カリアナ宣言
~前回のあらすじ~
グンジイの秘密を暴いた。
俺とグンジイの話を聞いても、戦意を喪失しない、戦闘態勢を解除しない周囲の忍達は流石だと思うが、動揺しているように思える。
彼らもわかっているだろう。
俺の言っていることが本当だということに。
「さて、グンジイ。もう秘密が秘密じゃなくなったな。サクヤを殺そうとしたのは国の外に逃げれば他の日本人に会う可能性が高くなる。俺だって、ここに来てまだ一年にもなっていないのに、元日本人に会っている」
闇の神子、鈴子。
そして、カリアナの住人。
転生者、転移者と条件は違うがどちらも元は日本人。
情報収集のプロである忍の力があれば他の日本人を探すのも容易だろう。
「教えろ、お前は――お前たちは何人の元日本人を殺した?」
「………………」
「お前が知っていたってことは、少なくともお前は一度は別の日本人に会ったことがあるんだろ? 何人殺した?」
俺の問いに、グンジイは答えない。
だが――
《コーマ様――》
マユからの念話が俺に届く。
マユにはグンジイの心の中を読んでもらい、俺に伝えてもらった。
「……そうか、三十年前に先代の頭領さんがね」
「貴様――」
グンジイが苦虫を踏みつぶしたかのような顔になる。
「おいおい、忍頭さん。ポーカーフェイスくらい維持しろよ」
俺が読心術を使っているとでも思っているのだろうな。もっとも、使っているのは俺じゃなくてマユなんだけどな。
《コーマ様、それともう一つ、大切なことが》
マユから念話が続く。
「……ってまじかぁ」
マユから伝えられた仰天な事実を聞き、俺は天を仰いだ。
「なぁ、グンジイさん、あんた、バカだろ」
「何を……」
「周りのお仲間さん、とっくに知ってたみたいだぞ?」
俺はそう言って、俺の台詞に一番反応した左奥にいる背の低い忍び装束の男を指さした。
「あんたが持ってるのか、日本史の教科書」
「な、なんこととだ」
装束のせいで表情はわからないが、焦っているようだ。
そして、その隠し場所がマユを通して俺に伝わる。
「枕の中に隠すなら日本史の教科書じゃなくてエロ本にしておけよな」
男は焦り、クナイを俺に投げてきた。
だが、クナイは俺に届くことはなく、グンジイが受け止める。
「タツゴロウ、知っていたのか! 貴様!」
そして、グンジイはクナイを投げてきた男を睨み付けた。
男はその迫力に気おされ、一歩、二歩と後ずさり、そして土下座へとスライドした。
「す、すみませんでした! お頭――実は俺――俺達全員知っていたんです。倭国の――我等の先祖様が住んでいたという世界の情報を」
「なんだと!?」
そう、全員知っていたんだ。
ある時、日本人の転移者がいるという情報を頼りに他国へと向かった一人の忍が発見した日本史の教科書。
それを見つけたタツゴロウの父というのが、仲間内でそれを隠すことにしたそうだ。
いつか主君の元に駆け付けようとしている頭領のために。
「まったく。忍をひとつにまとめるために主君の存在が必要だと思っていた忍頭だったが、その忍頭がすでにカリアナをひとつにまとめるための立派な主になっていたのか」
俺はグンジイに言った。
自信満々に、胸を張って、言った。言ってやった。
「それでも日本に帰りたいというのなら、俺に仕えろ、カリアナの民よ。俺は日本に戻る術を、その可能性を知っている。お前たちが自分の目で全てを確かめたいというのなら、俺が導いてやるよ。だから――」
俺はこの日のために用意していた台詞を言った。
「お前たちの全てを俺に預けろ!」
俺の突然の宣言に、誰もが、マユやメディナでさえも言葉を失った。




