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異世界でアイテムコレクター  作者: 時野洋輔@アニメ化企画進行中
Episode09 通常運転

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301/742

閑話 301体のゴーレム

今日と明日は閑話になります。時系列的には本編の少し後って感じです。

すみません、本編の続きを書きたいのですが、ちょっとプロットが行き詰っていて。

「300?」

「いや、正確には301だよ」


 魔王城の一室。

 俺はその数を聞いて怪訝な顔を浮かべた。

 行方不明になったのだ。301体のゴーレムが。


 それは今朝になって突然のことだった。

 俺が魔王城でアイテムクリエイトでアイテム図鑑を埋めていた時のことだ。

 マネットがやってきた。


「301体のゴーレムが逃げ出したんだ。探すのを手伝ってほしい」

「は?」


 ゴーレムが逃げ出したって、そんな「おらの牧場からべこさ逃げ出して、探してくんろ」みたいなこと言われても。


「てか、ゴーレムって石とか土とかに仮初の魂を与えた魔物だろ? なんでそのゴーレムが逃げ出してるんだよ! あと何で301体って中途半端な数なんだよ!」

「ゴーレムにいろいろと改良を加えたら暴走してさ……あと数に関してはなんでだろうね? 特に意味はないんだけど、神の意志って奴じゃないかな」


 神の意志って、俺達は魔王なんだけど。

 神話の中だったら、神と戦いを挑んで破れたという存在なんだけど。

 お前も魔王なら神の意志なんてものに左右されるなよ。


「はぁ……といっても、たしかに、ゴーレムがゴブリンの村とか、海に住んでる魔物を襲ったら困るし、放っておけないか。で、ゴーレムってどんな姿をしてるんだ?」

「あぁ、見ればすぐにわかるんだけどさ」


 マネットは何か言いにくそうな目をしている。

 よっぽど変なデザインなのだろうか? 


「キャァァァァァっ!」


 …………!?

 あの声は、コメットちゃん!?


 いや、コメットちゃんは確かに女の子だけど、でも力の神薬をいっぱい飲んでいるからゴーレムごときに後れを取るとは思えない

 ……よっぽどヤバイゴーレムなのか!?


 俺は急いで走る。

 すると、そこにいたのは――半裸のコメットちゃんと、そのコメットちゃんに抱き着く……抱き着く、俺の姿だった。

 今の俺が茶色い服を着ているが、コメットちゃんに抱き着く俺の姿は、以前ベリアルと戦った時の黒い服と似たような服を着ている。

 あれが――あれがゴーレムなのか。

 だが、鑑定をしても服を見ることはできない。

 あの服もゴーレムってことか。


「あぁ、コーマ様。とうとう私の気持ちに――」

「せいやぁっ!」


 俺は聖剣エクスカリバーで俺そっくりの何かの姿を真っ二つにした。


「コーマ様っ! コーマ様っ!」


 真っ二つになった俺の偽物を抱き寄せるコメットちゃんは、犯人である俺を睨みつけ――俺がここにいることに気付いた。


「え? コーマ様が……ふたり?」

「おいっ、マネット、これはどういうことだ?」


 俺はマネットの頭を掴み、事情を問いただした。


「いやぁ、コーマってうちの王様みたいなものだから、影武者でも作ろうかなって思ったんだけど――コーマの性格を入力したらどういうわけか暴走したんだよね」

「俺の影武者を作ろうとすることは認めるが、なんでそれを301体も作ったんだよ!」

「さぁ……でも、まぁ、コーマの行動原理を入力しているから暴走しているとはいえ変なことはしないはずだと思うんだけど」

「たった今コメットちゃんを襲ってたばかりじゃないか!」

「あ……あの、事情はよくわかりませんが、この偽物のコーマさん、いきなり入ってきて驚いて声を上げましたが、暴力的なことは一切しませんでしたよ」


 コメットちゃんがフォローしてくれる。

 だが、それは問題ではない。


「うちの魔王軍、特に魔王城にいる皆は、俺の姿をしているとはいえゴーレム相手に不覚をとるような奴らじゃない」 


 影武者とはいえ、俺の偽物のゴーレムの力は大したことはない。

 タラやカリーヌ、ゴブカリ、そして魔力が少し回復しているルシルの敵ではない。

 たまに遊びにくるクリスももちろん負けることはない。

 だから、力づくで悪戯をしてくれたら、相手の反撃で俺が偽物だと気づくはずなのだ。

 むしろ、戦わないで何か事を起こすほうが問題なのだ。


 足音が近づいてきた。


「コーマっ! 私のクローゼットから持って行ったパンツ全部返しなさいよっ!」


 顔を真っ赤にして怒っているルシルを見て、俺はもう一度マネットの頭を叩いた。


   ※※※


 偽コーマの行動のどこが俺の行動を真似してるんだよ。

 畑仕事をしていい汗を流している偽コーマをぶった切り、俺はもう嫌になった。

 まだこれで11体目、残り290体も残っているのか。


「主よ――」

「おぉ、タラ、ちょうどいいところに――ぶっ、なんて格好をしてるんだ、お前それ!」


 タラが着ていたのは、ルシルの服だった。

 いや、正確にはルシルのために作って、いつかプレゼントしようと思って魔王城に隠しておいた服だ。

 その服をタラが着ていた。

 少し恥ずかしそうにスカートを押さえている。


「言われた通り着替えてきましたが……これに何の意味が?」


 恥ずかしそうにするタラ。

 確かに、美少年であり美少女にも見えるショタ属性の持ち主のタラには女装させたら似合うだろうなと思ったことがあるのはある。

 獣のシャレコウベを付けているが、そのせいでミステリアルな美少女のように見える。


「主が無言で某にその服を押し付けて、「着替えればよいのですか?」と訊ねたらこれまで見たことのない笑みで頷いたときは諦め申したが、やはりこれは――」

「……あぁ、タラ、悪いがそのコーマはマネットが作った偽物だ……いいから着替えて来い」

「そうだったのですか!? なんと、気付きませんでした」


 それって、普段の俺が女物の服を押し付けて来ても違和感を覚えないってことかよ。

 タラの俺のイメージってそんなものなのか。

 てか、タラに女装させたいって隠れた欲望があったのか?


 だが、これはやばい。

 何がやばいって、俺の隠れた欲望が露わになることだけではなく、皆の持つ俺のイメージが暴露される。

 そんな気がした。

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