七人の英雄
~前回のあらすじ~
魔王を退治しないといけないと言われた。
「……へぇ、魔王を倒すのかぁ。それはまた一大事業だな。でも、それってどっちかっていえば勇者の仕事じゃないかな?」
「ええ。ですから、ワシも勇者の資格を持っています」
グンジイ懐から、あるブローチを取り出した。
赤く輝くそのブローチには見覚えがあった。
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勇気の証【装飾品】 レア:★★★
勇気を持つ者に贈られるブローチ。
僅かだが腕力がアップする効果がある。
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勇者の証。勇者のブローチとも呼ばれ、勇者試験に受かった者が授かると言われる。
ちなみに、俺もアイテムクリエイトで、「ルビー」と「金」、それと「魔石」を材料にしたら作ることはできるのだが、魔石部分に個別の番号が割り振られているらしく、勇者特権を得ることはできない。というより、そんなもの持っていたら偽勇者扱いされるので、アイテムバッグの奥深くに封印している。
グンジイが持っているものは、おそらくは俺のように偽造したものなどではない、正式な勇者のブローチなのだろう。
「グンジイ、あんたも勇者だったのか」
「ええ、一応。勇者の資格は情報を得るうえで役に立ちますから」
なるほどな。まぁ、この爺さんなら勇者になっていてもふしぎではない。
むしろ、なろうと思えば簡単になれるくらいの実力はあるからな。
「で、グンジイは魔王を倒したことはあるのか?」
「ええ。三年前に一度」
三年前か。
また最近の話だな。
てっきり、数十年前、若かりし頃に一度だけ……なんて話が出てくるかと思ったのに。
「ん? 三年前? グンジイ、もしかして、その時に倒した魔王って、闇竜じゃないのか?」
「ええ、その通りです。もっともワシの名はユーリ殿、ジューン殿と違い表には出ておりませんが」
うわ、マジか!?
グンジイが七英雄の一人だっていうのか。
ユーリ、ジューン、クリスの親父さんに次ぎ、グンジイが七英雄かよ。
狭すぎるだろ、この世界。
そのうち、コンプリートしちまうんじゃないか?
あと、七人中二人が爺さんで、四人とも男――ユーリは人形で、本体のルルは女の子のルルなんだが――って、かなりむさくるしいメンバーだな。
「もしかして、ユーリと一緒にいた女の子以外、全員男だったのか?」
「いや、ルナ殿を含め、三人は女性でしたな」
……ルルは昔はルナって名乗ってたのか?
まぁ、同じ名前の女の子が成長せずにずっと同じ姿でいたら怪しまれるな。肖像画の中のルルも毎回髪型や色が変わってたし。
「ユーリ、ジューンとは知り合いだし、闇竜に殺された竜殺しの剣グラムを使ってた男の娘とも知り合いなんだけどさ、他の七英雄ってどんな奴なんだ?」
「……ひとりはとりとめのない男でしたな。たしか、名をサイモンという、エグリザ殿の弟でした」
……サイモン?
はて、どこかで聞いたような名前だ。
あぁ、思い出した。
クリスがよくカモにされている詐欺師の名前だ。
ミスリルソードを盗まれたりしていたんだっけか。
「エグリザって?」
「竜殺しの剣グラムを持っていたソードハンターの名です」
「……クリスの親父さんか……ん? じゃあ、サイモンってのはクリスの叔父になるのか」
クリスはたぶん知らないんだろうな。たぶん、そのサイモンが七英雄ってことも含めて。
ソードハンターとは、剣の収集家の名称だ。
クリスの親父さんは剣士であると同時に剣の収集家だったんだな。
そう言えば、クリスの実家も結構いい剣がいっぱいあったっけ。
「ひとりは西の大陸から来たという幼い少女でした。回復魔法を得意とし、一瞬でワシの持病でもある急性腰痛症を治した腕前です。身元はよくわかりません」
「急性腰痛症って……ぎっくり腰って言えよ」
西の大陸から来た少女か。
これで六人、あとひとりだな。
「あとひとりは?」
「すみません、その情報は伝えることはできません。ただ、女性であったということを伝えるだけでも精一杯なのです」
「なったばかりとはいえ主君である俺にも言えないのか?」
「誰にも……です。その者のことはワシは墓場まで持っていかねばなりません。もしもワシがばらしたことが彼女に知られたら、この国など一晩のうちに業火の炎の渦に包まれてしまいます」
……おいおい、それこそ魔王じゃないのかよ。
ユーリに聞いたら教えてくれるのか、それともクリスからサイモンに聞いてもらうか。
うーん、どれも無駄に終わりそうな気がするな。
「つまり、戦いで死んだのはそのエグリザと闇竜だけだったのか」
「ええ、その通りです。彼はとても勇敢で立派な武人でした」
「そっか……今度、そのエグリザの娘を連れてくるから話してやってくれ。きっと喜ぶよ」
「エグリザ殿の娘ですか……それはぜひお会いしたいですな」
グンジイは故人を懐かしむかのようにそう言った。
「それで、なんで魔王を退治することが、日本に帰ることに結びつくんだ?」
聞いたら後に戻れないような気もするが、聞かない訳にはいかないだろう。
俺は意を決してグンジイに訊ねた。




