なにもしない
~前回のあらすじ~
クリスの実家に行くことになった。
フレアランドは決して豊かな土地ではない。
だが、西大陸の中では魔物が最も多い国であり、その魔物の素材を貿易の商品として輸出し、食糧を輸入することで成り立っていた。
実は戦争が長期化することを最も恐れていたのがフレアランドであり、レイシアが先陣を切って出撃することが許可されたのも、そして、同盟による戦争の終結をいとも簡単に認めたのも、レイシアが神子だからというだけではなく、アークラーンの力により戦争が長期化することを危惧した大臣たちの決断も大きかった。
その魔物素材の貿易を取り仕切る家があった。
ハウセンダード家。
もともとはただの商家に過ぎなかったが、ある冒険者が魔物を大量に討伐して持ち込んだことにより急成長。
その功績もあって、商家の一人娘と結婚することになった。
その二人こそが、クリスの両親らしい。
「これがクリスの家なのか」
それはもはや屋敷だった。
手入れされた庭には噴水までついていて、その奥にある豪邸は、フリーマーケットダークシルド支店にも匹敵するほど広い。
クリスが言うには、今は彼女の母親がひとり暮らしらしいのだが、ひとりで暮らすには広すぎるんじゃないだろうか?
……クリスの母親が商人、しかもこんな大きな家を持つことができるほどの商才があるってことか。
てっきり、脳筋一家だと思い込んでいたが。
「はい、私の家です。久しぶりですね」
クリスは感慨深いものがあるのか、門の前で小さな声でそう言った。
「あぁ、緊張してきたな……てか、未だに実感わかないんだが。クリスと結婚するって」
「そんなこと言わないで下さいよ、私まで緊張してきたじゃないですか」
「じゃあ、あれだ。もうお前も大人だ。母親に報告するって年でもないだろ。ということでもう帰るか」
俺は回れ右をして振り返り、そのまま帰ろうとしたら、25歳くらいの美女がそこにいた。
「あらあらあら、お客様かしら」
頬に手を当てて嬉しそうに微笑む。
リンゴの入ったバスケットを持っていて、買い物帰りのようだ。
金色の髪と青色の瞳はクリスそっくりだ。
お客様ってことは――
「クリス、お前姉ちゃんいたのか?」
「コーマさん、この人が私のお母さんです」
「はぁい、私がクリスちゃんのママさんでぇす……あれ? なんでクリスちゃんがここにいるの? どうしましょ、リンゴ私の分しか買ってないわ、どうしましょ?」
今更クリスがいることに気付いたクリスママは慌てて言った。
「あの、クリスのお母さん、籠の中にはリンゴが七個くらい入っているように見えるんですが」
「そうなのよ。私の一週間分のリンゴしか買ってないのよ」
あぁ、なんとなくクリスがこうなった理由がわかった気がした。
※※※
「うわ、お前の家本当に凄いんだな……」
クリスの家の宝物庫を見せてもらった。
七二財宝はないものの、レア度【★×7】や【★×8】のオンパレードだ。
そういえば、竜殺しの剣グラムもここにあったそうだからな。
「おぉ、ミスリルだ! クリス、ミスリルがあるぞ! これ俺に売ってくれよ!」
「もう、コーマさん、何しに来たんですか! あと、それはお母さんのですから私が判断できません」
「そうか――クリスの母さんの名前なんていうんだ?」
「エリザベートです」
「じゃあ、エリザさんだな。エリザさん、このミスリル売って下さい!」
「コーマくんのアップルパイ、もう一個くれたらいいわよ」
リンゴ1個貰って、厨房を借りてアップルパイを作成、六切れにカットして一切れずつ三人で仲良く食べたところ、エリザさんは大そう気に入ってくれたようだ。
「わかりました、残ってる分全部あげますから貰いますね」
「待ってください、コーマさん! お母さん、このミスリルって売値は金貨800枚もするし、レイシアちゃんからフレアランドに貢献した褒章として貰ったものじゃないですか! 勝手にあげたら怒られるよ!」
「レイシアから? じゃあレイシアにも許可もらっておくわ。ラッキー」
俺はミスリルを手に笑った。
「え? コーマさん、レイシアちゃんと知り合いなんですか?」
「あぁ、マブダチだ。お、あっちにあるのってもしかして、いや、もしかしなくても鑑定でわかる! ユニコーンの角かよ! え、ユニコーンって実在するの? クリス、あれももらっていいか? なんかユニコーンスタッフっていうすんごい杖ができそうなんだけど」
「駄目ですよ! ユニコーンの角の売買は条例で禁止されているんですから」
「売買じゃないだろ、貰うんだからいいじゃないか。そうだ、ミスリルで剣を作ってやるからそれと交換しようぜ?」
「ミスリルの剣なら持ってますよ! 今、サイモンさんに修理してもらうために預けていますけど、あと五年くらいしたら返してもらえますから」
「お前、それ絶対騙されているぞ」
あぁ、いいな、この宝物庫。
俺もこういう倉庫欲しいな。
魔王城の横に作ろうかなぁ。
全部アイテムバッグの中に入れて置くだけじゃなくて、自分専用の博物館みたいなものを作る感覚で。
あぁ、なんだ夢が広がる。
「いやぁ、エリザさん、ありがとうございます、面白いものをみせてもらいました」
「私も久しぶりのお客さんで嬉しいわ。コーマさん、紅茶のおかわりどうぞ。茶葉が切れちゃったのだけど」
「とてもおいしいです」
温かい砂糖水を貰い、俺は満足げに頷いた。
「じゃあ、帰るか」
笑顔で帰ろうとする俺の腕をクリスが掴んだ。
投稿場所間違えたせいで、連続更新記録が途絶えてしまった。
泣きそうだ。




