カリアナはやはり日本っぽい
~前回のあらすじ~
カリアナに入った。
桜に関してはあまり詳しくない。知っている品種といえばソメイヨシノくらいだ。
鑑定で品種までわかるのだろうかと思って鑑定してみようと思った。
木のままだと鑑定できないので、花びらを一枚とって鑑定してみた。
だが、レア度がないため、鑑定できない。
今度は木の枝を折ってみた。
『コーマ様、木の枝を折ってはいけませんよ』
「あぁ、木の枝を折ったのはこの俺です」
マユに指摘されたので、俺は自らが犯人だと自白した。
「……はい、見ていましたよ?」
俺の自白に、メディナが不思議そうに答えた。
「なら許してくれ。俺の世界では、桜の枝を折っても素直に謝れば許してくれるって大統領が言ってたんだ」
「……そうなのですか?」
そうなのだ。
しかもアメリカ合衆国を作った偉い人の話だ。
まぁ、フィクションなんだけどね。
ワシントンが生きていたのはたしか1700年代だ。
その時代にアメリカ合衆国には桜はまだなかったらしい。
ということで、折った桜の枝を鑑定してみた。
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万年桜の枝【素材】 レア:★★
決して散ることが無いと言われる桜の木の枝。
だが、花びらのように見えるのは桃色の葉。
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アイテムの説明を見て、俺は再度花びらをよく見てみた。
本当だ、よく見たらこれ、ピンク色の葉っぱだ。
見事に騙された。
どうりでこんなに満開に咲いているにもかかわらず、花びらがほとんど散っていないと思った。
「ま、綺麗だからいいか」
折った桜の木をアイテムクリエイトで、桜の簪に作り替えて、マユにプレゼントした。
彼女の白い髪に桜の簪をつけると、まるで雪原に散った桜の花びらような幻想的な雰囲気になり、とても綺麗だった。
『ありがとうございます、コーマ様』
「気にするな、折った桜の枝だ……あ、もしかして俺の心を読んでないだろうな?」
『……はい、最近は相手の心を探ることはしていませんよ?』
そうか、ならよかった。「雪原に散った桜の花びら」なんて考えていることを知られたら恥ずかしい。
『でも、私の簪が似合うと思ってくれたのなら、それは嬉しいです』
「うっ……」
心を読まずともバレバレだったってことか。
はぁ。
「コーマ様、今度は私にも作ってくださいね」
「メディナ……お前が簪をしたら蛇の串刺しになるぞ?」
髪の毛が蛇になっているメディナが簪をつけるところを想像し、俺は苦笑するしかなかった。
※※※
桜並木を暫く歩くと……一軒の店が見えてきた。
「お店ですか?」
「あぁ、店だな」
『変わった店ですね』
ふたりには変わった店に見えるんだろうな。
俺にとってはとても見慣れた町だ。かやぶき屋根に、土壁、そして店前に置かれた長椅子には赤い布が掛けられている。
扉のないオープンな店。
確かに、こっちの世界では滅多に見ないんだが、俺の世界ではテレビの中ではよく見る。ただし、時代劇の中では。
「ちょうどいい、あそこで休憩しようぜ」
俺はふたりに言うと、店の前に行く。見える場所に店の人の姿はなかった。
「すみませぇん、誰かいますかぁ?」
と声を掛けた。だが、返事はない。誰もいないのなら仕方がないから先に行こうかと思った時、
「はい、お客様かしら?」
後ろから若い女性の声が聞こえてきた。
振り返ると、そこにいたのは、眼鏡をかけた着物姿の女性だった。
着物、そう、着物だ。
赤色の着物を着ている若い女性だ。そして、髪の色は黒く、肌の色も俺と同じ黄色人種っぽい。瞳の色もモンゴロイドだ。
「あ……あの、ここは茶屋ですか?」
「はい、そうですよ」
「じゃあ、団子とお茶ください」
「はい、少々お待ちください」
椅子に座り、俺は空を見上げた。
一度でいいからこういう場所で団子を食べて見たかったんだよな。
……それにしても、カリアナってやっぱりどう見ても日本の文化だと思っていたが、まさかここまでとはな。
店の脇には緑色の旗が掲げられていた。
そこには「茶」と漢字で書かれている。
いったい、いつの時代から来たのだろうか?
そんなことを思いながら、俺はこのカリアナで手に入れたい素材を考えていった。




