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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode10 カリアナ

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仲直り計画 その1

~前回のあらすじ~

七英雄の最後のひとりが気になった。

「あ、コーマ、いたんだ」


 アイテムクリエイトで作られたチョコチップクッキーを食べながら、卓袱台の上に材料を広げて考えていた俺に、ルシルが声をかけてきた。クッキーの粉がぽろぽろと落ちて、畳のヘリの隙間に入っていく。いったい誰が掃除をすると思ってるんだ? コメットちゃんだぞ。


「いったい何してるの?」

「あぁ、ちょっとあるアイテムを作ろうと思ってたんだけど」


 シグレとサクヤ。

 ふたりの姉妹の殺し合いを止める手段は見つかった。グンジイからも書状を書いてもらったし、殺し合う必要はなくなったわけだ。

 でも、殺さなくていいですよ! よかったね、ふたり仲良くしてね♪ で終われば苦労しないと思う。

 やっぱり追う者と追われる者、狙う者と狙われる者だったという事実は消えてなくならない。わだかまりが残ったままだとな。


「ということでな、仲良くなるアイテムでもないかなって思ってるんだけどさ。惚れ薬とかそういう類のものはいろいろとあるんだけど、仲直りをするための道具ってのがなぁ」

「仲良くなる薬? とりあえず、コーマがDX(デラックス)チョコレートパフェを作ってふたりに食べさせたら? 美味しすぎて喧嘩していたことなんてすぐに忘れるわよ」


 喧嘩のレベルなんて軽く超えて、殺し合いなんだけどな。

 美味しいものを食べて仲直りって、子供じゃないんだから。

 ただ、俺の料理スキルが異常すぎて、本当にそれだけで仲直りできそうな気がする。


「そうだ、試しに私と喧嘩して、DX(デラックス)チョコレートパフェを作って仲直りできるか試してみない?」


 それはお前がDX(デラックス)チョコレートパフェを食べたいだけだろう。


「でもさ、喧嘩って言ったってどうすればいいんだ? 正直、ついこの間、俺に結婚したらってルシルが言った時、軽くイラっときたけど、今となったらそれもいい思い出っていうか、それも俺とルシルの関係性なんだなってふたりのことを見直すきっかけになってるし、今の俺は初心を取り戻して、軽くお前のためなら死ねるけれど、お前のために精一杯生きるってモチベーションなんだぜ?」

「コーマ、そういうのはいいから」

「……うん、それもお前だ」


 正直、今のも軽く口説きにかかったんだけどさ。前までの俺なら、それでルシルのチョコクッキーを全部取り上げて胃袋に流し込むくらいのことはしただろうが。


「そうだ! コーマが私の悪口を言ってよ。それで私が怒るから、仲直りのDX(デラックス)チョコレートパフェを持ってきて」

「それって意味あるのか? 悪口を言うように命令されて悪口を言って本気でお前が怒る訳ないだろ」

「いいから、早く」


 ルシルは口の端についたチョコクッキーのカスをぺろりと舐めて言った。

 やれやれ、自分の命よりも大事な、そして俺の初恋の相手と言っても過言ではないルシルの悪口を言うのは、正直剣で斬られるよりも痛い、心が痛いことなんだが、その命よりも大事なルシルのお願いだ。仕方がない。

 

「ルシルって、ニートだよな」

「……え?」

「考えて見れば、生まれたばかりのカリーヌやゴブカリですらスライム、ゴブリンを率いて迷宮の開拓をしているというのに、ルシルって何もしてないよな」

「それは……そうよ、私だってコーマの作った映像受信機でフリマや迷宮の防犯を――」

「そういえば、コメットちゃんから、俺がいなくなっている間に映像送信機のバッテリーがなくなって何も映らなくなったって聞いたんだけど。あれって魔石を消費しているからなぁ」

「……え」

「いや、お前は魔王軍元帥なんだからさ、別にカメラのチェックをしろとか、掃除洗濯をしろとか、ましてや料理をしろだなんて絶対に言わないけどさ、でも最近は畳の上でゴロゴロしたりして、マントも皺だらけになっているし。と、なにお前の普段の行動を確認してるんだよ、俺。今からルシルの悪口を言わないといけないんだよな」

「待って、コーマ、今のは悪口じゃなかったの?」

「もちろん、ルシルの悪口なんてそうそう見つからないよ。そもそも、本当に俺、ルシルのこと好きなんだぜ? 最初に会った時とか、怖かったけど、それ以上に美しいって思ってたからさ。胸もでかくてさ。今は見る影もないチンチクリンだけど」

「ちんちく……」

「最近コメットちゃんも成長してきたからさ、あと半年もしたら抜かれるんじゃないか? ってまた雑談になっちまったな。ルシルの悪いところなんて、料理が壊滅的に下手なところを除けば……ううん、我儘で自分勝手で適当でずぼらでだらしなくて、それでいてプライドだけは人一倍高くて、物忘れがひどくて、若いふりして実は2700歳ってところも、俺はそのすべてを含めてルシルのことが好きなわけで――」

「うわぁぁぁん、コーマのバカぁぁぁぁっ!」


 ルシルは泣きながら会議室を出ていった。

 ……ちょっと言いすぎたかな?

 あいつの涙を見たのも久しぶりだ。かなり胸が痛い。

 あとで最高に美味しいDXデラックスチョコレートパフェを持って行ってやらないとな。


 そう思っていたら、青色半透明の少女――カリーヌが入れ違いに入ってきた。


「コーマお兄ちゃん、ルシルお姉ちゃんどうしたの?」

「あぁ、ちょっと喧嘩してな。カリーヌ、ルシルのことルシルお姉ちゃんって呼んでるのか?」

「うん、コーマお兄ちゃんがお兄ちゃんなら、私はお姉ちゃんでいいわよって、ルシルお姉ちゃんが言ってくれたの」

「そうか……ううん、ルシルと仲直りするときはカリーヌに仲立ちしてもらうのがいいかな」

「仲直りなら、仲直りの花を使えばいいと思うよ?」

「仲直りの花?」

「うん。カリーヌ達は喧嘩したらその花を贈って仲直りするの」

「カリーヌ達? スライム同士ってことか?」


 カリーヌは「そうだよ」と頷いた。

 スライムも喧嘩するのか。仲直りの花か。


「その花ってどこにあるんだ?」

「130階層に生えてるよ」


 この迷宮にあるのかよ!

 うーん、前に迷宮の中を調べたときはそんなものはなかったはずだが。


「カリーヌ、一緒に探しに行こうか?」

「うん、お兄ちゃんとデートだね」

「そうだな。カリーヌとデートだな」


 俺はカリーヌの頭を撫でて、手を握った。

 ひんやりと冷たく、それでいて柔らかくて気持ちよかった。

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