表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode10 カリアナ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

325/742

全員でいただきます

~前回のあらすじ~

ご飯が炊けた。

 炊きたてのご飯を今すぐ食べたい。

 だが、普通にご飯を食べるのもあれだし、と俺はアイテムバッグから塩を取り出した。


 よく洗った手に塩をかけ、あつあつのご飯を握っていく。コンビニなどでよく見る三角の形ではない、俵型のおにぎりだ。

 何故俵型なのかというと、このほうがスプーンで掬いやすいから。

 俺と一緒に食事のする機会が多いマユはだいぶと箸の使い方にもなれてきて、今では里芋っぽい芋の煮っ転がしを箸で掴むことができるほどになっているが、メディナはまだ箸の使い方が苦手だ。


「メディナ、悪いが、このひじき、向こうのテーブルに持って行ってくれ。あとグンジイに、壺の中にある梅干しを貰っていいか聞いてもらっていいか?」

「わかりました」

「マユはこのほうれん草はお浸しにするから一口サイズに切ってくれ」

『かしこまりました』


 いやぁ、楽しいなぁ。

 まるで遠足のお弁当作りみたいだ。

 小学校のころ、お母さんに唐揚げを頼んだのは今でも覚えている。我が家でお弁当に使われる揚げ物は漏れなく冷凍食品か昨日の残り物なんだけど、別に文句はなかった。旨いもんな、冷凍食品の唐揚げ。


「持っていきました。そこにある梅干しは自由に使っていいそうです」

「そうか、じゃあ、今度は――っと、味噌汁が沸騰する」


 沸騰したらいけないんだよな、味噌汁は。

 ふぅ、危ない危ない。

 鍋の中を確認する。

 味噌汁も十分に温まった。

 俺はアイテムバッグからお椀を取り出し、味噌汁をお椀に入れていく。

 以前にラビスシティーでスラム街で配ったお椀だ。


「じゃあ、メディナ、今度はこの味噌汁を持って行ってくれ」


 俺はそう言って、鍋の蓋をしっかりとロックすると、残りをアイテムバッグに入れた。

 残りはまた今度飲むことにしよう。


 釜の中の残ったご飯もお重の中に詰めて今度食べよう……お焦げがかなり旨そうだ。

 我慢だ我慢。美味しいご飯は全部揃ってからだ。


 マユが切り分けてくれたほうれん草に、鰹節と醤油を垂らし、小鉢も完成。


 よし、これで完成だな、そろそろ会議も終わっただろうか?

 と思ってテーブルに行く。


「なんだ、まだ終わらないのか」


 幹部と思われる忍5人がテーブルで顔を突き合わせていた。

 全員が息を呑んでいる。硬直状態か。

 うーん、こんな中で食べにくいな。


「なぁ、会議は飯の後にしないか? お前たちの分も作ったからよ」


 さっき神棚にご飯を供えた時に会議に参加している忍の数を数えていたから、俺はその人数分、テーブルに食事を運んでいた。

 


「我々もいただいてよろしいのですかな?」

「ああ、ってまぁ、さっきまで殺し合いをしていた相手の飯は食べられないか? 毒は入れていないぞ」

「我々は常日頃より毒を食べても死なぬ身体を作っております――カリアナ特性の自害用の毒薬でしか死ぬことはありません」


 グンジイが言った。自害用の薬って、秘密が洩れるくらいなら自らの命を絶つってやつか。

 そんな薬があるのかよ。


「いいのか? 俺達にそんなことをばらして」


 俺がその自害用の薬を探し出して仕掛けると思わないのだろうか?


「コウマ殿が本気を出せば我々を殺すのに毒薬など必要ないでしょう」

「……なるほどな」


 グンジイなりの誠意ということか。

 たしかに、自称アイテムマスターの俺も、毒殺をするなんて……かつてゴーリキ相手に使った時くらいか。

 いや、あれは麻痺毒だからセーフか。


 え? ルシル料理を何度も使ってないかって?

 ははは、あれはもはや毒じゃない、生物(?)兵器だ。


「じゃあみんなで食べようぜ」


 全員で手を合わせて、一礼。

 忍び装束の男達も全員マスクを外し、一斉に味噌汁やおにぎり、ひじきなど気になったものを口へと運ぼうとした。

 俺も最初はおにぎりを食べようと、箸で掴んだ。

 うん、旨そうだ。

 久しぶりに()()で料理をしたからな……あ……


「みんな、食うなっ!」


 俺が叫んだ直後だった。

 忍び全員が絶叫し、倒れた。


 彼らだけではない、マユもメディナも。


「……やべ、本気で料理をしたら……旨すぎて気絶するよな」


 米を食べるのに夢中で料理スキルレベル10の弊害についてすっかり忘れていた。


 まぁ、命に別状はないので、放っておいていいか。

 俺はそう言い、おにぎりを食べた。


 ……生きていてよかった。

 唯一、自分の料理を幾度か食べた経験のある俺は、気絶することもなく天井を仰ぎ、涙を流した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ