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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode10 カリアナ

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仲直り計画 その7

~前回のあらすじ~

いよいよ試合がはじまる。

 シグレとサクヤ、ふたりの戦士が舞台に上がり、観客から拍手がわき起こった。

 彼女達は一歩、また一歩と前に進む。


 そして、ふたりがそっと指輪を取り出し、それぞれ左手の薬指にはめた。

 なんで左手薬指なんだよ、と思ったが、そこが一番邪魔にならないからなのだろう。


 ほぼ同時だった。

 ふたりが動いたのは。


 勝負開始の合図など待たずに、ふたりがふたりとも前に跳び、次の瞬間には金属のぶつかる音が響き渡った。


『コーマ様、大変です!』


 マユから念が届く。

 ひどく慌てた声に、俺は後ろを向いた。


『ふたりの心の声が、全く聞こえてきません!』


 なんだとっ!?

 なんで……なんで心が……いや、もしかして。


――マユ、ふたりの心の声が少しでも聞こえたら計画通りに頼む。


 忍とは、漢字で書けばわかる通り、刃の下に心を隠すと書く。

 てっきりそれは、戦いの中では情を持つことなく、例え身内であっても容赦なく殺す。

 そういう意味かと思っていた。

 でも、本当に、戦いの中では、心をその刃の下に隠して戦うっていうのか?


 一撃目の打ち合いは力比べへと移った。

 徐々にシグレのほうが押している。

 サクヤが左手をずらし、その指の隙間から、針を飛ばした。

 だが、シグレはそれを予想していたようで、左手に隠し持っていたクナイで全て弾き飛ばした。


『サクヤが針を使う時の癖は相変わらずか……小指を立てるなとあれほど言っているのに』

『姉上のクナイ捌きを見たのは三年振り……衰えるどころかさらに腕を上げている……』


 マユの指輪を通して、シグレとサクヤの声が俺に伝わる。

 そして、その声はシグレやサクヤにも伝わっているだろう。


 だが、それ以上の声がまた俺に届かない。


 また心を閉ざしたのか。


 距離を取ったふたりだったが、次に仕掛けたのはシグレだった。

 手に持っていたクナイを放った。

 だが、離れた場所からの攻撃など、サクヤにとっては躱すのは簡単――いや、


……………………………………………………

炸裂クナイ【暗器】 レア:★★★


クナイに見せかけた爆弾。

一定の速度で放ち酸素を取り込むと爆発する。

……………………………………………………


 俺の鑑定結果が届くと同時に、クナイが爆発した。サクヤのすぐそばで。


「サクヤっ!」


 俺は思わず声をあげた。

 爆炎により、この戦いが殺し合いだと聞かされていない観客からどよめきが起こった。

 だが――その爆炎から影が飛び出した。

 咄嗟に避けたシグレだったが、頬にかすり傷を作った。

 それと同時だった。シグレが膝をつく。

 サクヤはシグレを見もしないでそのまま舞台を去るように歩いていった。


『勝負ありです、姉上。クナイには即効性の痺れ薬を塗ってあります』


 サクヤの声が届いた。

 だが――


 シグレが音もなくゆっくりと立ち上がる。クナイを持ち上げて。


『サクヤ! 避けろ!』


 俺の念がサクヤに届いたのか、サクヤは咄嗟に振り返り、シグレのクナイをギリギリのところで避ける。


『カリアナの忍に毒は効かない。そんなことも忘れたの?』

『……………………』


 なんだ?

 なんだ、この違和感。


 いや、それよりも戦いを止めるのが先だ。

 先程から続く戦い。どちらが死んでもおかしくない。


 ……そうだ!


(マユ! 計画変更だ! 心を隠しているのなら、心を揺さぶり起こす!)


 伝えるのだ。

 ふたりに気持ちを。

 ただし、互いの気持ちではない。

 皆の気持ちを。


 爆炎で顔にやけどを作りながらも、頬に傷を作りながらも戦いを続けるふたりの女忍者。 


 そのふたりに声が届いた。


『先生、頑張ってぇぇぇっ!』

『せんせー、あんまり無茶しないで! 今度薬草汁の作り方教えてくれるって言ったじゃん!』

『先生! 負けないで!』


 シグレの生徒たちの心の声が、マユを通じてサクヤとシグレ、そしてついでに俺に届く。


『隊長! アークラーン近衛部隊の意地、見せてやってください!』

『隊長、辞めないでくれぇぇぇっ!』

『……サクヤ様、お返事をお待ちしています』


 サクヤの部下たちの声もまた同様に俺達に届く。


 その声に、サクヤ、シグレ双方の動きが止まった。


『いい仲間を持ったな、サクヤ』

『立派に先生をしているようですね、姉上』


 心の対話が成立した。

 ふたりの顔にはじめて笑顔が浮かんだ。


 これでようやく終わるのか?

 だが、そううまくはいかなかった。


『次の一撃で決着をつけますよ、サクヤ』

『次の一撃で決着をつけます、姉上』


 その二人の心に、俺は思わず立ち上がった。

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