魔王を倒す理由
~前回のあらすじ~
グンジイ説明回。
「どうしてこの世界に、動物とは異なる魔物が存在するか、コウマ殿は理解していますかな?」
「あぁ、瘴気が集まって魔物になるんだろ?」
そのあたりは、ゴブカリの時にちょっと勉強した。
迷宮ができたきっかけが、ゴブリン王だった。
ゴブリン王は魔物を引き寄せ、従えさせる力がある。そのゴブリン王によって魔物が集められた。
人間との争いを恐れたゴブリン王は地下深くに潜って行き、そこに集まった魔物を住まわせた。
それが、ラビスシティーの地下にある迷宮だ。
「その通りです。そして、魔王には瘴気を集める力があります」
それも知っている。
俺にもその瘴気を集める力というのが微妙に存在している。何故か俺の迷宮ではスライムのみが生み出される。カリーヌも、元々は俺の力によって集められた瘴気から生まれたスライムだったな。
「知っている。でも、まさか魔王を倒せば魔物が生まれなくなるっていうんじゃないだろうな?」
「いいえ、違います。ワシの知る限り、魔物は魔王が生まれるよりもはるか昔よりこの世界にいたという記録が残っています。むしろ、昔のほうが魔物の数は今よりも多かったそうですな。魔王が瘴気を集めているため、地上の魔物の数が減ったのでしょう。ですから、我々が倒したいのは、真迷宮にいる魔王ではなく、その他の迷宮にいる魔王なのです」
「真迷宮以外の魔王?」
俺はおうむ返しにそう尋ねたが、心当たりはある。
エント、そして彼と一緒にいたドリアードの少女。
彼女もまた真迷宮の魔王ではない、別の魔王であった。
真迷宮以外の魔王は、瘴気を一ヶ所に集める妨げとなり、地上への魔物の出現のきっかけとなる。
そして、ひとり、その真迷宮以外の迷宮の魔王を討伐していた男を俺は知っている。
ベリアル。
最強の魔王を名乗る彼はエントを殺そうとしていて、共闘したこともあった。
横で、マユが少し胸を撫で下ろす。俺もマユも、真迷宮の魔王だから、少なくともグンジイ達が狙う魔王ではないな。
「ってあれ? じゃあ、なんでル……闇竜を倒したんだ? 闇竜は真迷宮の魔王だろ?」
「その通りです。ワシも何故あの闇竜にそこまでこだわったのかは知りません。ですが、その闇竜が強大な力を持っていて、彼を倒すことで一時は世界から多くの魔物が身を潜めたというのは確かなことです。その功績が称えられ、我々七人は七英雄と呼ばれるようになったわけです」
「……なるほどな。わかった。俺もその真迷宮以外の迷宮の魔王については調べてみるよ」
そう答えながら、俺は思った。
もしかしたら、ルシファー討伐の裏に、何か隠されているのかもしれない。
俺もルシルも知らない何かが。
そして、その答えを知るには、グンジイがひた隠しにしているもうひとりの七英雄について知る必要がある。
まぁ、調べる必要はないさ。
俺はマユの指輪を見て、目で合図を送る。
つまり、グンジイの心を読めと。
マユは小さく頷いた。
「なぁ、グンジイ、もう一度聞きたいんだが、本当に教えてもらえないか? その最後の七英雄について」
「すみませんが、それを語ることはできません」
グンジイがそう言った直後だった――
『………………っ!』
マユの元々白かった肌が青白くなり、気を失って倒れそうになる。
「マユっ!?」
俺は腕を伸ばし、マユの後頭部をガードし、ゆっくり床に寝かせた。
「すぐに医者を!」
グンジイが幹部の忍に命じるが、俺はそれに待ったをかけた。
「いや、大丈夫だ!」
……息はしている。気を失っているだけみたいだ。
診察スキルを使っても状態異常はない。
念のため、エリクシールを取り出して一滴垂らした。
※※※
マユが目を覚ましたのは、俺達が魔王城に帰った後だった。
転移先の指定をしていない持ち運び転移陣をカリアナの空き家に置き、転移石で魔王城に戻った。
マユといつも一緒にいたウォータースライムが、カリーヌと一緒に訪れ、心配そうにマユの頭をつついていたが、マユは目を覚ますと優しくそのウォータースライムを撫で、頭にかぶった。
「申し訳ありません、コーマ様」
マユは頭を下げて謝罪した。
「何があったんだ?」
「グンジイさんの心を読もうとしたとき、ジャミングがあったようです。おそらく、その最後の七英雄という女の方が一種の結界を心の中に張ったのでしょう。グンジイさんが頑なに最後のひとりについて語らないのも、本当は語ろうとしても語れないのかもしれません」
「そっか、こっちこそ悪かったな。そんなものがあるなんて微塵も思ってなかったよ」
何者なんだ?
その最後の七英雄って。
グンジイが最後に言ったことを思い出す。
『最後の七英雄が誰かは伝えることはできませんが、我々が真迷宮以外の魔王を倒し、そしてそれが日本に戻ることにつながるのか? それと、我々がコウマ殿のことを信じる気になったのか? その理由が彼女から聞いた言葉だったのです。全ての魔王と全ての財宝、それらすべてがあるべきところに戻ったとき、異界への扉を開けるだけの力が手に入ると』
グンジイは思った。俺が言った72財宝というのが、全ての財宝を意味する言葉なんだろうと。
いったいどういうことだ?
72財宝が全部そろった時、一体何が起こるっていうんだ?
さっきの話は確かにルシルの言っていた、凄い力が手に入るという話と一致はしている。それでも、何か違う気がした。
俺はアイテムバッグの中から、魂の杯を取り出し、無言でそれを見つめた。




