力の霊薬、その保管場所は
結局閑話が間に合わず、いつもの話です。
~前回のあらすじ~
コーリーちゃん、フリマ西大陸支店へ。
「なぁ、クリ……あの、クリスティーナ様。本当にここなのですか?」
思わず素が出そうになって、慌てて俺は言い直した。
「え……えぇ、ここのはずです」
俺は今、フリマの西大陸支部に案内されたはずだ。
なのに、どういうわけか、目の前に、第二の城があった。
その城から、「開店記念セール」の垂れ幕がかかっている。
確かにお店なのは間違いないようだ。
それにしても凄い人だ。行列になっていて、入場制限ができている。
この光景は、サフラン雑貨店がオープンした時を思い出す。
「あ……あぁ、忙しそうですね。また今度にしましょう――」
踵を返してどこかに去ろうとする俺の袖をクリスが掴む。
「関係者入り口から行きましょう」
「いえいえ、今日はエリエール店長も忙しいでしょうから、また今度に――」
「大丈夫ですよ」
根拠など何もない自信を胸に、クリスが俺を引きずって店へと連れていく。
店の裏口は搬入口になっているらしく、スタッフらしき人が出入りしていた。
忙しそうにしているので、話しかけるのが躊躇われる。
「すみません、エリエールさんに会いに来ました、クリスティーナです。取り次いでもらえますか?」
こういう時、バカは強いな。
忙しそうにしていた40歳くらいの男性店員は笑顔で、「少々お待ちください」と言って店内へと入って行き、すぐに戻ってきた。
「クリスティーナ様、お待たせしました。こちらへどうぞ」
男性店員に案内されて、俺は搬入口から店内に入った。
男性店員は実はこの店の副店長であると聞いた。
確かに、仕事のできる男性というイメージだな。
事務室へと向かった。
「店長、失礼いたします。クリスティーナ様をお連れしました」
「どうぞ……クリスティーナ様、おかえりなさいませ……あら、そちらのお嬢さんは?」
「は、はじめまして、コーリーと申します。メイベル店長に頼まれて商品を持ってきました」
「メイベルさんから? そのような連絡はきておりませんが」
訝し気な眼をこちらに向けてくる。
そんなに見ないでくれ。
「まぁいいですわ。それで、その商品はどちらに?」
「あ、商品……商品ですね。はい、ええと」
俺はアイテムバッグに手を入れた。
アイテムバッグは太ももに巻き付けているせいで出しづらいな。
とりあえず、わざわざ直接持ってくるということでそこそこ貴重なアイテムを出すことにしよう。
「これです、エリエールさん」
「え……ええと、これは?」
「力の霊薬です」
以前、サフラン雑貨店がオープンした時、力の超薬の仕入れで問題が起こったことがあり、思えば俺と彼女が知り合いになったのはその薬によるものだ。
だから、今回はそのワンランク上のアイテムを提供させてもらった。
「力の霊薬……伝説の薬ですわね。本来でしたらこの薬だけでもかなり驚くところなのですが……その、コーリーさんと仰ったかしら? あなた、今どこからこの薬瓶を出したのですか?」
「え? あぁ、ええと……」
アイテムバッグのことはあまり知られない方がいいか。
クリス相手なら兎も角、エリエール相手なら気付かれる可能性が高い。
なんて言ったらいいんだろうか?
そう考えていたら――、
「エリエール店長、どうか私にその薬を売って下さい!」
俺をここに案内してきた男がそう叫んだ。
「老後のための貯金を全部差し出しますし、足りない分は一生働いてでも返しますから」
「待ちなさい! あなたには使い道はないでしょう! それと、この薬はあなたの一生分の給料でも買えるものではありませんわ!」
「なら、なら、せめてその薬瓶だけでも! 薬瓶だけでいいんです、売って下さい」
「いけませんわ! 何か危険な匂いしかしませんわ! 何を考えていますの!?」
「男の夢しかありません!」
……うわ、なんか酷い誤解を受けている気がする。
もしかして、パンツの中に入れて運んだと思われてるのか?
それは即座に否定しないといけない。
例えアイテムバッグのことがバレルことになっても。
「……あの、パンツの中になんて入れてませんよ!」
「えぇ、そう言ってくださると助かりますわ!」
エリエールは安心したように胸を撫で下ろし、男性店員は露骨にがっかりしたようになる。
「はい、ちゃんと、もっと大切な場所に入れていましたから!」
俺がそう叫んだ。
すると、一瞬の静寂の後、
男性店員の姿が消え去った――ように見えた。
「エリエール店長! その薬瓶を貰っていきます! 今の話が店外に出回れば売り物にならないのは明白! ならば私に売るしかないはずです!」
「待ちなさい! 本当に待ちなさい! くっ、なんて動きですの!? 勇者である私ですら目で追うのがやっとですわ」
よくわからないが、フリーマーケットは忙しそうだ。
「……あぁ、忙しそうなので帰りましょうか、クリスティーナ様」
「……そうですね。ところでコーリーちゃん」
「どうしたんですか?」
「今度、鞄買ってあげますね」
「……? はい、よろしくお願いします」
よくわからないが、今度がいつになるかわからないけど、お言葉に甘えておこう。
「エリエールさん、私達は帰りますね。あ、コーマさんは見つかりましたから」
「はい――ありがとうございまし……え? コーマ様が!? あ、ちょっと、待ちなさい!」
エリエールは男性店員を追いかけまわしていた。
なんなんだろう。
店構えは立派だし、客入りも上々なのだが、人材の選択を間違えているんじゃないだろうか?
そんなことを思った。
300話がこの話ってどうなのよ……って感じです。
いや、むしろこの話こを300話目に相応しいのかもしれません。
うん、これでこそコーマだ。




