仲直り計画 その4
~前回のあらすじ~
仲直りの花は、ただの白い花だった。
善は急げとはよく言ったもので、俺はマユとともに早速アークラーンに戻った。
戻ると同時に、サクヤに殴られた。
「貴様、どこに行っていた!」
サクヤのために大陸を渡っていたというのに、この扱いは普通に酷いと思う。
「どうしたんだよ、そんなに怒って」
「学校の仕事を全部放置して。私がどれだけ苦労したと思ってる!?」
「え? なんでサクヤが苦労するんだ?」
「貴様が勝手に私を教頭にしていたんだろうが?」
……あぁ、そうだそうだ。
教頭候補がいないから、とりあえず名前だけ勝手に使ったんだった。
「といっても、別にすることなんてなかっただろ?」
「貴様の作った学校がどのような状況になっているのかわかっているのか? このアークラーンだけではない、今やフレアランド、アースチャイルド、ダークシルド、四カ国全ての貴族や大商人の子供たちが入学を希望している。私だとどうすればいいかわからない」
「めんどくさいなら全部追い返せよ」
「は?」
「そもそもさ、俺って貴族とか好きじゃないんだよ。あ、でも大商人とは会いたいな。名刺とかもらってるか?」
「名刺? それはなんだ?」
あれ? この世界に名刺ってないのか?
そういえば見たことないかも。
そもそも、紙もそこそこ貴重だしな。
「それより、貴族を追い返せとは。そんなことをしたら国家間の軋轢が生まれてしまうだろ」
「軋轢って大袈裟な。たかが学校だろ? そもそも、あの学校って孤児の子供をきっちりと世話するために――」
「そんなの誰も信じない! 他国からは、アークラーンが秘密裏に軍人を育成しているという噂も飛び交っている程なんだぞ。それが他国からの入学を拒絶してみろ! 噂に真実味を帯びさせることになる」
それは考えていなかった。
確かに、サクヤの言うことは正しいか。
「……ややこしいな。でも貴族とか入学したら、絶対に身分による苛めが起きるんじゃないか? お前は平民の出のくせに、貴族である俺様に逆らうのか? みたいな鬱陶しいガキが出てくるだろ。そういうのは嫌なんだよなぁ」
「……驚いたな、貴様がそこまでを想定していたとは。でも、そこまで想定できるのならなんとかならないのか?」
「そういうのはいくら大人がなにか言っても意味ないんだよ。子供同士が解決しないと……そうだ! 俺が入学するってどうだ? 俺ってまだ学校に通っている年齢だし――悪い、本当に冗談だ。憐れむような眼で見ないでくれ。それに関しては本気で考えるから」
「あぁ……頼む。では、貴族の子の入学も認める方向で行くぞ」
「うん。はぁ……学校独自の採算方法を考えないとな」
「ところで、そちらの女性は? まさか貴様の恋人か?」
サクヤはようやくマユの方に話題を持って行った。
ウォータースライムを被っていない彼女は喋ることができないので、頭を下げて挨拶をした。
「彼女はマユ。まぁ、俺の仲間だ。彼女に審判をしてもらうことにしてな」
「審判? 試合でもするのか?」
「試合……まぁ、試合だな。お前とシグレ、一対一で戦ってもらう」
「……貴様、気は確かか! なんで私が姉上と試合をしないといけない!」
「シグレが5日後、お前を殺すと俺に宣言してきた。正直、暗殺とか面倒だからな。試合をしてもらうことにした。審判はマユと――」
俺はマユの後ろの扉を見た。
「私が致しましょう」
扉から出てきたのは、この国のトップにして、サクヤの主君であるシルフィアだった。
「サクヤ、これは命令です。シグレ殿がサクヤを狙っている暗殺者と分かった以上、もしも彼女が暗殺行為に及んだ場合、暗殺者を学校が雇っていたという事実は厄介です。ですが、ルールのある試合の中での事故ならば何の問題もありません。サクヤ、あなたがシグレを殺してしまってもです」
シルフィアは真剣なまなざしのもと、凛とした声でサクヤに告げた。
それに対しサクヤは、
「……シルフィア様、彼になんと唆されたのですか?」
「…………」
シルフィアの顔に焦りが浮かぶ。
俺が誑かしたのはバレバレのようだ。
「サクヤ、例え俺が裏にいようがいまいが、シルフィアの命令なら従わないといけないよな」
俺がそう言うと、まるで親の仇を見るかのような眼で俺を見てきた。
めっちゃ怒ってるな。
「なに、安心しろ。お前には必ず勝てる方法を教えてやるさ」
「必ず勝てる方法だと?」
「そうだ。俺のことを信じろ。お前は絶対にシグレに勝てるさ」




