入れたって言ってたわよね? どら焼き作ってよ。一度食べてみたかったの」
「……また今度な」
あまりこの話を続けてもなんか疲れるだけのような気がしたので、俺は話を戻すことにした。
「なぁ、ルシえもん、質問があるんだが」
「その呼び方をやめてくれたら質問に答えてあげるわ」
指についたチョコを舐めて、ルシルは言った。
「なぁ、ルシみちゃん、質問があるんだが」
「誰も妹の方にしてなんて頼んでないわよ。で、なに?」
「寝る必要もないってことは、ルシルって夢とかも見たことがないのか?」
「だから言ったでしょ。寝る必要はないって。つまり、寝ようと思ったら寝ることだってできるわよ。その時に夢も見るわ。最近だって、たまに寝てるのよ?」
「へぇ、どんな夢を見たんだ?」
俺が訊ねると、ルシルは憂いの目をして俺に言った。
「コーマ、人の夢と書いて儚いって読むのよ」
「あぁ、そうだな。で、どんな夢なんだ? なぁ、教えてくれよ」
ルシルが説明を渋るなんて珍しいな。
これはきっと恥ずかしい夢に違いない。
そう思い、俺はルシルに執拗に訊ねた。
すると、ルシルは観念したように言った。
「別にどうってことはない夢よ。私とコーマがとりとめのない会話をして、とても楽しそうにして居るだけの夢。それで、コーマが『こういう日常も幸せだな』って言うの」
「そ……そうか……」
それは確かに恥ずかしい。
聞いている俺も恥ずかしくなる。
「うん、それでコーマと、私が作ったケーキを美味しく食べるっていう夢だったわ」
「……そうか……そうか」
人の夢と書いて儚いと読むのって本当だったんだな。
そんなことを再認識した昼下がりだった。
今日からこんな感じの短編が続きます。ご了承ください。




