仲直り計画 その3
~前回のあらすじ~
仲直りの花を求めて130階層に移動した。
「苔とか結構生えてるんだよな」
俺の迷宮とはいえ、全てを管理しているわけではない、と言えばまるで大部分を管理しているような言い方になるので、正直、今では200階層にいることがほとんどで、それ以外の階層はまるで管理していない。
そのため、まさか、自分の迷宮の中に川が流れている場所があるなんて思わなかった。
川といっても本当に小さな川だ。
天井から壁伝いに流れて来た水が川を作ったという感じだ。
川の中を覗き込むと、スライムが飛び出してきた。
マユといつも一緒にいるウォータースライムと同一種だろう。色は濃い青のカリーヌと違い、薄い青の、俺の頭より少し大きなサイズのウォータースライムだ。
ウォータースライムは俺の足元に着地すると、俺の足に全身をこすりつけてきた。
「この子、お兄ちゃんに会えて嬉しいんだって」
「まぁ、一応はこいつの主人になるからな」
この迷宮の瘴気から生まれる魔物は全員俺の配下だ。
「ここにはどのくらいのスライムがいるんだ?」
「うんとね、たくさん生まれてくるよ」
「たくさんの基準がわからないんだが……」
「えっとね、多いときはね、天井までくっつくの」
「天井までくっつく?」
「うん、それでね、カリーヌが多すぎるって言ったら、みんなひとつになっちゃったの」
ひとつになっちゃった?
エンペラースライムみたいなものか?
「それでね、その子になったの」
「え?」
カリーヌが指さしたのは、先ほどのウォータースライムだった。
……どう見てもただのウォータースライムなんだが。
とりあえず、診察スキルを使ってHPを見てみる。
【HP1098002/1098002】
……あれ? なんだ?
診察スキル壊れた?
いや、正常か。自分のHPを見ても間違いない。
なんだよ、これ。
HPが100万超えているって……そりゃ、一角鯨とかと比べたら可愛いけれどさ。
スキルを見てみる。
【溶解液レベル10・分裂レベル10・融合レベル10・HP自動回復レベル10・水耐性レベル10・物理耐性レベル10・物理完全防御レベル3】
うわ、なんか凄いことになってるな。レベル10のオンパレードだ。
物理耐性レベルが高いだけでなく、物理完全防御なんていうはじめて見るスキルまである。
俺はアイテムコレクターであって、スキルコレクターではないのだが、それでもスキル図鑑を貰ってからはちょくちょくチェックしてはほくそ笑んでいる。仕方ないじゃん、コレクターなんだし。
でも、少なくとも物理完全防御なんてスキルは見たことがない。カリーヌも持っていないスキルだ。
「いつからこんなことになってたんだ」
「えっとね、前に人間の人達がいっぱい来た後にね、弟達がいっぱい生まれたの」
あぁ、勇者がいっぱい来て、そこで俺が作った魔法生物とはいえスライムがいっぱい死んだし、勇者達の負のオーラも渦巻いていたから、それで生まれたのか。
俺は今まで、神薬で成長することが最強への近道だと思っていた。
だが、スライムは俺の予想をはるかに上回る速度で成長できるのか。
恐ろしい。
「お兄ちゃん、そんなことより仲直りの花探しにいこ。君は水の中に入っていいよ」
カリーヌの指示で、世界最強のウォータースライムは川の中に入って行った。
「そんなこと!? 世界最強のスライムがそんなこと!?」
「世界最強じゃないよ。カリーヌ、その子と一緒に戦闘ごっこして遊ぶけど、負けたことないよ?」
「え……マジで?」
「うん」
……実はカリーヌが最強なのか?
いや、カリーヌもHPは高い。1万超えている。それに力の神薬も飲んでいるから力持ちではあるはずだが。
うーん、スライムの強さの序列がわからない。
「お兄ちゃん、こっちだよ! 仲直りの花!」
「お、あ、あぁ!」
そうだ、俺は仲直りの花を探すためにここに来たんだった。
ついつい話が横にそれてしまう。
考えてみれば、渡すだけで仲直りができる花なんて、レアアイテムじゃないか?
もしかしたら、凄いアイテムの材料になるかもしれない。
スライム以外に効果があるかどうかはわからないが。
「そういえば、スライムってどんな時に喧嘩するんだ?」
「いろいろだよ。昨日は、青いスライムと赤いスライムがいてね、黄色いスライムと緑のスライム、どちらが真の三原色か! って争ってたんだよ」
「……あぁ、色の三原色と光の三原色か」
色の三原色は赤、青、黄。光の三原色は赤、青、緑だったな、確か。あれ? 正しくは色の三原色は赤ではなく、赤紫で、青というよりかはさっきのウォータースライムのような空色じゃなかったっけ?
「うん、それでね、その花で仲直りして、結局四人全員で融合したの」
「仲直りして結局融合するのか!」
「うん、それで結局薄紅色のスライムになったんだけどね。赤いスライムが一番小さかったんだけどなぁ」
「あぁ、そうなんだ」
スライムの融合について研究するのは大変そうだな。
「それで、その花がある場所って遠いのか?」
「ううん、すぐそこだよ!」
カリーヌは笑って走っていく。
俺は早足で彼女を追いかけると、そこに、白い花が沢山咲いていた。
「……これは」
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クロッカス【素材】 レア:★
秋に咲く観賞用の植物。白、黄、紫などの花が咲く。
花びらに水がかかると花が縮み、萎れてしまう。
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……ただの花だ。
薬の材料になるサフランと同属植物なのだが、これは薬にも染料にもあまり使われることはない。
ましてや、仲直りの薬になるような花ではない。
「……これをね、友達に渡してごめんなさいって気持ちを伝えると仲直りできるの」
「……気持ちを伝えると仲直り?」
「うん」
それは花の効果じゃないだろ。
ただ、気持ちを伝えあって、仲直りできただけだ。
「そっか……たったそれだけのことなんだ」
何を深く考えていたんだろ、俺。
そもそも、サクヤとシグレは憎み合っているわけじゃないんだ。
お互いの気持ちをしっかり伝えあえば仲直りできるに決まっている。
あとはどうやって気持ちを伝えればいいのか?
それは簡単だ。
「……ありがとうな、カリーヌ!」
俺はクロッカスを一輪詰み、花飾りを作ってカリーヌにプレゼントした。
そして、俺はある作戦を思いついた。
早速、決行させてもらおう。




