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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode10 カリアナ

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仲直り計画 その6

~前回のあらすじ~

シグレにある指輪を渡した。


 戦いがはじまる前。

 客席が開場され、観客たちが入ってくる。

 観客のほとんどは娯楽に飢えた市民たちだが、他にも俺が招待した観客も集まっている。

 ちなみに、一番賑やかなのは七次会を開催中のドワーフ達だ。

 酒好きな奴らも集まって、あそこだけ宴会場になっている。

 コロシアムを作ってくれたお礼に酒を提供したが、量を間違えたらしい。

 未だに酒が無くなる様子はない。


 中央の舞台の東側にはサクヤが、西側にはシグレが落ち着かない様子で椅子に座っている。

 ここにいる多くの人の中で、これから行われるのが殺し合いだと思う人はほとんどいない。


 さっきからシグレが俺を睨み付けている。

 彼女は大きく息をつき、立ち上がるとこちらに歩いて来た。


「コウマ殿、これはどういうことですか?」

「どういうことって、観客を入れることは言ってあっただろ? この戦いはあくまでも対外的に暗殺ではなく公式の試合でアピールするためのものなんだって」

「それは理解しています。私が言っているのは、どうして彼らがこの場所にいるのか? ということです」


 シグレはそう言って、後ろを見た。

 すると、彼女に見られた観客から、 


「先生、がんばってー!」

「スウィートポテト学園の教師の実力見せてくれぇぇ!」

「シグレせんせーっ!」


 と声が上がった。

 そう、あそこにいるのは男女別の制服を纏った子供――スウィートポテト学園の生徒たちだ。

 俺が全員招待した。


 ちなみに、今回の試合のために、即席でブラスバンド部が結成され、先ほどから拙い演奏が続いている。

 もちろん、トランペットやホルンなどの楽器類は音楽室にあるものだけで足りるわけがないので、新たに俺が提供させてもらった。


「生徒の声援だ。やる気になるだろ?」

「私がこれから行うのは暗殺なんですよ。そのようなところを生徒に見せるわけには――」

「いかないよな。そんなの全員わかってるよ。だからこそ、ここでサクヤが死んでも、全員不幸な事故だって思うって寸法さ。なにせ、お前の教師としての顔は、生徒たちが一番よく見ているんだからな」

「コウマ殿は、政治に生徒を利用しようというのですか?」

「学校もそもそも政治の道具だろ?」

「…………失礼します」


 シグレは俺の言葉を聞き、静かに立ち去った。

 その時に俺を見る彼女の瞳は、とても冷たいものだった。


 自分の椅子に座ったシグレに、生徒たちが声を掛ける。

 生徒たちの客席はシグレの待機する場所から近い場所にさせてもらったからな。


 シグレが俺の元を去ったのを確認し、今度はサクヤが俺のところにやってきた。

 彼女はわなわなと震え、俺を睨み付けた。


「姉上と何を話していた?」

「別に。ただの校長と教師との世間話だよ」


 俺は素知らぬ顔でサクヤに告げた。

 だが、彼女が聞きたかったのはそれだけではなかったらしい。


「コーマ、貴様何か変なことを近衛兵たちに吹き込んだのか?」

「なんのことだ?」

「私がこの試合に負けたら、責任を感じ、この国を去るというデマが広がっているようだが?」

「完全にデマってわけじゃないだろ。この戦いに負けたらお前は死ぬんだし」

「……貴様のその話のせいで、今朝から同僚たちから、泣いて辞めないでと言われた。部下からは恋文まで貰う始末だ」

「何っ!? サクヤ、その申し出を受けたのか!? くそっ、ネトラレ属性があったとは」

「何を言っている、相手は女だ」

「まさかの百合属性か! てっきりそこはリーリエ女王だけだと思ったのに」

「何を言っているのかわからんが……はぁ、多くの仲間や部下から、泣いてやめないように言われた。彼らは私が負けると思っているのだろうか?」


 そう言ってサクヤは頭を抱えた。

 彼女が本当に悩んでいるのは、自分が負けると思われていることではないことは、心を読むアイテムを持っていない俺でもわかった。


「しかも、どういうわけか私の部下をはじめ関わりの深かった者たちを全員招待しているようだな」

「この勝負はお前が勝つんだ。ならば、軍の士気を高めるのにもちょうどいいだろ」

「……コーマは気付いているのだろう。この戦いが終われば姉上は……」


 サクヤはそう言うと、自分の椅子に戻っていく。

 サクヤの席の後ろからは、


「隊長! 頑張ってください!」

「絶対負けないでください!」

「返事、いつまでも待ってますから!」


 野太い声の兵士に混じり、可愛い女兵士さんが一際大きい声援を送っていた。

 ……本当に百合百合展開が起こったら応援してしまうかもしれないな。


『コーマ様、そろそろですね』


 無言で俺の後ろに座っていたマユから声がかけられた。

 マユ、いたのか。全然気付かなかった。


『コーマ様……私のことを忘れていたんですね』


 悪い。忘れていた。

 マユ、存在感を消すのは本当に一流だな。


『消そうと思って消しているわけではないのですが』


 ……本当に悪い。

 でも、これからマユには働いてもらわないといけない。


 俺がシグレ、そしてサクヤに渡した指輪は、ただの純金の指輪と、プラチナの指輪だ。

 これからマユが行うのは、シグレとサクヤ、ふたりの心の声を中継することだ。


 彼女には心の中継基地になってもらわないといけないからな。


『ちなみに、シグレさんとサクヤさんの現在の心のうちは、コーマ様への怒りで満ちています』


 ……あとでふたりにも俺の本心をしっかり伝えないといけないな。


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